何をどうしてこんなことになったのか明確な事は忘れたが、潤は今最悪の状況に居た。腕は縛られ、足は開かれたまま固定されている。そう、ちょうど分娩台に上げられた妊婦のような格好だ。この姿が相手から見ればどんなものになっているかなんて、考えただけで顔から火が出そうな程恥ずかしい。これからどこを弄られるかは容易に想像できる。だがこうなってはもう逆らう術もなく、潤にはどうにもできない。
「薬はよく効いたか?」
「…効きまくりでしたよ、おかげさまで」
 潤は少し怒った口調で岡に言い放った。先程身体に良いからと進められて(騙されて?)飲んだドリンクは、口にして数分後内臓が全部流れてしまうのではないかと思う程の激しい腹痛に襲われたのだ。もともと胃が弱く固形物を殆ど口にしない潤は他人の何倍も消化器官はクリアだ。だがその分消化器系の薬も効き易い。その効果は拷問かとも思われるかのごとく強烈なものだった。
「それでは身体の中がちゃんと綺麗になったか調べるからな潤」
 岡は部屋の中にずらりと並んだ棚の一つに歩み寄り、いつくか引き出しを開け閉めした後、中から何かの器具を一つ手にとる。
「…ちょ…なんですかそれ!?」
 いつも岡が使用する道具の入っている謎の棚。獣医師免許を持つ岡は、しばしばその医療器具を用いたプレイを好んだ。怪し気な薬、診察台、白衣、注射器などは、もう日常茶飯事。それらとSM用の拘束具などを融合させて独特のプレイを楽しむのが岡の趣味なのだ。潤はその棚の中に何が入っているか知りたくも無いし、見たくも無い。どうせ見ると幻滅するものばかり揃えられているにきまっている。いやな記憶の残る道具や明日使われるんじゃないかと恐怖感を煽るような道具…おそらくそんなものばかりだ。
 だが今回岡が手にとったものは、いままで使われた事は無いものだった。

「ん?潤はこれが何か知らないかね?これは…」
 使われた事も実物を見た事も無い。だがそれが何か潤は知っている。妊産婦の胎内を診察する際に使う医療用の器具、クスコだ。
「そうじゃなくて、サイズが…!!」
 たしかに、形はそうなのだが……かなり、大きい。
「ん?あぁ…少し大きいかもしれないな、人間には。なにしろ私は馬用の物しか持っていなくてね」
 岡は笑って答えた。
「馬用!?笑い事じゃないです!」
「仕方ないではないか、これしか手持ちが無かったのだから」
 人と馬とどれだけ体の大きさが違うと思っているんだ!?という怒りを通り越して呆れが潤を襲う。人間用の物だって手に入れようと思えば岡なら簡単に手に入れられるだろう。おそらくはついさっきにでも使おうという事を思い付いたので、ちゃんと用意して無かったのでは無いかという気がする。もっともわざと用意しなかったのなら話は別だが…。
 まったくこの岡と言う人物は、深く考えているんだかいないんだか読めない時がある。物凄い策士で冷静かと思えば、感情的で直情的に突っ込むというか、後先考えずに自分のやりたい事を押し通してしまうというか、そういう強引な面ももっている。基本的に大好きな夢を少年のように追い掛けてしまうタイプの大人なのだ。まぁ…岡のそんなところも嫌いじゃなかったりするので、自分も重症だなぁと自嘲気味に思ったりする潤なのだが。
 ただし、今回に関してはこのゴリ押し気味な岡に潤は恨みすら感じていた。
「なぁに、だいじょうぶだ。機能は同じだからな」
 岡は丸椅子を持ってきて潤の開かれた股の間に腰を据えた。キィ、と椅子の回る際に出る独特な音が潤の緊張感を煽る。白衣の岡と、診察台(この場合分娩台だが)と病院独特の薬の匂い。これからまた、いつものように岡の趣味の世界がはじまるのだ。
「だいじょうぶじゃな……!」
