「だったら…私を使って処理をすればよろしいじゃありませんか?」
それは、とんでもない誘い文句だった。
性的相互依存症
「…は?」
思わず、ガイは聞き返してしまう。
「ですから…」
呆然としているガイに、ジェイドが微笑みかける。誘惑するような妖艶な微笑み。
「そう我慢せずに私とSEXすればよろしいじゃありませんか?と言ったんです」
「な…!!」
聞き違いではない。ガイの勘違いに聞こえた言葉は、確かに、その男の口からその意味のまま発せられて居た。
事の発端は、ジェイドの自慰をガイが偶然目撃してしまった事による。意外ではあったが、ジェイドとて大人の独身男だ。一目を忍んでそんな行為に更ける夜があっても、まぁ不思議な事ではないはずだった。
だが、その様はその時のガイには不思議にも思える光景だった。なにしろそれは、ガイの知る限り普通の自慰ではなかったのだ。見なかった事にして立ち去らねばと心では思いつつも、その姿はあまりにも目が離せないもので…ガイの脚はその場から動く事が出来なくなってしまっていた。結局ジェイドがシャワーを浴びに部屋を出ていくまで、ガイはその様を覗き見ながらも凝視した。ガイの目に、そして脳に、ジェイドのその姿は強烈な印象で焼き付いてしまったのだ。それ以来、度々ガイはジェイドのその姿を目撃した。偶然では無く、故意的に。
そして今日、皆とケテルブルクにてスパで休憩中に、ガイはジェイドのローブ姿を前にその時の記憶が呼び起こされ…情けなくも湯槽からあがれない状態になっていたのだ。そんなガイに気付き、徐に近付いてきたジェイドが発した言葉が、冒頭のアレなのである。
「SEX…て!?ちょ、何を言っ…」
声を発して、ガイは慌てて口を塞いだ。周りの仲間にそんな単語を聞かれてはどう思われる事か。
「もう誰もいませんよ?」
「!」
だがその心配はどうやら無用。いつのまにか、皆既にあがった後だったのだ。もともとこの時間は彼等しか利用者のいなかったスパ内、ということはつまり…今ガイは、この広いスパにジェイドと二人っきりなのである。
「これだけ長く旅をしていれば、たまには抜いておかないと健康上よくないというものです」
まるで食事をしなければ餓死しますよ?というような当然の口調でジェイドは言う。
「な、なんの事なのか俺にはさっぱり…」
ガイはジェイドの言っている意味がわからないというような演技をして、その場をやりすごそうと試みる。
「おや、違いましたか?」
そんなガイを挑発するように、ジェイドはちらりとローブの肩口をはだけて見せた。白い肌に濡れた髪が纏わりつき、その様はなんとも言えず色っぽい。この男はおそらく、どうすれば相手が自分を艶っぽいと感じるかを自覚しているのだろう。
これは明らかな、誘いだ。
「てっきり、そうかと思いましたが」
「い、いやその…俺は…」
すっかり見透かしたうえで追い詰めるような赤い瞳は、相手の反応を楽しむかのように細められる。
「私の事…覗いてましたよねぇガイ?」
「!」
ガイは思わず動揺を露に後ずさった。
あの時、ガイからはジェイドが見えるが、ジェイドからはこちらが見えない状態だったはず。それにジェイドはこちらを一度も見てなどいない。だからガイは気付かれていないものと思っていたのだが…。
「もしかして…ずっと前から気付いていたのか!?」
「えぇ」
ジェイドは微笑み、言った。
「だって、見せていたんですからv」
「なッ!?」
俄には信じ難い事をジェイドはさらりと言い放つ。この男は見られているのを知ったうえで、むしろ、あえて見せていたのだと言う。
「で、いかがでしたか?」
「い、いかがって…あのなぁ!」
感想を聞かれても、なんといっていいのやら。ガイが返答を言い淀んでいると、ジェイドはするりとローブを脱ぎ捨てガイの入っている湯槽に脚を踏み入れる。
ちゃぷ…と波紋が広がり揺れる水面がガイの身体を撫でる。
「…ジェイド…?」
ジェイドは困惑しているガイに躙り寄ると、そっと手を伸ばした。
「のわッ!?」
ジェイドの手は、いきなりガイの股間に。
「あぁ…こちらが正直に答えを仰っていますねぇ」
「い、いやこれはっ…その…」
感想を聞かれ、ついジェイドの一人遊びの情景を思い出してしまったガイの其処は、更に顕著に若さ溢れる反応を素直に示して居た。
