「あんたの所為だ…!!
突然、一人の男がジェイドに殴り掛かった。
ジェイドの口の端から、一筋の血が伝う。
「ジェイド!?」
止めに入ろうとしたルークに、ジェイドはすかさず言った。
「いいんですよルーク」
ジェイドは自分を殴ったその男…自国の民間人の前で、
上着に両手を突っ込んだいつもの姿勢のまま。
「怨まれるのも軍人の仕事です」
このくらいは雑作もないという素振りで。
「事務的な物言いを…!あんたの所為で息子は死んだ!!」

その胸ぐらを男が掴む。
「あれはジェイドの所為じゃな…! 」
止めようとするルークの前に、
ジェイドの手がかざされそれを制止する。
好きにさせておけ、と。
「な…んで…だよ?」
目の前で黙って詰られるジェイドに
ルークは困惑の表情を浮かべる。
「どうせあんたは息子を…部下を見捨てて逃げたんだろうッ!?」
「……………」
それに近い行動をとったかもしれない。
「否定もしないのか…!!」
それともあの時、助けに戻れば良かったのだろうか。
死体だと、わかっているのに。
「息子を返せ…!!

再び、その拳はジェイドに殴り掛かる。

「あんたなんかの部下にならなきゃ…息子は死なずに済んだんだ!」
「……そうかもしれませんね」
ジェイドはあいかわらずの姿勢で受け止める。

拳と、言葉を。

「この人殺し…あんたは人殺しだ!!!」
「…………」
ヒ ト ゴ ロ シ。
「…っ違う!」
ルークは堪えきれずジェイドの手を払い除けると、
男を掴みジェイドから引き剥がした。
「勝手なこと言うな!」
ルークは見ていた。
知っている。
この人の息子が亡くなったのは、
ジェイドの所為じゃ無い事を。
「あれはジェイドが悪いんじゃない…!」
罠にはめられた上に力を封印され、
あの時のジェイドはどうすることも出来なかった。
たしかにそれは、残酷な判断。
でも、他に道はなかった。
「責める相手が違うだろぉッ!」
自分の部下を皆殺しにされたのだ、
気に病んでいないわけがない。
ただそれは、その感情が表にあらわれる事がないだけで。
それを抉るような、言葉と暴力。
「今だってジェイドは、皆を助けようとこうやって…」
民間人を安全な場所まで誘導する為に、
こうして危険を犯して戦火の間を先頭きって駆け抜けている。
それなのに。
「ジェイドを責めンなよ…!」
仲間が一方的に詰られている事に
ルークは我慢が出来なかった。
「…いいんですよルーク。 その人の言う通りです」
「え…」
ジェイドの手が、そんなルークを再び制止する。
「でもジェイド…!」
「私は人殺しです」
「…!?」
驚いて動きを止めた。
ルークと、そしてジェイドに掴み掛かっていた男までも。
「私は…貴方やルークが思っている以上の人殺しなのですよ」
「……!」
表情の読めない眼鏡の奥で、赤い瞳が揺らめく。
その瞳は絶対的な威圧感と、
拭い切れない深い自嘲で
鮮やかに輝いていた。




民間人を避難させるイベント中、
そのまま殴りかかってくれないかなぁと
ずっとこんな妄想してニヤニヤしておりました。

村人の口調とか性格とかそういうの割愛で(笑)

それにしても随分ジェイドラヴだなこのルークは。

2008.01.31

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