 秘部にひやりとした金属の感触を感じて潤は言葉を飲んだ。冷たい金属がつぷりと潤の中に侵入し、ゆっくりと奥に差し入れられる。
「ひあ……あ…っ…」
 クスコの先端が潤の中に埋没し、少しづつ前進する。
「よぅし、どんどん入っていくぞ潤」
 岡の手は止まる事無く器具を潤の中に挿入していく。内側に傷を付けないように、そっと、優しく、ゆっくりと。そのため痛みはあまりない。程なくして潤の身体は、少しも傷付く事無く馬用のその器具を全てのみこんでしまった。
「はぁ…ふぅ…」
 体の奥まで感じる金属の感触。痛みは少ないが、下半身の緊張は取れない。
「ほら大丈夫だろう?20B全部はいってしまったぞ」
「20…B!?」
 改めてそのサイズを聞くと、驚愕するものがあった。岡の挿入の仕方が上手かったのもあり、殆ど痛みを感じぬままに20Bも受け入れていたとは気付かなかった。20Bといえば30B定規の三分の二だ、そんな長さが自分の中に入っている事に驚くと同時に人事のように感心する。そんなによくはいるな、と。
「それでは…中を診察するぞ」
 岡の指が根元までしっかりと飲み込まれた器具のネジをゆっくりとまわす。キリキリ…と金属の擦れるような音と共に、潤の体内に埋められたくちばしのようなへらが左右に押し開かれる。
「ひ…!」
「大丈夫、怖がらなくても大丈夫だ潤」
 器具は潤の孔を少しづつ押し拡げていく。
「や……やぁッ!」
 キリキリ…
 岡の手はネジをまわし続ける。
「い…っ…痛い!痛い岡さんッ!」
 キリ……
 器具の開口が止まった。
「ふむ、もう痛みを感じるのか?ううむ…直径2.5くらいか、思ったよりも狭いのだな。私を受け入れる時だっていつももっと大きく口を開くのだぞ?」
 具体的な数値が出るたびに潤はそのサイズを思い描いてしまう。今自分の彼処が2.5Bの大きさに拡がっていて、それを岡が見ている。いやでもその光景を想像してしまうのだ。無意識に、視線を感じるその箇所に意識がいってしまう。
「…どうした潤、私の指は一切触れていないのに潤の括約筋が自発的に痙攣を始めているぞ?」
 岡が口元を緩ませながら潤に言った。
「あ…」
 恥ずかしさに潤の顔が赤くなる。
「それにほら、性器がいまにも立ち上がらんとしているじゃないか。…痛いというわりには随分興奮をし始めているのだな」
「やぁ…ん…」
 いじわるな岡の言葉に潤がなきそうな顔で首を降る。
 岡はいつも潤の体がどんな状態になっているのか鮮明に教えてくれる。頼みもしないのに客観的に具体的に教えてくれるのだ。其れを聞いた潤が真っ赤になって瞳を反らすのを楽しんでいるのかもしれない。いわゆる言葉攻め、これも岡の好む所だった。
「フフ、可愛いな潤は」
 岡は羞恥に悶える潤の反応を堪能すると、満足したように行動を再開した。
「どれ…」
 左手にペンライトの用なものを取り、潤の内側を照らす。器具によって開かれた小さな入口の内側に、きれいな赤い色をした内壁が見える。
「しかしこれでは奥までみえんな…」
 ライトの角度を変え、幾度か中を覗き込んだ岡は、ペンライトを机に置いた。
「ふむ…やはりこれでは狭すぎていかん」

 キリ…
「!?」
 器具のネジがまかれる。
 キリキリ…
 2.5から3.0B…器具が潤を拡げていく。
「痛…ちょっ…いたいっ…」
 キリキリ…
 3.5B。
「い…っ…たっ…!」
 ギリリ…
 4.0Bを突破。
「痛い痛いッ!岡さん痛いってば!」
 ギリ…ギリ…
 4.5B。
「やあぁッ!裂けちゃうッ!痛ぁいッ!!」
 ギチ、ギチ…ギチ…
 無理矢理5.0Bまで開かれた潤のアヌス。ようやく岡の手がネジから放された。5Bに開かれたクスコはそのままの開口直径で固定される。
