宝繭

 

「お前みたいな奴が騎士になんかなれるもんか!」
「やめちまえ!」
浴びせられる罵声と笑い声を受け、
少年は唇を噛み締める。
言い返す事も出来ず、ただ黙って。
「黙れ」
「うわぁ!出た、ローグだ!!」
それを庇うように現れた少年が睨みをきかせると、
はやし立てていた少年達は怯み、逃げながらも言葉を投げ付ける。
「ローグがいなきゃ何も出来ないくせに」
「やーい腰抜け!」
「弱虫オリフェン!」
その声は見えなくなるまで、聞こえ続けた。
「…気にするなオリフェン」
ローグと呼ばれた少年は落込む少年の頭を撫でる。
「ローグ…」
いまにも泣きそうな顔の少年、オリフェンは
俯いて溜息を漏らした。
「僕は…やっぱり騎士にはむいてないよ」
自分の力量の不甲斐無さを自覚しているのか、
オリフェンは消極的な言葉を吐き出した。
「オリフェン…?」
ローグの表情が少し怒ったような顔に変わる。
「僕はいつも逃げてばかりだし…力も皆より弱いし…」
小柄で華奢なオリフェン。
騎士になるための学校の中でも、彼は劣等生だった。
「…だからお前は、自分にはできないというのか」
「だって…」
剣技の演習で相手に勝てた事はなく、いつも逃げ回ってばかり。
一度だって相手に剣を当てた事も無い。
そんなオリフェンを皆は馬鹿にし、からかった。
それでも親友のローグだけは、彼を励まし続けてくれたのだ。
背はそのうち伸びる、身体が大きくなれば力もつく、
だから自分の夢をあきらめるな、と。
それなのに、オリフェンはその彼の前で
弱音を吐いてしまったのだ。
「お前が諦めたら、誰がその夢を叶える事ができるというんだ」
「だって…」
「もういい」
それは、彼を一番怒らせる行動。
「ローグ…!」
「お前がそんな事を言うようじゃ、俺が何を言っても無駄だろう」
「ローグ!」
親友は、ただ優しいだけじゃ無い。
「待ってローグ…」
「少し頭を冷やしてよく考えろオリフェン」
簡単に弱音を吐く男を、無償に包む男では無かった。
「ローグ…」
厳しく、強く…理想で憧れ。
そんな男の背中が去っていくのを見つめながら
オリフェンは取り残されたその場所で、
校舎の壁にもたれ膝をかかえて座り込む。
「はぁ…」
口から出るのは溜息ばかりだった。
いくら頑張っても、強くなれない。
競り合いではどうしても力負けしてしまう。
そんな自分が騎士団に入りたいなど、夢のまた夢ではないか。
だがそれを口にすれば、唯一の親友を怒らせてしまう。
親友は自分とは対称的に、騎士団入団はもちろんのこと、
騎士団長候補になるだろうと噂される、学園きっての剣豪だ。
そんな彼の姿を見ている事は、より一層自分の弱さを自覚させる。
騎士になりたい。
その気持ちは変わらないのに、
一向に強くなれない己の力量に焦りを覚えるばかり。
努力していないわけではない。
いまだって充分に頑張っているつもりだ。
がんばって、これなのだ。
それなら、自分はどうすればいいというのか。
「はぁ…」
いくら考えたって、答えなどわからない。
口からでるのは溜息ばかり。
思い悩むオリフェンは、
人影が静かに近付いて来るのに気付いていなかった。
「!!」
ヒュン…!
風を感じ、オリフェンは咄嗟に身を屈め横に飛ぶ。
そして反射的に身体が動いたあとで、それを知る。
頭上に起こった風が、剣の軌道によるものだということを。
「な…!?」
先程までオリフェンのいたそこには、鋭い剣先が突き刺さっていた。
その剣を握るのは…
「あなたは…!?」
見た事のある少年。
それは隣のクラスの生徒だ。
