「客人!」
声をかけられ、その人影は立ち止まった。
夜の薄明りに映える白い肌。
「おぉ、御使いの長殿か」
振り返り、人の良い笑みで屈託なく笑うその男に、
御使いの長は早足で歩み寄る。
「そのような格好で城内をうろつかれるな!」
「うむ?」
白い肌が映えるはずだ、
その客人は 全裸のまま廊下から庭に出ようとしていたのだ。
「月が、綺麗でな」
「服を召されよ」
「この城は湯浴みしながら月が見れぬ」
「服を召されよ!」
客人の言い分など聞かぬ様子で、御使いの長は声を強めて言う。
「城のこちら側は女人は来ぬのであろう?硬い事を申すなよ」
たしかに、ここは女人は入って来る事は無い場所ではある。
女人というよりは、誰も入ってこないというべきだろうか。
ここは守護竜様の私事の庵。
御使いといえどもそう脚を踏み入れる場所でもない。
この客人、龍人セイロンは守護竜様の私事に呼ばれし客人なのだ。
ここには守護竜様と招かれた者、そしてこの区画の警護を任されている
御使いの長クラウレだからこそ、入れるようなもの。
「それに…どうせすぐ脱ぐのに着るのは億劫でな。あの服は意外と面倒なのだよ」
まるで子供のような理由でそういって笑い、
屋根に隠れた月を見ようとセイロンは庭に脚を伸ばす。
「だから服を召されよと言って…!」
クラウレの手がそれを止めようと伸ばされ腕を掴み、
そして押さえようと身体に手をまわす。
だがまわしたその手が、勢い余ってセイロンを鷲掴みにした。
「あ…!」
腕の中の身体がその刺激にびくりと反応したのを感じ、
クラウレは即座にその手を離した。
「…っ、す、すまぬ…!」
「…………」
慌てたように頬を薄らと色付かせ動揺しているクラウレを見て、
セイロンは間をおいて微笑する。
「……服を、着るのであったな?」
「…?」
突然、今になって服を着ると言出すセイロンを訝しげに見ていると、
衣を肩に羽織ったセイロンは、くるりと舞いながらクラウレに近付き、耳元で言った。
「すまんな…どうやらそなたには、少々気を使った方がよさそうだ」
「!」
驚いて身を退くクラウレの逞しい胸板を、セイロンは指でついと撫でる。
「なっ…!?」
「以後、気をつけるようにするぞ御使いの長殿」
「………っ!」
からかうような素振りでそういって笑い、
セイロンは守護竜の待つ奥の間に駆けて行った。
小悪魔的セイロンです(笑)
クラウレが意識し始めちゃった辺りなどをかいてみたり。
これも若総受の野望作品て事になるのかな?
クラウレとシンゲンはもう、当然と言う感覚なので(笑)
2007.02.13