「5B…そうか、うむ、5Bだ。 潤の此処が今5Bに拡がっているぞ。わかるだろう?」
「はぁ、はぁ、痛い…うぅ…裂けちゃうよ岡さぁん…」
 潤が半泣きで痛みを訴えるが岡は心配した様子も無い。
「何をいっている、潤の此処はまだまだ大丈夫だ」
「でもぉ…っ」
 人体の構造に知識のある岡がいうのだ、健康的に問題無いのだろう。岡は拡げられた潤のアヌスの淵を張りを確かめるように少し強めになぞった。
「はうぅッ!」
 固定された潤の身体がその刺激に跳ねる。
「よし、これなら今度は良く見えそうだぞ…」
 岡は再びライトを手に、潤の股間を照らした。ライトが当てられた部分がほんのりと暖かい。
「や…」
  奥の方までクスコに押し広げられ、大きく開いた入口からかなり深いところまで明かりで照らし出される。ひくひくと軽く痙攣しているように蠢く、大きく開かれたアヌス。その先には綺麗な赤い粘膜が筒状に道を作り、見るものを奥へと誘う。
「あぁ、ちゃんと綺麗になっているな、よし。それにしても綺麗だ…いつみても潤の中は本当に綺麗な色をしているよ」
 岡はとても満足そうに言った。いつみてもって、いつも覗いてたのかこの人は!?と潤は思ったが聞いてみる気にはなれない。どうせ、そうだが何か問題があるかね?と平然と答えが返って来るに決まっている。聞いたところで逆にこっちが恥ずかしくなるだけなのだから。
「少し腸液が出ているな…フフ、まるで飢えた怪物が口を開けて餌を待っているいるようだぞ潤、ははは」
「な…っ」
 実際、器具の擦れる刺激で分泌された腸液が粘膜内に滴るその様は、口を大きく開けた怪物が涎をたらしているようにも見えたのだ。
「や…だ、変な事言わないで下さいッ!」
 潤がさらに顔を赤くして声を張り上げた。怪物の口内のように見えると言うだけならまだしも、飢えた、だなんて…まるで自分がはやく何か入れてほしくて催促しているみたいで潤は少しムッとする。
「ふふ、ほんの冗談だ。……さて、それではもう少しいってみるか」
 キリ…岡はネジを少しまいた。
「いたーッ!いたいって岡さん!もぉやだッ、もうはずしてくださいよッ!!」
 さらに拡げようとする岡に半ギレになる潤を岡は笑って言った。
「そんな状態では困るな潤、なにしろ今日はもっと太いものが入る事になるのだからな?」
「…え!?」
  怒鳴っていた潤の声がぴたりと止まる。これだけでも散々な目にあっているっていうのに、本番はこれからだ、といわれたのだ。潤の顔がサーっと青くなる。
「な…何を……する気なんですか今日は!?」
 わざわざこんなふうに潤を縛って固定したり、薬で身体の奥の方までクリアにさせたり、こんな器具で拡張したり、いつもとなにか違うのは気付いていたがここにきて始めて、岡が何をする気なのか不安になった。
「今日は…潤にこれを体験させてあげよう」
 
そう言うと、岡はまるでこれから手術でも始めようとするかのように、潤の目の前で右腕にラテックスグローブをはめた。
「ーーー!!」
 潤はようやく、自分がこれから何をされるかを把握するのだった。

 

愛の鉄拳



「そ、そ、そんなことしても、岡さんは気持ちよくならないでしょう?そんなコトしないで、普通に…ふつうのにしましょうよ…ね?」
 潤は焦る気持ちを必死に押さえて、無理に笑顔を作って言った。岡の為を思っていってるんですよ?というように。
「お前が気持ちよくなれば、私も嬉しい。それで充分なのだよ。」
「なーーーッ…!」
 だが潤の無敵のスマイルも岡にはまるで効果なし。潤の気持ちなど察してもくれず、マイペースに着々とコトの準備を進める。
 岡がしようとしているのは、紛れも無くフィストファック。つまり、拳もしくは腕までをアヌスに挿入する行為。潤の小柄な体に、岡のごつい拳をこれから捩じ込もうと言うのだ。想像できるのは凄まじい激痛のみ。
