「えぇい、何度言わせる馬鹿者!」
「あいた!」
セイロンの扇子がグラッドの頭をペチと叩く。
「本当にそなたは何度教えても、ちっとも向上せんのだな?」
「そ、そんな事を言われてもな…だってセイロ」
「言い訳は聞かぬぞ!」
「あいた!」
言葉を遮るように、セイロンの扇子がグラッドの頭をまたペシと叩く。
「まったく…そのような技量では、いつまでたっても
女人の一人も満足させられぬのではないのか?」
「む………」
グラッドがふてくされるのを見て、セイロンは扇子を口元にあて、笑う。
「…これは失敬、図星であったな?」
「むぐぐ…」
勿論、知っていて言っている。
グラッドが女性に対してヘタレなのは誰が見ても明らか。
「だ、だからッ…セイロンが、色々教えてくれるって約束だろ!?」
「あぁそうであったな?はっはっは」
セイロンはそれをからかう材料にして、楽しんでいるのだ。
これは若様の戯れなひととき。
熟れた身体を持て余し疼く夜は、
相手など…誰でもいい。
それが、巧みな奴なら尚の事というもの。
だが痛恨な事に、この宿には現在相手役を果たせそうな者は
目の前の不器用な軍人しかいなかったのだ。
いたしかたなしと思い、数度思わせぶりな誘いを掛ければ、
案の定、流されるまま事に至る。
互いの欲求を満たす為だけの、感情の無い身体だけの関係。
互いに違う人を思いながら、
不毛な、行為。
だが若い身体は、そんな行為だけでも本能的に望んでしまう。
しかしいざ事を致してみると、その余りに稚拙な技量は
セイロンを満足させるには到底及ばないものだった。
期待はしていなかったが、あまりにも酷い。
が、今はこの男しか…いないのだ。
なんとか、自分を楽しませる男に育てたい。
そんな思いがセイロンにはあった。
だが何度教えても、何度説明しても、
この男の行為は、稚拙きわまりない。
それでもセイロンは、僅かな望みを託す様にもう一度言う。
「だから、先程も申したであろう?」
すっ、とセイロンの白い指がグラッドの胸を撫でる。
「真綿を紡ぐ様に…楽器を奏でるように…」
「う…!」
グラッドの肌を、セイロンの指が滑る。
真綿を紡ぐ様に。
楽器を奏でる様に。
「わかるであろう?」
首筋へと昇った指がグラッドの頬を捕え、
セイロンはその唇に自らのそれを重ねる。
焦らすように触れるだけ。
「…さぁ、やってみよ」
「あ…あぁ…」
顔を紅潮させたまま頷くと、
グラッドはたどたどしい手付きで、
もたもたとセイロンの肌をまさぐる。
「…………」
必死なのは、わかる。
「え、えっと…」
「…………」
一生懸命なのも、わかる。
「どうだ?セイロン?」
だが。
「…ええぃ、この技量無し!」
「あいた!?」
扇子がべちんとグラッドの頭を叩く。
「そのような稚拙な前戯などもうよい!さっさと済ませて戻るが良い!」
「え、えぇ!?さっさとって…そんなムードも何も無…あいた!」
扇子がビシッとグラッドの頭を叩く。
「そなたがそのような事を口にするなど10年早い!」
「い…痛いなぁ……」
グラッドはなんども叩かれた頭をさすりながらハァと溜息をついた。
頭を扇子で叩かれた事も勿論痛いが、
稚拙な事を実感してしまっているのも、また痛い。
「本当のことであろうが?…そんなことより、さぁ…」
セイロンは自ら脚を開き、扇情的な格好で手招きをする。
「はよう、致せ?」
満足のいく愛撫も受けられず、焦らされまくった身体は
先程から続きがほしくて疼いてたまらないのだ。
「あ、あぁ…!」
それはグラッドもまた同じ事。
いくら一生懸命に奉仕してもいつまでたっても許可をだしてもらえず、
我慢を強いられた身体は限界近くまで張り詰めていた。
「それじゃ…セイロン…」
「うむ」
名を呼んで。
「いくぞ?」
「…うむ?」
昂り先走る気持ちに任せ、グラッドはセイロンの脚を抱え引き寄せる。
「うッ!?」
乾いた其処に急に張り詰めたものをあてがわれ、
セイロンが驚いたように息をつめた。
「待っ…」
なにかいいかけたセイロンよりも先に、グラッドの身体が動いた。
昂ったグラッドの肉が、セイロンの肉を割る。
「ひッ…!?」
セイロンから余裕が消え、その表情に痛みが浮かぶ。
「ん、きっつ…」
あまりの狭さに窮屈さを感じながらも、
グラッドはそのまま槍を貫くが如く奥まで一気に突き通す。