一度見たら覚えてしまうような、特徴的な容姿。
派手な赤い上質な衣服に、見事な金の髪。
そして宝石のような翡翠色の瞳に雪のような白い肌。
見目麗しいその少年は、王家の血を引く高貴な存在。
「デュファストン侯爵子息…!?」
「…御機嫌よう」
にこやかに微笑むその笑顔は、
手に握られたその剣がとても不似合にすらみえる。
そして再度落着いてその剣に視線を巡らせたオリフェンは、
驚いて声をあげた。
「それは…真剣ではありませんか!?」
「えぇ、そうですよ」
デュファストンは、たいしたことでもないというように
さらりと其れを肯定する。
「なっ…あぶ…っ」
いまになって、オリフェンはゾッとして身体に震えが走った。
もし、あのままかわさなければ、この剣で額を一突きにされていたのだから。
「なっ、な、何を、何をなさっ…!?」
たとえ王族の血を引いているからといって、
いくらなんでもやっていいことと悪いことがある。
冗談や戯れでは済まされない事態になるところだったのだ。
オリフェンは高貴なその人に敬意を残しながらも、
抗議の言葉を口にする。
「でも、貴方は躱した」
「か、躱すに決まっているでしょう!?危ないではありませんか!」
「そうですねぇ…躱さなければ死んでいたかもしれませんね?」
「なっ…」
デュファストンはそう言って微笑む。
まるで自分が悪い事をしたという自覚が微塵も無いと言うように。
「当たらなかったのだから何も問題は無い、とでも…」
「初めてです」
「は?」
そんな抗議の声を無視し、デュファストンは勝手に話し出す。
「私の剣を無傷でかわしたのは、あなたが初めてです」
「…?」
人の話を聞かないばかりか、
言っている意味もよくわからない。
「どうやらあなたは御自分の素質に気付いていらっしゃらないようですねぇ」
「え…?」
デュファストンは壁に刺さった剣を引くと、
剣先でくるりと円を描くように空を踊らせる。
抜く時にもそれなりの抵抗があるだろうに、
それを感じさせずに軽やかに優雅に。
まるで剣が自分の身体の一部のよう。
「剣というものは、何も力だけではありません」
その言葉を聞いた次の瞬間。
「!?」
デュファストンの剣先はオリフェンの喉元につきつけられていた。
今度は、躱す事はできなかった。
それはあまりにも速すぎて。
「力など、無くても良いのですよ」
「……!」
このデュファストンという少年、
隣のクラスでは一番の剣の使い手と噂聞く。
その実力は、ローグとはまた違ったタイプで
それは美しく 舞うような剣技なのだという。
大方貴族に対するお世辞がそんな噂になったのだろう、
とオリフェンはそう思っていた。
だが、今実感するのだ、
この男の剣の腕が本物だと言う事を。
その理由は先程の目にもみえない素早い動きと、
そして何よりもう一つ…。
「要は、相手より先に殺せばいい…」
漂う、殺気。
オリフェンは全身から汗が沸き上がり、言葉を失う。
これが、死の縁の恐怖というものなのだと、
初めて感じた。
「……そういうことではありませんか?」
デュファストンはそう言ってにこやかに微笑むと、
ふっ…と、殺気を消し剣を治めた。
「………」
オリフェンは先程剣を突き付けられていた喉元に手をやり、
汗にべとつくそこをゆっくりとさすった。
実戦なら、確実に死んでいた。
殺されていたのだ。
「それでは…御機嫌よう」
「え…?あっ…!」
デュファストンはそれだけ言うと、
微笑みながらひらりと姿を消してしまった。
相変わらずの、素早い動き。
「なんだったんだ…?あの人…」