「い…いやです!いやーー!そんなのボクだって気持ち良くなんかなれません!!」
 潤は固定された身体を引き攣らせて暴れるが、がっちりと拘束された身体は体勢をかえる事も出来ず足を開脚したまま岡の前に秘部を晒し続ける。
「それは誤解だぞ潤」
 岡の手にはチューブに入った何かの薬が握られている。
「フィストファックというのは最高の快楽をもたらす方法と言われている。すなわちアナルに与えうる快感の極みというわけだよ。私は潤にその素晴らしい世界を是非体験させてやりたいのだ」
「そんなのいりません−ーーーッ!!」
「怖がらなくても大丈夫だ潤、私を信用したまえ。傷つけるようなことはしないからな?」
 チューブを握り指に薬をのせると、岡は拡がった潤の口に薬を塗り付ける。
「や…ひあっ…!」
 軟膏の独特の感触が拡がったアヌスに、そして敏感な粘膜に塗り込められていく。
「これをつけておけば、大丈夫だからな」
「ん…ん…っ…ふぁッ…」
 指が内側をなぞる度に、潤の口からせつなげな声がもれた。不思議と岡が薬を塗る度に、拡げられている痛みがじわじわと緩和されてくるのだ。

 薬の名前は、キシロカイン。合法的な医薬品で、麻酔効果のある鎮痛剤だ。そのうえ、弛緩作用もある。本来は治療用につかわれるものだが、このような行為に用いられる事も少なく無いアイテムだ。当然、岡のような立場の人間には手に入れる事も容易い。
 岡は器具の角度を回転させ、くちばしのような『へら』の位置をずらし薬を丁寧に塗り込める。
「どうだ、痛みが退いてきただろう?」
「…は…はい……」
 潤の体からは沈痛麻酔作用によって、先程の裂けるような痛みが退いていた。 少し楽になり、精神的にも少し落ち着きを取り戻す。
「それでは…」
 岡は潤の太ももを優しくさすりながら、器具のネジを徐に捲いた。
 キリ…
 器具は三たび、潤を押し拡げ始める。
「はぅ!?う、うぅ…んっ!」
 5Bまで拡がっていた其処が、徐々に5,5B…そして6B。

「うあ…あぁーーッ!!」
 さらに、6.5B。
「いやああああぁぁッ!痛い痛い!!」
 沈痛作用といっても限度がある。多少緩和されるというだけで、痛みを感じないわけでは無いのだ。
 ギリ、ギリ、ギチ。
 だが最終的に、7Bにまで拡げられてしまった潤のアヌス。大きく拡げられた孔から無防備な内臓を曝け出し、ひくつく括約筋が頻りに器具を締め付ける。ひんやりとした空気が体内の奥にまで行き来し、なんともいえない感覚だった。
「ふむ、よし。このくらい拡がっていれば…あとはいけるだろう」
「ひぃ、ひィ…ひぅ…」
 泣きべそをかく潤の頭を軽く一度撫でると、岡は空洞を覗き込む。
「うむ…少し濡れが足りない用だな…」
 アナルは女性器とは違う。本来は自ら濡れ出すということは期待できない器官なのだ。もちろん岡はそんなことは百も承知。彼ならではの準備がちゃんとある。
「さぁ潤、次はこれだ」
 
岡は棚から取り出した容器の蓋をあけると、中の粉末に水を加えかき混ぜだした。
「な…んですか、こんどは…っ」
 しだいに粉末はその状態を変化させていく。粒状だったそれは、水と化合して粘液質になっていった。ネバネバとした、それでいてぬるぬるとした…まるで人間の体液のような物質だ。
「これは人工粘液だ。どうだ、本物そっくりだろう?」
「…うぇ…」
 潤にその液体を得意そうにみせるが、潤は気持ち悪がって目を背ける。
「まぁそう嫌がるな潤、これのおかげで、傷付く事なくスムーズな挿入が可能になるのだからな」
 潤の反応をみて笑ってそういうと、岡はその粘液を長い筆にたっぷりとつけた。