グッ、と二人の身体が勢い良く密着した。
「うぁっ!?…くッ、…い…っ、イッ…」
「セイロン…?大丈夫か?」
なんだかいつもより痛そうにみえ、
グラッドは辛そうに目をふせているセイロンを心配そうに覗き込む。
「な…にが…」
覗き込むグラッドの前でセイロンの瞳が見開かれ、キッとグラッドを睨んだかと思うと…。
「何が大丈夫か…痛いであろう大馬鹿者ーーーッ!!」
バチ−ーーン!
「あいたーーー!?」
まるで拳で殴りつけるような勢いで、扇子がグラッドの頭を叩いた。
「施しもせずに致すとは何事かッ!!」
 半分涙目で怒鳴られ、グラッドは頭をおさえながら驚く。
「え?え?だって、前戯もういいって…自分でいったんじゃないか!」
そういったのはセイロンなのに、と少しふて腐れると。
ビチ−ーーン!
「わひゃぁ!?」
グラッドの顔面のど真ん中にまた扇子が一振り。
「前戯ではない!準備だ馬鹿者!必要不可欠なものであろうが!?」
「えぇ〜!?」
『前戯』と『準備』。
その微妙な違いをグラッドが認識出来ていたわけもなく。
何の施しも無く乾いたまま押し広げられた其処は
少し動かれただけでも引き攣れるような痛みをセイロンに与える。
「いっ…いいから、早く退かぬかッ!我は痛いと申しておるッ!」
セイロンは持ち上げられた脚をバタバタと動かし、不満を露にしていた。
「で、でも
せっかく挿れたんだし、このまま少し慣らせば…」
別に、初めてなわけでもなし。
グラッドはいつものように腰を浮かせ、軽く突いた。
「うァッ!?…う、動くな馬鹿者っ!!痛い!」
「そっ、そんな痛い…のか?」
大袈裟に痛がるように見えるセイロンにグラッドの方が驚いてしまう。
いつも余裕で誘って来るクセに、この今の慌てよう。
たしかに、いつもは稚拙ながらもセイロンに言われた通りの施しはしていたが…
それをしないだけで、こんな違うとはと、
グラッドは一つ勉強になった気がした。
「ていうか、どっちにしろ動かないと抜けな…」
「ッ…!!」
腰を少し退くと、セイロンの身体がびくんと跳ねる。
「痛いというに!!」
「いだッ!?」
ビタン、と扇子がグラッドの頬を打つ。
「動かずに退かんかッ!」
「んな無茶なぁっ!?」
扇子がグラッドの頭をひっきりなしに叩く中、
結局慣れるまでお預け状態で待たされた挙げ句、
なんだかグダグダなまま行為を終える二人であった。

この男が若君を満足させられる日は…おそらく、来ない。

 

ヤりながらグラッドを扇子で叩いているセイロン、
というのが描きたかった為に出来た作品
シンゲン登場前の設定なので、大人の男はグラッドさんしかいなかったわけです。
グラッドさんは下手そうなイメージありますよね。不器用そうだもん。
我侭誘い受の若様に押されっぱなしのグラッドさんてのもイイナなんてv

若総受の野望作品、グラッド×セイロンでした。

2007.02.13

 

 

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