「私の自慰姿に興奮するんですね…?」
「っ…!」
それだけではない、今のジェイドの姿だって相当のものだ。ほとんど全裸に近い状態の水着姿のジェイドの白い肌が、ガイの目の前にあるのだ。そしてその手は、ガイの弱点をしっかりと掴んで離さないのだから、もう逃れようがない。
「あんた…一体何考えてる…」
誰もいなくなってから、こうして挑発するような行動でガイを追い詰めて。
「何って…」
ジェイドの表情が意地悪く微笑んだ。
「ガイと、同じことなんじゃないですか?」
「なッ…!」
もうごまかしがきかない程に、ジェイドの手の中でガイが激しく主張する。何を考えているか、なんて、コレを見れば一目瞭然。ガイの息子は、35のおっさん相手に明らかに興奮しているのだ。
「おや!なかなか立派ですねぇ」
「い、いや…これは…っ」
ジェイドは大きくなったそれを感心したように眺めると、刺激を与えながら握り込んだ。
「おわッ!?」
「ここを…こうして…」
ジェイドの手の動きに、ガイの言葉が詰まる。細く長い指が、ガイの敏感な茎をなぞり刺激を与えて来る。男であるが故に、その刺激はツボを心得た適確な動き。むしろ、自分でするのよりもイイくらいに。
「あなたは、自慰をするでしょう?」
「あ…あぁ…?」
ガイに限らず、一般的な自慰とはそういうもの。
「ですが私は…」
ジェイドはもう片方の手を自分の股間に持っていくと、浴槽の縁に腰掛け脚をガイにむけて拡げてみせる。すらりと長い細い脚が誘うように華開く。
己の股間に添えられたジェイドの手は通常のそれよりもずっと裏まで周りこみ、奥まった箇所にある窪を水着の上からぐっと指で押して見せた。
「……ここを、するんですよ」
「!」
その光景に、ごくり、とガイが生唾を飲み込む。
そうなのだ、ガイが目撃した『普通とは違う』ジェイドの自慰。それは、そこを使っての自慰だった。通常男は自分の性器を刺激して快感を得ようとする。だがガイの見たジェイドは、それだけではなく…その奥の窪みに指を出し入れさせていたのだ。むしろ前を弄るよりも、そちらの方を念入りに、激しく。その姿がなんとも色っぽくいやらしく…ガイの視線を捕えて離さなかったのだった。
「ねぇ…ガイ、知ってます?」
ジェイドは水着をずらし指を中に割り込ませると、隙間から覗く桃色の窪みに指を押し当てる。
「此処…結構拡がるものなんですよ…?」
ジェイドはそこを軽くなぞると、指先を立て中心につぷりと突き立てた。一瞬の抵抗の後、ジェイドの指はその中心にするすると飲み込まれていく。
「試してみますか…?」
「ッ…」
挑発的な言葉と表情でガイを高圧的に誘うジェイドに、ガイの理性が揺さぶられる。先程から聳えたままのガイ自身が、今直ぐにでも吐き出す場所を欲するようにびくびくと震えた。
ジェイドの姿に欲情している己を、もう押さえられない。これじゃ旦那の思うツボだ…そう自嘲しても、理性が、引き返せない。
「あんた…本当イイ性格してるよな」
深い溜息と共に、とうとうガイは折れた。折れさせられた。所詮ジェイドには適わない。まるで掌の上で踊らされている様だとガイは思った。
「ありがとうございますv」
ジェイドはガイの嫌味に満足そうに微笑むと、早速とばかりにガイの上に跨がる。
「ちょ…旦那!?」
「なんですか?もう腹は決まったんでしょう?」
起立したガイの上にジェイドが腰を降ろすと、互いの凹凸がピタリと吸い付くように密着する。
「うっ…だからっていきなりそん…っ!!」
言葉半ばで、ガイのはち切れんばかりに興奮した其処が、ジェイドの肉に飲み込まれた。急くような、強引な挿入。
「うぁ…!?」
「くッ…ァ!」
狭い其処が、ガイをきつく締めつけた。大体、指を少し入れただけで碌に慣らしもしていないのだ、当然だろう。これでは間違いなくジェイドも相当の痛みをともなっている。
「んっ…キツ…っ」
どちらともなく同じ言葉を零し、眉をしかめる。
「狭っ…一旦抜い…」
「動きますよ…」
ガイの言葉を打ち消し、突然激しく動き出すジェイド。
「うあッ!?」
「ッ…あっ!」
水面が波打ち、ジェイドの身体が揺れる。
「はッ…アァッ、…ぅんっ…」
