苦しかった体が
辛かった心が
今はこんなに楽なんだ
僕は愛するものを守れたんだね
僕はみんなの役に立てたんだね
僕は…この世界で無意味な存在ではなかったよね?
憐れまないで
悲しまないで
泣かないで
僕は今とても穏やかなんだ

 

だって…

 

「ノイン!」
「………?」
「ノインってば!」
「ミウ?!…ここ…は?」
「ノイン、もう来ちゃったの?だめじゃーん!」
「そうか…ここは…。はは…ごめんよミウ。僕は…」
「………うん、いい、許す!本当は…来るの待ってたんだもん」
「…ミウ?」
「ノインが来たいって思う時まで待ってるつもりだったけど…
本当はもっともっと後に来て欲しかったけど…」
「……」
「でも…やっぱり君にまたあえて嬉しいよ…ノイン」
「…ごめん」
「いい!いいよ…もういいの、だから謝らないで…ね?」

 

ほら…

 

「ノイン…王子…」
「君、は…!」
「あぁ、聞いてよノイン!この人はなんとビックリのー…!」
「君は、セレネイド…だね?」
「あれ?なんで知ってるの?」
「あぁ…知ってる。だって彼は、僕が…」
「…お初にお目にかかりますノイン王子」
「…え?」
「私がこの姿を『貴方』にお見せするのは…これが初めてですよ?」
「でも……」
「貴方の御心でなき者は私は貴方とは認めない。
…あれは、貴方ではなかった」
「セレネイド……」
「我が主ノイン王子、我が王よ!私の心はいつまでも変わらず、
貴方に永遠の忠誠を誓っ…痛い!?」
「もぉー話が堅くて長いよっ!」
「何をする小娘!!」
「まぁまぁ喧嘩しないで」
「だってノイン!」
「ですが王子!」
「忠誠とか、そういうのはもういいんだよセレネイド」
「し、しかしっ…」
「誰かの命令になんて従わなくていいんだ。あの男にも…もちろん、僕にも」
「ですが…私は…」
「もう君は召喚獣でも下僕でもない。君は自由なんだよ?」
「………ならば」
「うん?」
「ならば私は、勝手に貴方に付き従い護衛する。…迷惑ですか?」
「ふふっ…ううん、全然迷惑じゃない。大歓迎だよ」
「ほ、本当ですか?」
「あ、セレちゃんデレデレ顔っ」
「だ、誰がセレちゃんだっ!」
「いーじゃんそのほう呼びやすいでしょ?」
「黙れ小娘!啄ばむぞ!」
「なにさー焼き鳥にしちゃうんだからー!」
「まぁまぁ喧嘩しないで」
「だってノイン!」
「ですが王子!」
「ふふ…二人は仲がいいんだね」
「べ、別に仲良くなどありません!」
「ははは、すごくいいコンビに見えるよ?」
「ここに来てから結構たつもん、まーもう相棒ってかんじ?」
「好きで一緒にいるのではないぞ!」
「二人は、ずっと一緒にここにいたのかい?」
「ううん、最初はあたしだけ。ノインを探してたら、この子が来たの」
「この子と呼ぶな。貴様の何倍も年上だ」
「最初は誰〜?ッて思ったんだけど、この翼がね」
「あぁ、セレネイドの翼の模様のままだものね?」
「そうなの!うわぁセレネイドなんだーー!?ってびっくりだよー!
しかも会うなりいきなり謝りながら泣き崩れてさぁ」
「え?」
「ばッ!言うな!!」
「騙しただの裏切っただの嵌められただの、こっちはわけわかんないっつーの」
「そ、その…わ、私は………」
「セレネイド…もう、いいんだよ?」
「………私は…」
「君は最後に僕たちの仲間になってくれたじゃないか」
「…仲…間…?」
「何いってんのノイン?セレちゃんは最初っから仲間じゃん!」
「あぁ…そうだね、そのとおりだよミウ」
「へんなのー」
「…だそうだよ?セレネイド」
「ふん…小娘の…分際で…っ」
「あ、何?セレちゃん泣いてんの?なんでなんで?」
「だ、黙れ小娘!啄ばむぞ!」
「何さー!丸焼きにしちゃうんだからっ!」
「まぁまぁ喧嘩しないで」
「だってノイン!」
「ですが王子!」
「あはははは、賑やかだなぁ君達は」