 ぬる…
「あひッ…!」
 筆の先に塗られたまだ冷たさの残る粘液が、入口を通り越していきなり奥の腸壁に塗られた。
「たっぷりとつけてやるぞ」
 ぬる…ぬちゅ…ぷちゅ…
 ぬるぬるとした筆先が潤の体内をぬるぬると動き回る。アヌスへ、腸腔へ、奥に、手前に。その粘液をたっぷりと塗り付ける。
「ひあ…あ、あぁ…んはッ…ぁ!」
  ゆるやかな筆の動きとぬめる感触に潤の体が興奮する。聳える肉茎がぴくぴくと今にも絶頂を迎えようかと震え出す。
「まだだぞ潤」
「あ…んっ!」
 きゅっ、と岡の指が潤の根元を掴んでイケなくする。こんなところで潤にイかれては不服なのだ。なにしろこれから最も快感と言われる行為をするわけなのだから、その前に果てられては興醒めだ。
「このくらいでいいだろう」
 たっぷりと粘液を塗り込められた潤の其処は、内側から涎をだらだらとたらす怪獣は、準備万端とばかりに口あけて待ち構えていた。岡の拳を喰らうのを。
 岡はクスコに手をかけると、拡がったままの状態でゆっくりと引き出し始めた。潤を圧迫していた拡張器具は粘液でぬめる孔からするすると抜き取られていく。
「はぁ…!あぅ!」
  ずるり、と全てが抜き取られた。器具の圧迫のなくなったアヌスは元に戻ろうと窄まりだす。
「さぁ…それではいくぞ潤」
 そして、本番。岡は自分の腕にもたっぷりと粘液を塗りたくる。
「あ…」
 くちゅ…
 そのアヌスが窄まりきる前に、岡の指先が潤の中に差し入れられる。二本…三本。
「あ…ああ…」
 そして四本目。人さし指から小指まで、潤の中に埋め込まれていく。拡がっていく感覚に、痛覚が濃くなって来る。
「あぅ!うぅ…っ!」
 ギチ…
  指の付け根の関節が近くなるにつれて潤の体は岡を拒み出す。だが岡はさらに最後の親指をもその指の束に添える。
 ギチチ…
「あぅ…あうぅ…あああぁ!!」
 その痛みに潤が涙を流しながら体を強張らせる。実際、岡の拳は大きい。潤の小さな体には相当の苦痛のはずなのだ。
「力を抜いていなさい」
「うううぅっ…」
 岡の左手が優しく潤の腹を撫でた。
「大丈夫、怖がらなくても大丈夫だ潤」
 先程も聞いた言葉を、岡はまた口にする。
「もっとリラックスするんだ、私を信用しなさい。
潤が怪我をするような事はしない、わかっているだろう?」
「は…い…でも…」
 だが潤は切れ切れの声で応えるのが精一杯で、とても力を抜くなんて出来やしない。
「もっと…楽にするんだ」
 岡の片手がすうっと潤の顔に何かの瓶を近付ける。
「!?」
 それを吸い込んだ瞬間、くらりと潤の脳が揺れた。
「な…?」
 体が熱くなる…とくに下半身が。そして、なんだかとても良い気分。潤の意志とは無関係に、ヘンに緊張していた体から力みがとれてリラックスしていく。
「そう…それでいいんだ潤」
 体から力の抜けた潤の頭を軽く撫でてやると、岡は右手に力を込めた。
「は…」
 ぎゅぶ…
「う…あ…」
 ぐぐぐ…
「あああああっ!」
 岡の拳が潤に埋まっていく。
「い…痛い!痛い岡さん!いたッ…おしり壊れちゃうーーッ!!」
 だがどんな薬やローションの力を借りても、拳の一番太い所はそう簡単には通してくれない。ぎゅうぎゅうに岡の手を締め付け、進行を拒む潤のアヌス。先程拡張した大きさを既に越えているのだ。
「ここが通れば楽だからな…もうすこしだ、もうすこしだぞ潤!」
 岡も興奮しているのか少し息を荒げてそういうと、きつそうに吸い付いている其処に粘液を垂らす。抜けなくなった指輪を抜く時によく目にするその行為と同様の効果。更に滑りの増した接合部は、じわり、と岡の拳を奥に導く。
「いくぞ潤!」
「や…!!」
 岡は腕に力を込めて潤を突いた。
ギュボ!!
