「これで全部か?」
「たぶんな」
「なんだよ暴れたりねぇな。この間の集落のほうがまだやりがいがあったぜ」
「まぁそういうな、すぐにまた暴れられるさ」
「そうそう、それまでは待機だとよ」
すぐ傍に聞こえる声に、息を殺して身を潜め。
「…あれ?この家まだ燃やしてねぇな」
「残したんだよ馬鹿。この家がこの中じゃ一番でかかったからな」
「ここをこの辺りの休憩拠点にするらしいぞ」
「亜人の家かよ、冗談じゃないぜ」
「文句をいうな、屋根があるだけ野宿よりはマシだ」
「新兵は外なんだぜ?それよりいいだろ」
震える体を必死におさえ、祈るように目を閉じる。
「毛布くらい外の新兵にも与えてやれ」
「押し入れとか物置きとかどっかその辺探せばあるだろ」
近付く足音は、己の鼓動の音に消え。
ガタン
差し込む光は、眩い絶望。
「…最後の一匹みぃ〜つけた」
「さっさと始末してしまおうぜ」
向けられた剣を喉に当てられ、
少年は瞳を見開いたままガタガタと身を震わせる。
瞳に映るのは、鎧を着た大人達。
翼のない、人間。
帝国兵。
「まぁ、まて」
剣が肉に食い込む前に、奥から来た男が其れを制止する。
マントをつけた、一際立派な帝国兵。
おそらくは、この侵略者達を率いた隊の頭。
彼はつかみあげられている少年を一瞥すると、その身体に触れた。
「…オスか」
一瞬、集団がざわめく。
おそらく、皆メスだと思っていたのだろう。
「こいつは残しておけ」
また、集団がざわめいた。
「お言葉ですが、亜人を皆殺しにしなくてよろしいのですか?」
彼等の目的は、この集落を滅ぼす事。
隠れていた最後の一匹が見つかったのだ、
コレを始末すれば、晴れて掃除が完了だというのに。
部下の言葉を受けた彼等の頭は、
立派な顎の髭を2、3度撫でながら口を開いた。
「次の命令が来るまで我等はここで待機なんだぞ?いつまで待たされるかもわからない。
その間…『玩具』のひとつくらい欲しいじゃないか、なぁ?」
また、集団はざわめいた。
「なるほど、それは名案です」
「流石は我等が将軍の御考えだ」
「私達の事を良く考えていて下さっている!」
彼等が何をいっているのか。
「メスは勝手に孕むからやっかいなんだよ」
「どっかの隊長さんみたいに、処刑されたくないものな」
「オスなら、どうやっても疑いがかけられることはねぇ」
「思う存分遊んでやれるぜ!」
何故彼等が湧いているのか。
「…?」
理解出来ない少年は、瞳を泳がせるように動かし、
周りの兵士達を見回した。
「あぁ…そうだ」
不意に、少年に向けられていた剣が振り降ろされる
「!」
斬られた、と思った少年には、痛みは無い。
「玩具に服なんかいらねーだろ」
刃が裂いたのは、少年の服のみ。
「…よし、繋げ」
「ハッ!」
少年の首には首輪がかけられて鎖で繋がれ、両手には枷。
「え…?」
殺されるものと思っていた少年は、
状況が把握出来ない。
「生かしといてやるっていってるんだよ」
「もっと喜べ、ガキ!」
繋がれた亜人の少年を帝国兵は取り囲む。
「せいぜいがんばれよ」
「壊れたら殺すからな?」
「ハハハ!」
彼等の言葉の意味を理解出来ないまま、
少年は自分を見おろす人間達の笑い声に
ただ、恐怖で身を震わせた。
2010.01.31
ガーリット過去捏造妄想話。
過去が公式に出る前に書く!
いまなら正解はないので好きにかける!!
だからオレの妄想が正解!!(笑)