『人間だけど、怪我してるんだ。助けてあげてよ』
やめて
『アメリアさんは、兄ちゃんと結婚してオレの姉ちゃんになるんだろ?』
やめてったら
『オレ、アメリアさんのこと大好きだよ』
うるさい…黙れ…
野蛮な汚らわしい亜人!
人間の、敵。
亜人は帝国の、敵で
あたしの…敵…で?
あたしは、命令が…任務が?
…任務…。
…………。
………実行しなくちゃ。
「とうちゃん…かあちゃん…!?」
思いだしたんだもの。全部。
「あんた…なに…やってんだよ…!?」
どいつもこいつもみんな羽根付き。
アレもコレもみんな亜人。
「アメリアさんってば…!?」
あんた達が亜人だから…
命令を 実行するしかないじゃない?
「気安く…あたしを呼ぶなぁ!!」
あんたにこんな羽根なんか無ければ
あんた達にこんな羽根なんか無ければ
あの人にこんな羽根なんか無ければ…
あたしは…あたしはーーー!
「うわあああああぁ!?」
飛び散る血飛沫。
劈く悲鳴。
あぁ…懐かしい、
本来の あたしの居場所。
「あぐッ、…うぅっ…なんで?なんで…!?」
そうよ… 斬っちゃえばいいのよこんな羽根。
羽根なんか、なくなっちゃえば…。
「ファング!?」
「兄…ちゃん……っ」
「…お前っ、翼が…!?」
羽根なんか、なくなっちゃえば…?
…………。
なくなったからって…何よ。
亜人は、亜人。
人間じゃ無いじゃない…。
その肌、その瞳、その耳。
やっぱりあんた達は
人間とは違う、汚れた獣…。
「あらファング、まだ生きてたの?
…やっぱり翼を切り落とすだけじゃだめか…」
あたしを助けてくれたみんな、
あたしの愛した人みんな、
みんな、みんな
汚らわしい亜人なんだもの。
「そんな…うそだろ?うそだよな?アメリア!?」
殺さなくちゃ。
滅ぼさなくちゃ。
全部、みんな、
この子も、
あの人も。
「そんな事知ってどうするの?…どうせあんたもここで死ぬのに」
全部殺さなくちゃ…ダメなんだもの。
「ぐああぁ…!?」
あたしの任務。
あたしの存在の意味。
だから。
「…最後になにかいいたいことはある?だ・ん・な・さ・ま?」
壊れちゃえ。
「ないの?恨み言の一つでもいってほしいんだけど」
…壊れちゃえ!
「つまんない男…」
壊れちゃえ…壊れちゃえ!!
「さよなら」
みんなみんな
村も家も畑も人も
ファングも
ラングも…
全部、全部ーーー!
「あははははははははは!!」
あたしも、壊れちゃえ。
end
2010.02.27
10年前のアメリアです。
地味にアメリアの設定大好きなんですよ。
ファングもラングも彼女無しでは語れないよね。
彼女の記憶が戻った瞬間とか考えると、萌える。
アメリアのセリフから察するに、
アメリアはわざとファングの羽根だけ斬ってます。
殺せたのに、羽根だけを斬ったんだよね。
そこに彼女の葛藤を感じるのです。
彼女にとってファングは、自分の命の恩人なのですから。
色々な思いがあったと思うんだよね。
そして、ラングが生存していた事から、
完全なとどめをさせなかった事が伺えます。
今や残虐な狂気の女将軍も、
一人の女としての迷いが抜けなかったのではないでしょうか。