「んあああああああああああああぁーーーッ!!!!」
 ガタガタッ、と固定された台を揺らして潤が仰け反る。
「や…やったぞ潤!入ったぞ!」
 潤のアヌスはとうとう岡の大きな拳を飲み込んでしまっていた。多少の出血が見られるが、岡に言わせれば毛細血管の損傷程度の軽度のものだ、と言うのだろう。
「あ、あ、あっ…」
 括約筋のすぐ内側に感じるごろんとした大きな塊の存在。先程まで大きく拡がっていた其処は、今は岡の手首に吸い付き、ぴくぴくと痛みの余韻を訴えている。
「さすがは潤だ、よく頑張ったな」
「あ…嫌……ヒぃッ!?うあああああああぁ!!」
 岡は潤の中で 伸ばしていた指を強引に曲げ、拳を握った。ごりごりと内側で形を変えられ、潤がその苦痛に絶叫をあげる。
「あぁ…少し痛かったか?スマンスマン」
 悪びれもせず笑って岡は言うと、握った拳を少し捩った。
「あうぅッ!!」
 潤の体が仰け反る。
「ふむ、やはり握った方が具合が良いな」
「お…岡…さん…っ、…拳…おっき…ぃ…痛…」
 一人で納得したように頷く岡に、潤が泣きながら訴える。が、岡がそんな潤にさらりとこんな言葉を返した。
「大丈夫、腸腔は本来拳とほぼ同等のサイズに出来ている、拳を受け入れても何の問題もないぞ」
 そんなことを言っているのでは無いのだが、岡にとっては『人体的に可能かどうか』が基準であって、潤の苦痛の面は考慮してくれていないようである。そう、岡は今ちょうどやりたい事に向かって猪突猛進モードに入ってしまっているのだ。こういう時の岡に細かい配慮を求めるのは無駄なのである。
「さぁ、奥にいれるぞ潤」
 ズ…ズブブ…
 拳を飲み込んだ潤のアヌスは、岡の腕をさしたる抵抗も無く受け入れていく 。
「あ…ひいぃ!」
 ズズ…グプププ
 ゆっくりと拳が潤の奥地へ侵入していく。ごつごつとして硬い拳がやわらかい粘膜を押し分ける。拳程の直径ではないが、けっして細くはない腕が潤のアヌスをギチギチと擦りながら進む。
「ひ、ひぃ!ひぃィッ!」
 色々な薬の力を借りても、それは痛みでしか無かった。潤の口から上擦った悲鳴がこぼれる。ずぶずぶと岡の腕を飲み込んでいく潤の体。その小柄な体に岡の上腕が半分程飲み込まれた時だった。
 グ…!
「あうぅぅッ!?」
 腹の奥に当たる硬い感触。潤の腹部が内から少し盛り上がる。
「ふむ…ぶつかったな」
「あぅ、あぐ、う、うぅ〜ッ!」
 当然の事のように、苦しそうに呻いている潤のせり上がった腹を撫でる。岡の拳は潤の直腸を満たしながら奥へと挿入され、その直腸の終りに突き当たったのだ。
「あ、う…行き…止まり…当たって…ます…ぅ…!」
 内側から圧迫される塊に耐えながら、潤が必死にそう口にすると岡は笑いを零しながら答える。
「何をいっているのだ潤?行き止まりなどあるわけがないだろう、ここは潤の口まで繋がっているのだぞ?」
「で…もぉッ!」
 確かに岡のいうとおりそこで途切れる器官では無い。何度も言うようだが、ここは女性器ではないのだから。だが今、岡の拳が壁にぶつかっているのも確かなのだ。
「ここは…一般によく第二の括約筋といわれている箇所だ。だが、もちろん実際にこんなところに括約筋などないぞ?ここが括約筋を通る時同様の難所だからそう言われているのだ」
 岡は拳をぐりぐりと奥壁に擦り付ける。
「あぐぅゥッ!」
 その苦しさに潤の脚の指が不自然に仰け反った。
「ここは直腸とS字結腸を繋ぐ曲り角だ」
「う…!?アアアアアアアァッ!!」
 岡の拳が蠢き、潤のなかで強引に指を伸ばす。
「つまり…曲り角、ということは角度を変えれば道があるということだ」
 挿入時のように再び指の伸ばされた岡の手は、潤の体の中を何かを探るように蠢く。奥まった壁をぐにぐにと指で押しながら、手首を捻って方向をかえる。
「うあ、あああぁッ!ひぎィ…ぐ、ぐぅ!」
 体の奥深くを捏ねるような感覚に潤の体が引き攣った。固定された脚を揺らして台の上で苦しそうに仰け反る。