ジェイドの肉がガイに絡み付き、引っ張りあげ、導き入れる。
「旦…那、痛く無い、のか?」
「当然、痛…い、ですよ?」
「…マゾいなあんた」
「………ふふ…v」
まだ馴染まない其処を激しく擦り、感じる痛みすら、快感のように。
ジェイドの表情はたしかに恍惚に溢れていた。
「んっ…ガイ、も…動いて下さい…っ」
もっと快感が欲しいのか、それとも痛みが欲しいのか。ジェイドは強請るような表情を浮かべ、ガイを誘う。いやらしく蠢く腰と濡れた髪がへばりつく白い胸。不自然な程に赤い瞳が潤むその様はたまらなく扇情的。それはいつもガイが覗き見ていた、あの、ジェイドだった。
今ならもう、はっきりとガイは自覚できる。ジェイドを、犯す妄想を抱いていた自分を。
「こういうの…いつもやってるのか?旦那」
「な…にが…です?」
「誰とでもしてるのか、って事」
「…御想像に、おまかせします…v」
「…ったく…」
ジェイドは、美人だ。性格はアレだが、容姿は本当に美しい。中身は悪魔で外見は天使、本当にそんな感じの言葉がしっくりくる。
それだけの容姿、それでいて独身だというのだから…いろいろと勘繰ってしまうというもの。
「なぁ、国に…旦那の『旦那』がいるんじゃないのか?」
「おや…気になるのですか?」
ジェイドの表情が挑発的に微笑む。
「誰が」
結婚もせず、それでいて受け身的な自慰。その口から答えなどきかなくてもこれはもう、あきらかといって言い。国を長く離れることで欲求不満に陥り、誰でもいいから相手を探す。まるで熟れた身体も持て余す人妻みたいだ。
その遊び相手に、自分が選ばれたのだろうという事をガイは理解した。
こっちも不幸な事に女性を抱けない体質。一人で抜くのも慣れたものだが、味気ないにも程が有る。そんな中、お互いの性的利害が一致した。これはただ、それだけの行為。意味なんてないのだ。
「いたとして…それがどうだというのです?」
悪びれもせずに肯定するその口は挑発的な笑みをうかべて。そんなことは貴方には関係ないというように。身体だけのこの行為、そんな所まで立ち入らせないと牽制するように。
その様が、ガイをいいように弄ばれている惨めな男の気分にさせる。
「ジェイド…」
ガイはなんだか無性に腹がたってきた。余裕を見せるこの男を、本気で追い詰めてみたくなるのだ。
「俺の本気…みてみるか…?」
「え?」
浴槽の縁にジェイドの背を押し付け脚を抱え込むと、ガイはジェイドの尻に激しく己を打ち込んだ。
「ん、あッ!?」
ジェイドの身体がびくんと仰け反る。
「まだまだ…これからだぜ?」
ガイはジェイドの腰を角度をかえて抱えると、思いきり突き上げた。
「ぅぐッ…!」
無理な角度で白い腹が、ぐっと盛上がる。
「いくぜ!」
奥深く打ち込んだ其れを一気に引き抜くと、ガイは再び其れを根元まで打ち込んだ。ジェイドのからだが、再びビクンと仰け反る。煥発入れずに其れを引くと、また勢いをつけて突き上げた。それを容赦の無い程素早い動きで、激しくジェイドの肉を擦りあげる。
「は…ひぃッ…!」
打ち込まれる激しい杭を受け入れながら、ジェイドはガイの背に手をまわした。
「はっあ、ああぁッ…、すご…っ!」
揺れる水面とジェイドの身体。弾ける水音と、濡れた肉の音。憎まれ口を言えない程に激しく攻めれば、ジェイドはガイに縋り、隠しもせずによがり狂う。痛みを伴うだろうこの行為を、嬉しそうに、気持ち良さそうに。
「あんた…ほんっと淫乱だな」
しかも、相当のMだ。そう付け加えると、ガイは息を乱す口元に口付けた。
「ん……っ」
ジェイドは憎まれ口を紡ぐ事無く、素直にその口付けを受け入れる。甘えるようにより深い口付けを強請り、背にまわした腕に力を込め。その様にガイは、自分より10以上年上のおっさんを不覚にも可愛いと思ってしまう。
「っ…出る」
「あ…はあっぁ!」
一段と奥深くを突き上げると、ガイはジェイドの身体を強く抱いた。
「んぁッ…ピ……オニ……っ」
「ーー!!」
ジェイドはまわした腕でガイを強く抱きしめ、ガイの放ったものを受け止めながら果てた。誰かの名を呼びながら。
その名は、この国の誰もが知っている…いや、この世界の誰もが知っているだろう男の名前。
(ピ…オニ−……だって…!?)