何をしにきたのか、結局の所よくわからない。
だがその内容は、オリフェンの悩みを知り尽くしたかのような、
探し続けていたその答えだった。
「先に相手を…か」
たしかに、先に相手の急所を捕らえてしまえば、
相手もそう自由には動けない。
そうなればもう、後は力などいらない。
突き付けた剣の先にほんの少し力を込めるだけでいいのだ。
「僕の…素質…」
いつも逃げ回ってばかりいる事で
知らずに身につけた人並み外れた『素早さ
』。
それは最大の攻撃にもなり得る武器。
力で勝負するのでは無く、先手をとる剣技を身につければいい。
「…よし!」
オリフェンは何かを確信したように頷くと、駆け出した。
何をすべきか、どう戦えばいいか、自分の何を磨くのか。
それをみつけたのだ。
曇っていた自分の向かうその先が、今なら見える。
もう諦めるなんて言わない。
向いて無いなんて言わない。
騎士に、なる。
夢を叶える為に。
駆け出したその脚が向かうその道は…。

「とりあえず…まずはこれだよな」
謝罪する為に、友の元へと続いているのだった。





「デュファストン侯爵子息」
あまり聞き慣れない声に、デュファストンは脚をとめる。
「…貴方は」
視界に映るのは、本を抱えた少年。
「僕は神官見習いのシュテインです」
それは学園の敷地内で何度か見かけたことのある少年だった。
「これはこれは…お話するのは初めてでしたね?」
デュファストンは人の良さそうな笑みで微笑んだ。
「先程の、拝見致しました」
「先程?」
「騎士クラスの少年と…」
「おや…見られてしまいましたか」
校舎裏の片隅での戯れには、どうやら目撃者がいたらしい。
「学園内での真剣使用は厳禁ですよ侯爵子息」
優等生の神官見習いらしい言動。
「おや、この私に物言いがつくとは…」
だが、王家の者とあってデュファストンは特別だった。
皆が制服のなか一人だけ私服であったり、
授業の途中で突然気まぐれに帰ったりなど、
勝手気侭な行動が暗黙の了解で許されていた。
そんなデュファストンに対して注意をしてくるものなど、
皆無に等しいというのに。
「貴方が王族だからなんだというのです」
「ほぅ…」
その、王族だということが
周りの人間にはとても重要なことだというのに。
「大体、貴方には王位継承権など無い。ただの学生と何も変わりません」
この国は代々王位継承権は女児のみ。
まして実子ではなく甥になど、
間違っても継承権がまわってくることはない。
それでも、王族である事はかなりの権力だというのに、
たかが神官見習いごときのこの少年は
他の学生と同じだと言い切ったのだ。
「ほほぅ…これは面白い」
デュファストンはそんなシュテインの言葉を
むしろ愉快そうに受け止める。
「ですが貴方が誰かに申告したとして、誰も私を咎めるものはいませんよ?」
だがシュテイン一人でどうこうなるものでは無い事は、
デュファストンも、シュテインも知っている。
「…そうでしょうね。皆馬鹿ですから」
神官見習いの口から出たのは、
優等生らしからぬ言動
「王族というだけで諂う大人なんて、馬鹿以外何者にも言い様が無い」
次々と飛び出して来る言葉は、神官とは思えぬ毒舌で。
「ふふふ…貴方は本当に面白いですねぇ」
言ったところで、咎めるものがいないとわかっていながら
文句を言いに自分に近付いて来た少年。
「では何故私に注意を?」
その物言いに意味がないと知りながら。
「貴方と話がしてみたかったのでね。口実ですよ」
「おやおや…これは愉快」
話の切っ掛けに、自分に物言いを付けて来るとは
思い切った事をする人間もいたものだと、
デュファストンはとても楽しい気分になる。
今まで自分に近付くものは
皆諂ったものばかりだったと言うのに。
「貴方に興味がありました」
「おや、王族は関係ないのでは?」
デュファストンはからかうようにいった。
「王族だからではありません。貴方に興味があるのです」
「ほほぅ…では私の何が興味をソソるのです?」
王族に諂う気はこれっぽっちもない。
神官ならば剣技を教わる必要もない。
ならば何だというのか。
神官のくせにそっちの気でもあるのだろうか。
デュファストンは妙な期待と興味を抱く。

