†護るべき者†
「…しだ……石田…」
僕を呼ぶのは…誰…?
「石田!」
!!
雨竜の意識が、覚醒する。
『こっちだ死神共!この滅却師石田雨竜が相手だ!』
『石田ッ!?』
『何!? 貴様…滅却師か!?』
『そうだ、君達が殺し損ねた最期の一人だ!』
『…滅却師…!まだ生き残っていやがったのか…』
『さぁ来い!僕を殺したいだろう?それとも滅却師が恐いかい?』
『…このガキ…言わせておけば!』
『望み通りぶっ殺してやるぜ!!』
『ばッ…馬鹿!何煽ってンだお前、阿呆かッ!?』
『……行け』
『何?』
『奴等の攻撃対象は僕になった。だから今なら…走れ黒崎!』
『!!』
『早く!』
『石田っ…』
『行け!!』
『……っこの阿呆…ッ』
『行くんだ黒崎!』
『……待ってろコノ!必ず戻って来てぶん殴ってやるからなッ!!』
石田…お前は、脆い。
それから、どのくらい一人で戦っていたんだろう。
最期に覚えている記憶は、左腕に感じた激痛。
そして…僕はたぶん敵に囲まれる中、崩れ落ちたんだろう。
意識が薄くなって、このまま消滅してしまうのかな、なんて思っていた。
「…し…だ…」
…誰かが僕を呼んでいる気がする。
「石田っ…」
なんだよ黒崎…もう帰ってきたのかい?
朽木さんを助ける前に戻って来た何て言ったら
…許さないよ。
「…石田!」
違う…黒崎じゃ……無い?
僕を呼ぶのは…誰…?
「石田!」
!!
雨竜の意識が、覚醒する。
雨竜は重く閉ざされていた瞳を開いた。
「……茶渡…君!?」
意外な人物が視界に入り雨竜は驚いた。
そして、目の前に居たハズの死神達が、
何者かの攻撃によってダメージを受け蹲っているのを見る。
「これは…君が…?」
「…そうだ」
だが完全に倒したわけではなかった。不意打ちのように一撃づつくらわせ、
チャドは雨竜の元へ走ったのだ。
「何で…う、ああぁっ…っく!」
自力で体を動かそうとして、途端に左腕に走る激痛。
再び開かれた瞳で、視線を自分の左半身に移すと
切り裂かれた左肩がすぐ視界に入った。
骨まで見えそうな程深く、刃傷が刻まれている。
いや、肩だけでなく、左腕全体に無数の刃傷。
あの時、その場に居た死神が申し合わせたように一斉に襲ってきた。
そして狙ったのは彼らにとってやっかいな霊子兵装を装備した、その腕。
咄嗟に右腕を庇った結果だった。
「しっかりしろ石田」
「………大…丈夫っ…」
立ち上がろうとして、崩れそうになった雨竜の体をチャドの大きな腕が支える。
雨竜とはくらべものにならない、逞しい、褐色のその腕。
「……!?君ッ、武装を解いているじゃないかッ!?」
雨竜はその腕を見て、驚いて叫んだ。
チャドの能力である、右腕の鎧化。
チャドの腕力と霊力がかみ合って、絶大な攻撃力を生む。
だがこんな状況だと言うのに、その霊武装が解除されているのだ。
「なっ何やってるんだ君はッ!早く武装を…」
チャドは、ぐいッと雨竜の体を抱き起こした。
「…武装した腕じゃお前を抱けない」
「なっ!!君は、その為に 武装を…?」
「……俺の腕は人を殴る為にあるんじゃない。…護る為にある」
「…茶渡君…」
「俺はお前を…護る」
風がなびき、前髪の隙間から普段はあまり見えないチャドの瞳が覗く。
熱い、優し気な、だがとても強いその瞳。
「…立て石田、来るぞ!」
「く…!」
蹲っていた死神の影が動く。
「……この…人間共が…ッ!」
起き上がった死神の一人が跳躍した。
ズキン!
「…ッ!?」
左足にも受けていた深い傷が、かわそうとした雨竜の脚を鈍らせる。
「死ね滅却師!」
今の雨竜には、かわす事は不可能だった。
「え?」
ふわり、と宙に浮く浮遊感。
「ッわ…!?」
チャドは軽々と雨竜を片手に抱き上げたまま、その攻撃をかわしていた。
「言っただろう…お前を護る。奴等の攻撃は俺がかわす」
「茶渡君…!? 」
「だからお前は…戦うんだ!」
「!」
無理…!
一瞬、雨竜の頭にその2文字が通り過ぎる。
もうすでに雨竜の霊力は底をつきかけていた。
それに、この腕だ。
「俺の霊力を使え石田!」
「あ…!」
だが、まだ方法は残っていた。
雨竜の能力は大気中の霊力を吸収し、武器として具現化させ放つ事。
「…わか…った…!」
そしてその能力は大気中に拡散する霊力だけではなく、
触れた相手の霊力を自分の物に変換することもできる。
雨竜はだらりとぶら下がった腕を懸命に動かし、
チャドの腕にそっと触れた。
ドクン!
「ッ!!」
雨竜の中に、チャドの力強い霊力が流れ込んでくる。
だがそれは同時に…
「…ッぐ…アァーーッ!!」
雨竜の右腕で霊子兵装が具現化されるのと共に、
その霊力は雨竜の全身の傷を裂くように、更に押し広げる。
血飛沫が飛び、雨竜の左半身が紅く染まった。
「……負けるな石田」
「…ッ…く…!」
「戦え……!」
強くなれ…!!
「…っ!!」
雨竜の左手が自分を抱きかかえる腕を、ぐっと強く握り返した。
「何をごちゃごちゃやってやがる…!」
また、死神が二人に向かって飛び込んできた。
「ク…!」
雨竜を抱えたチャドが、その攻撃を寸での所でかわす。
が、次々に起き上がってくる死神が、二人に向かってくる。
防御だけではこれだけの数は、かわしきれない。
バシュッ!!
その時、チャドの目の前を閃光が走った。
「…もう休憩は終了だ。いくぞ茶渡君!」
「石田…!」
そこには、死神達に向けて傷だらけの腕を力強く構える雨竜の姿があった。
その瞳からは、『脆さ』を打ち消す『強さ』を光らせていた。
end
2003.01.26
チャドウリですよ!チャドウリですよ!(2回も言わんくて良い)これでもチャドウリなの!
もうね、69話みてたら…もうね、こういうの描きたくて堪らんくなったの!(笑)
実際はこんなシーン決して無いと思うんだけど、それを原作で確認する前に描いておきたかったの!
(…ていうか、そんなこと言ってる間に71話にチャドが雨竜を抱きかかえて助けるシーンが、本当に出てきちゃったよぉvvv(驚愕) )
チャド、何も言わなくても雨竜の事を一番わかっている男…渋いねぇv かっくいいねぇv
もう「あいつは脆い」って言っちゃった時点で、チャドにとって雨竜は護るべき対象なのよッ!
弱く、儚く、そして可愛い雨竜! チャドが心揺れないわけがなくってよ!(何故お嬢様口調)
今回は雨竜を護りながらも、決して甘やかさないチャドを書きたかったのさ。チャドかっくいい!(阿呆/笑)
あぁどうしよ…チャドウリ結構ハマっちゃいそう?マイナー過ぎだよ(笑)
…ていうかコレ、地下に置く必要も無いんじゃ?でもコレ魅夜の中では充分チャドウリなの〜っ!
どうでもいいけど「69話」ってのも良い数字だねぇ(笑)