果てたばかりで赤らんでいたガイの顔が、サァと青ざめていく。
まさかとは思うが…いや、まさかではない。ジェイドの立場上、それは充分に現実的。おそらくはジェイドの『旦那』であろうその男の名は、マルクト帝国皇帝の名前だったのだ。
「…ガイ?」
青ざめているガイに気付いたのか、ジェイドが乱れた息の侭ガイの名を呼んだ。
「…あ、…あぁ」
ハッと我に帰り、ガイは視線をジェイドに戻すと手を緩めジェイドを解放する。だがその動きはどこかぎこちない。
「…どうしました?何か御不満でしたか?私これでもけっこう自信あるのですけどねぇ?」
自分が何を口走ったかまだ気付いていないのか、ジェイドは更に誘うようにガイを挑発するような態度をとった。だがガイは、その挑発に乗る気にはなれない。なにしろ先程の言葉が頭からはなれないのだ。
「…なぁ旦那」
「なんです?」
だから、確認したくなる。
「あんたの国に入ったら、俺がいきなり処刑される…なんてことはないだろうな?」
ジェイドはそれを聞いて一瞬キョトンとしていたが、直ぐにくすくすと笑う。
「……どうやら、私何か口走ったようですねぇ」
ようやく、なんでガイが急に狼狽え出したのかを悟ったジェイドは、口走った言葉を後悔するでもなく、ガイの反応に愉快そうに笑い出した。
「笑い事じゃ無いだろう!?」
「あぁ、これは失礼」
まだ笑いを残しながらそういうと、ジェイドは笑いを無理矢理治める。
「あんただってこんなことしてんのバレたら大変なんじゃないのか?」
皇帝の愛人。それが浮気など、とんでもない事なのではないか。
「いいんですよ」
だがジェイドはそれを否定する。
「いいって、だって旦那は…」
「いいんです」
強い口調でもういちど言い切ると、ジェイドは油断しているガイを押し倒した。
「う…わッ!?」
そして、襲い掛かるように口付ける。それ以上余計な事をいわないよう黙らせるように。
「それより…ね?」
「ちょ…っ」
ジェイドの手は萎えかけたガイのものを摩り、再び硬さを導き出す。
「せっかくですから、もう一回くらいしておきましょう?どうせ一回も二回も同罪ですよ?」
「なッ!?やっぱ俺捕まるのか!?」
「冗談ですよv」
からかうようにそう言って意地悪く微笑むと、ジェイドは再びガイに跨がった。
「ん…あ…ぁん」
身体を細かく震わせながら気持ち良さそうにガイを飲み込むと、ジェイドはガイの上で腰を揺らし始める。一度中に放たれた其処は、滑る体液をくちゅくちゅと泡立たせながら旨そうにガイを貪った。
「は、ん…っ、ガイも…楽しんでください…?」
「あ…のな…っ!…あ…っ」
抗議はするものの、気持ちは退いても身体が勝手に盛上がり、ガイはジェイドの中で再び快楽に飲まれていく。
(…ったく…このおっさんは…)
バレない自信でもあるというのか、それとも公認なのか、むしろ、そちらも身体だけの関係だというのか。何が『いいんです』なのかさっぱりわからない。あいかわらず何を考えているか読めない男。わかっているのは、身体だけは最高にイイという事。
(はぁ…なんか俺…いいように利用されてんじゃないか?)
結局ジェイドの腰を掴んで自らも激しく腰を打ち付け、ガイは欲望に操られる不毛な自分を自嘲しながらも、目先の快楽にどっぷりと溺れていく。
こんな俺達の関係は、いったいいつまで続くのだろう…。
end
襲い受で淫乱な感じの欲求不満ジェイド。
だって旅の途中、絶対ガイを使って処理してたよねあれは。
んで、この後からジェイドのガイいじりがはじまる訳ですよ(笑)
2008.08.17