「なぜ貴方は…聖魔法が使えるのです」
「あぁ…なんだそのことでしたか」
それはデュファストンの期待した内容とは違うものだった。
「聖魔法は清く澄んだ心の者にしか行使出来ないはず。
なぜ貴方のような方が使えるのです」
「…言いますねぇ」
それは、何故お前のような汚れた奴が使えるのか、
と言われているも同前だった。
「私、これでも純粋なのですけれどねぇ」
「どこがですか?貴方のような不誠実な人間が、聞いて呆れます」
王族の自分に対する侮蔑ともとれる物言い。
デュファストンにそんな事を言えるものは
王、くらいのものだ。
それを一介の神官見習いが怖れもせずに言うなど、
とても、愉快になる。
「ではこちらも聞きましょう」
デュファストンは彼に興味を持った。
だから少し、彼と遊びたくなってしまうのだ。
「何故…あなたは使えないのです?」
「!!」
その一言に、シュテインは瞳を見開いた。
「何故神官専攻の貴方が、聖魔法を使えないのです?」
「な…なぜそれを…!?」
その事は隠していたかったのだろう。
「貴方から聖の魔力を微塵も感じないからですよ」
「…………」
デュファストンの言葉は、どうやら図星のようだった。
それを言い当てられた事に、シュテインは諦めに似た苦笑を漏らす。
「貴方がそこまでおわかりになるとは…予想外でした」
シュテインは神官クラスでも優等生だ。
魔力も高く、頭も良い。
だがただひとつ、彼の劣等感を煽るものは
いまだに初級の聖魔法すら行使出来ない事。
聖魔法の知識自体は人一倍高い。
だが、人前で聖魔法を使ってみせた事はない。
それは彼の謙虚な姿勢が自分の能力を
周りにひけらかしていないものだと、皆勝手に思っていた。
違う。
使いたくても、使えないのだ。
まさか優等生の彼が使えないなどとは
誰も微塵も思っていない。
だがもうすぐ、実技試験の時期がやってくる。
そうなればその事実は露呈してしまうのだ。
そのため彼は焦っていた。
そんな時だった。
騎士クラスの問題児である王族の少年が
演習中に相手を殺しかけてしまい、
その相手を自分の魔法で癒したという噂を聞いたのは。
皆彼が聖魔法を使える事に驚きを隠せなかったという。
何故シュテインがデュファストンに興味を示したか、
それは、神官の自分が使えない聖魔法を
神官でもなく、しかもいい加減で刃などを扱う不浄な者が
簡単に行使出来ている事への羨望と嫉妬だったのだ。
「なぜ貴方に使えないか…知りたいですか」
黙っているシュテインに、
デュファストンは 口元に笑みを浮かべ、言った。
「…そんなことが…」
「わかりますとも」
デュファストンは細い指をすうっと伸ばし、
シュテインの胸を指差した。
「あなたが…自分の心に不純だからですよ」
「!」
先程のお返しにもとれるような、
エリート神官見習いに対する侮蔑。
「な、なにをふざけた事を!僕は代々神官の家系で、誰よりも立派な神官に…」
何よりも、一番清く澄んだ職、神官。
その専攻者の一番のエリートである自分。
親も、そのまた親も、ずっと偉い神官。
当然のように神官になることを自分も選んだ。
他の誰よりも優れた神官になる道を…。
「ですからそれが」
デュファストンは、そんなシュテインの心境を読んだように言った。
「偽りだと言うのです」
「!?」
優れた神官の家系で、当然のように神官を目指す。
その道が自分の希望であり理想であると認識している、その心が。
「あなたは何故神官になりたいのです?」
「僕は人の役にたつ為に」
まるでマニュアルに描かれたような返答。
絵に描いたような、優等生な答え。
「何故、聖属性を?」
「それは…神官になる為には必要だから」
皆がそうだから。
今までがそうだから。
だからそれが当然の事としてシュテインは受け止めている。
「嘘、ですね」
デュファストンはもう一度シュテインの胸を指差した。
「あなたは、此処に嘘をついて生きている」
「!」
シュテインはその指の差している場所を眼で追い、
確認するように口を開いた。
「自分の、心に…?」
「えぇ、そうです」
デュファストンは眼を細め、見透かしたような態度で言った。
「聖魔法など、興味などないのではありませんか?」
「な…」
聖魔法に無関心。
それは、人を癒す事を生業とする神官にはタブー。

