「ガーリット、もう大丈夫だよ。ここでは誰も君を虐めない。
ここは君の家だ。僕達を家族だと思っていいんだよ?」
処罰されるはずの罪人の僕に差し伸べられた、暖かい手。
人間不信に陥っていた僕を救ってくれた、ノイン王子のその言葉。
ここに居ても、いいのだと。
そう言ってくれた。
それなのに。
どうして、ノイン王子が帝国なんかに。
どうして、代わりに帝国の皇子なんかが…!
「ねぇガーリット、ディランとも仲良くしてね?」
できない!
「ガーリットや、お前も思う所は色々あるだろうが…
ディラン皇子と家族のように接してやってはくれまいか」
無理です!そんな…、
あいつは、帝国の皇子じゃないか!
僕の家族を殺した、帝国の…
『頼むよ、ガーリット』
…………。
でも…でも、僕に居場所を与えて下さった御恩に報いる為には
僕は、自分の感情を殺さなくちゃ…。
こうして僕を受け入れてくれたように、
僕は、あいつを受け入れなきゃダメなんだ。
陛下とファラ様、そしてノイン王子に託された想い、
その想いに応える為には、僕は…。
「ディラン、ガーリットよ。仲良くしてね?」
仲良く、するんだ。
しなくちゃ!
「初めましてディラン皇子、ガーリットです。
ファラ様やディラン皇子の お世話を… 」
僕は、精一杯の、偽りの笑みを造る。
受け入れるんだ、形だけでも。
そうすればきっと、ファラ様も陛下も、
ノイン王子も喜んでくれるはず…。
「なんで城に亜人なんかがいやがるんだよッ!?」
ーーー!!
「俺に触るな!汚い亜人め!!」
振払われる、僕の手。
「やめてディラン!ガーリットに酷い事いわないで!」
「やい!
俺に二度と近付くなよ亜人!」
「待ってディラン!」
この国では誰も僕を差別しない。
この城では僕と人間は平等。
ここは、ようやく辿り着いた僕の唯一の安息の場所。
…そのはずだったのに。
「ガーリット…大丈夫?」
嗚呼
帝国のやつなんて…やっぱり皆同じだ。
「…………はい、大丈夫ですファラ様」
申しわけ有りません、
陛下
ファラ様
…ノイン王子。
僕は初めて、皆の気持ちに背きます。

僕は、
この先もあいつと仲良くする事はできないでしょう…。




end

 

最初ガーリットはディランと仲良くしようとしたんじゃないかと思うのです。
もちろん、帝国を根本的に憎んでいる彼にとっては
表向きはそう見えるようにってことですけどね。
恩をうけた周りの人をたてるために、仲良くなる努力を必死にしたと思うんですよ。
だけどディランの態度が、あれでしょう?
彼はセレスティア王国領土で遠慮なくランカスタ批判と差別を繰り広げております。
だから一番近くにいたランカスタであるガーリットに、酷い暴言を連発してたと思うんだ。
でもガーリットは立場上同じ城の中で常に接していなくてはならない。
そりゃ、やっぱり帝国の人間なんて嫌いだ!ってなりますよね。
いくら途中からディランが改心して仲良くしようとか言ったって、
その時にはもう、遅いわけですよ。
彼の心はもう、積み重なる暴言で完全に閉じてしまっているのですからね。
なんかディラン×ガーリットのエンディングで、昔の話が出た時に
ガーリットが、昔の自分はディランを分かろうとしなくて申し訳ない、
というような内容を言ってる会話があったんですけど、
まるでガーリットが一方的にディランを受け入れてなかったかのよう。
…それは違うだろ?っていう。
お前が最初どれだけ酷い事言ってたのか思い出せディラン!と思いました。
最初に頭ごなしに拒絶したのは、絶対ディランの方のはずなのに。
当時のディランの育った環境を考えれば、それは仕方が無い事なのですが、
ガーリットだって、それを理解して寛容に受け止めれる程の大人ではないのです。
なにしろ、7才と9才だったんですから。
要するに、ガーリットがディランに10年も心を開いてくれなかったのは、
ディランの自業自得だと思うのですヨ(笑)



まぁ、その最悪の信頼関係を回復する為に、
この本編があるのですがねw
マイナスからスタートする二人の関係はイイですよv





2010.02.09

 

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