 

ほら…ね?
僕は、こんなに暖かい仲間に囲まれてるんだ。

 

「あ!そうだ!ねぇねぇ、みてよノイン!ほらっ!!」
「!それは…」
「あたしの…翼だよ。えへへ〜あたしもう、『羽根無し』じゃないんだよ」
「そうか…真っ白ですごく綺麗な翼だよミウ。でも、それどうしたんだい?」
「あのね、ここではみんな翼が生えるんだよ。
そうそう!それでね、セレちゃんの翼ったら面白いんだよ?」
「ばっ…その事は!」
「セレネイドの翼?君はもともと翼があるじゃないか」
「え、えぇ…そうなのですが…」
「でしょでしょ?そう思うでしょ?それがねー…ほらぁ出して出して早く!」
「いたたた!わ、わかったから叩くな…!」
「じゃーーん!」
「!……もう一対の、白い翼…?」
「なんといいますか、どうにも奇妙な状態でして…
このような色、魔人の自分には不似合いなのですが…その…」
「そんなことない、似合っているよセレネイド」
「ほ、ほほほ本当ですか!?似合いますか!?」
「あー、またデレデレしてる」
「うるさい!」
「なにさー!」
「ほらほら、喧嘩しないで」
「ねぇノインは?ノインの翼はどんなの?」
「僕?」
「王子の翼ならそれは美しい事でしょう!」
「でも僕には翼なんて…どうやったら…」
「あのね、体の力を抜いて、空を飛ぶことをイメージしてみて!」
「空?……こう、かな…?」
「!うわぁ…」
「なんと、6枚の…光翼…!」
「すごいすごい!ノインすごい!キレー!」
「え?え?これ、僕の翼なのかい?」
「やはり私の目に狂いはなかった。貴方こそ、この世界の王!我が主!」
「な、なんだか照れるね…」
「ね、飛ぼうよノイン!その翼で」
「飛ぶ?どうやって?」
「大丈夫です、地を歩くのと同じことですから。
この娘のように不器用でなければ、すぐに飛べます」
「な、なによ!飛んだ事無い人間には最初わかんないんだから!」
「貴様は人一倍不器用だったろう。何度も墜落していたな」
「むーっ!もともと飛べたからって偉そうにっ!
大丈夫よノイン、上手に飛べるまで手ひっぱっててあげるから!」
「なっ!?何だと!それは私がっ!」
「あたしがやるっていってんじゃん!」
「貴様の下手くそな飛行には王子を任せられん!」
「はは、喧嘩しないで二人で頼むよ。腕は二本あるんだからさ」
「よっし、それじゃーいくよノイン!」
「見えますか王子?あの光まで飛ぶのです」
「光?」
「そ、あの光!」
「 ……あの光まで飛んだら、もう、もどってはこれないんだね?」
「それは…………」
「……うん、そうだよ」
「……そうか」
「あたしたち、ノインと一緒にいきたくて、
無理言ってお願いして、ここで待ってたの」
「ですが…もうこれ以上はここにはいられないようです。
貴方が来るまでという約束だったので…」
「そうだったんだね…」
「ノイン…」
「ノイン王子…」
「うん…行こう。一緒に!」
「うん!」
「はい!」




憐れまないで
悲しまないで
もう、泣かないで
僕は今とても…穏やかで満ち足りた気分なんだ。
今まで僕は、ずっと見守られていたんだね。
だから今度は
僕が、見守るよ。



だから…
おやすみ。





end






きっと、彼等はまた会えたと思うよ。




2010.09.19

 

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