「どうでもいいではありませんか」
「……え?」
デュファストンは微笑みながら言った。
「あなたは…本当はそんなもの、くだらないと思っているのでしょう?」
「!?」
デュファストンの手が、馴れ馴れしくシュテインの肩に触れた。
ビク、と警戒するようにシュテインの身が退く。
「貴方は…とても頭が良い」
そんなことはわかっています。
そういってやりたいのに、反抗的な言葉が出てこない。
この感情は、この感覚は…、
… 怯え?
シュテインは目の前の少年に、酷く恐怖を抱いている己を実感する。
「…とても良い闇を持っていらっしゃる」
「え…?」
デュファストンはシュテインの顔に手をのばし、
両頬を捕らえると 、その瞳を覗き込む。
「ぼ、僕は…」
逃げられない様に掴まれた頭は逃れられず、
正面にデュファストンを見据えながら
その顔がゆっくりと近付いて来るのを、
シュテインはただ黙って見つめる。
「良い逸材です」
デュファストンは囁くと、唇にそっと口付ける。
「ーーー!!」
不純な、行為。
シュテインは驚いて瞳を見開くも、抵抗せず。
いや…出来ず。
触れた唇から何かを送込まれるような、
何かを吸い出されるような。
不思議な感覚。
「さぁ…くだらない偽善を御捨てなさい」
唇をはなすと、デュファストンは微笑んだ。
人の良い笑みでは無く、
謎めいた妖艶な笑み。
魔性のような瞳は、まるで吸い込まれそう。
「あなたは、自分のやりたいようにすれば良いのです」
「………」
催眠にかかったように、その瞳をうっとりと見つめ続けるシュテイン。
デュファストンはそんなシュテインから手を放し、
もう一度人のよい笑みを浮かべ。
「では…御機嫌よう」
彼をその場に残して風のように立去っていった。
「…………」
残されたシュテインは、暫くその場に呆然と立ち尽くした。
どのくらいの長い時間なのか、それとも一瞬だったのか、わからない時間を。
そんなシュテインをみつけ、一人の学生が駆け寄って来る。
「あぁ、こんなところにいたのかシュテイン」
その声に、シュテインの視点が現実に戻される。
「はやく図書館に行こう」
少年はシュテインの手をとると、引っ張った。
勉強を一緒にする約束でもしていたのだろう。
「うるさいな…」
「え…?」
シュテインは、その手を振り解く。
まるで汚いものでも払うみたいに。
「うるさいといったんだよ」
そして優等生の口には似つかわしくない言動。
「な、なんだよ、一緒に勉強してくれる約束で…」
「勉強も一人で出来ないのか?まったくこれだから頭の悪いやつは」
「え?…シュテイン?」
今までの彼とは、まるで別人のよう。
「どうしたんだ? 急にそんなこと…」
「急に?違うよ…」
シュテインは言い放つ。
冷たく、見下したように。
それは彼の表情としては初めてみるもので。
「前から思っていた事さ」
「!?」
表に出さなかっただけで、ずっと思っていた内の闇。
「僕は聖魔法の勉強なんてもう興味ないんだ」
もう、じゃない。
最初からなかったんだ。
「僕は闇の方が好きだな。全てを包んで壊す…闇魔法」
「シュテイン…!?」
それは神官にとってもっとも忌み嫌う魔法。
「どうしちゃたんだよシュテイン!?闇魔法なんて神官には」
「必要が無い?前例が無い?」
聖なる職には無縁の力。
そんな魔法を操る神官など、過去に聞いた事も無い。
「だったら、僕がなってやるよ」
闇を操る、闇司祭に。
「馬鹿の一つ覚えみたいに聖魔法ばかり使う奴等より
僕の方が優れている事を見せれば、誰も文句は言えないだろ?」
「………お前…」
友、だとおもっていた少年は
もう、知らない誰かのよう。
近付いて来た少年は、一歩後ずさる。
「そうさ…これが僕だ。純粋な僕の姿だ。くっくっく…」
何かから解き放たれた様に、
無気味に見える程怪しげな表情を浮かべ口元を緩ませた少年は、
生まれて始めて心から笑えた気がしたのだった。





「時が熟すまで…あと10年、か」
つぶやいた口元は不敵に歪む。
「それまでに…満足いく成長を見せて下さいね…?」

 

 

すべては、ゲームの為の下準備。
盤上の駒は掌の上で、踊る。




2008.09.01





デュファストン、オリフェン、そしてシュテイン。
この三人って同い年設定なんですよね。
同じ国で同い年の中〜上流階級…てことは、
同じ学校とか行ってたんでね? という妄想。
俊敏さで右に出るものはいない疾風の騎士団長オリフェンと
神官の中でも一際異才を放つ闇司祭シュテイン。
彼等のダメダメだった少年時代に早いうちから目をつけて、

彼等の成長にデュフが一枚噛んでいるといいなって思って。
とりあえずオリフェンとデュフは顔馴染みだったしさ?
充分にあり得る話でしょうこれ。
まぁシュテインは初対面っぽい会話してたけどさ(苦笑)
きっと昔の事で忘れたとかだよ!そういうことに!(笑)


戻る