 そうして岡は、程なくして目的の道を探り当てる。
「む、ここだな」
 ググ…
「ひ…ーーーーーッ!?」
 岡の指が新たな道に潜り込む。
「や…あああぁッ!」
「少し辛いか?だが大丈夫だぞ」
 カーブによって狭くなった其処を抉じ開けながら、岡は強引に拳を通してしまった。
「ひあ…ああぁ…!」
 最奥だと思っていた箇所を越えて挿入された岡の拳。有り得ない程奥に感じる岡の拳。どんなに長いモノを挿入されても、ここまで届くことは無かった。いわば『人間の手』という意志をもって蠢く物体であるが故に辿り着く聖地なのだ。
「ここを超えれば…何も問題は無い」
 岡は曲り角を拳でにゅるにゅると往復して、通り易くなるよう道を慣らし始めた。
「ひがぁッ!?あぐ!アグッ!!」
 びくん、びくん、と潤の体があまりの苦しさに痙攣する。もう性行為としてアヌスを弄られているとかそういう感覚では無くて、内臓を直に弄ばれているという感覚なのだ。切開はないものの、麻酔なしで手術を受けているような生々しい感触。勿論、少しも気持ちよくなんて無い。
「そろそろいいか…」
 グプ…
「ぐが…ッ!」
 第二の括約筋付近を嬲っていた岡の腕が潤の未開地を求めて奥へと前進する。
 ズブブ…
 潤の中にどんどんと沈んでいく岡の腕。拳を受け入れ、一度は細くなった手首も奥に入れるにしたがって次第に太くなっていき、逞しい岡の上腕筋が潤のアヌスをギチギチと拡げはじめる。その太さは拳の太さにも匹敵する。
「くああぁッ!だめ…も…ダメっ!ひいぃッ…裂ける、よぉッ…!!」
「あと少しだ、もう少しで…」
  岡は、グッ、と腕をさらに押しこんだ。
「ヒ…!? あああああああああああッ!!」 
 そして岡は泣叫ぶ潤の中に、とうとう肘までしっかりと挿入してしまっていた。
「どうだ潤、肘まではいったぞ」
「うあ…あーーッ、ああぁッ…うあーーーッ!」
 内側からグイグイ腹を押し上げて来る岡の拳と、アヌスを押し広げる太い腕。
「う、…あぁッ!も…ダメ…く…るし…っ…!」
 限界だった。潤の体と精神はこれを任意の性行為として耐えられる限界に達していたのだ。
「ふむ…これ以上奥はやめておくとするか」
 その意志が伝わったのか、ようやく岡の進行がとまる。とはいっても、その腕はずっぽりと肘まで挿入されているのだが。
「は、…はぁ、ハぁッ…、ふはッ…」
 それでも進行が止まった事に潤の体は少し楽になる。そして苦しそうに呼吸をする潤に岡は喜々として聞いた。
「どうだね潤、感想は?」
「ハァ…はっ…、…こん、なの…全然…良くなんか…ないです…ぅ…!」
「ふむ?」
 フィストは最高の快感だのなんだのと言われたところで、こんなの痛くて苦しいだけで潤には少しも快感なんかじゃなかった。岡が一方的に趣味に走っているに過ぎない。
「…潤、快感というのは一体いつ導き出されるか自覚しているかね?」
「はぁっ…はぁ、……え……?」
 洗い呼吸をしながら、潤は岡の問いに疑問を返した。
「硬く太いものを挿入される時には誰しも少なからず痛みをともなうものだろう。だがな、本当の快感というのは…それを引き抜く時に得られるのだ!」
 ずるるるるるッ!!
 
言うが早いか、岡の拳が一気に引き抜かれる。
「はがあああああああああああぁッ!!!」
 潤のからだが大きく痙攣する。拳が大きすぎてアヌスをくぐり抜けることはなかったが、その移動距離は30B強はあった。潤を襲う内臓の捩れるような激しい刺激となんともいえない感覚。排泄感と開放感。
「…どうだ?良いか?」
「あ…」
 その感覚を何かに例えるなら、それは…そう、『快感』。
 荒い呼吸をしたまま呆然と天井を見つめる虚ろな瞳は、躊躇いがちに頷いた。失神するほどの刺激と隣り合わせの恐ろしいまでの快感に、もともと『素質』のあった潤はその刺激に恍惚とした表情を浮かべていた。岡の口元が緩やかに笑う。
「そうか、そんなに良いのか潤」
 岡の拳にまた力が込められる。
「あ…あぁ…ああああぁッ、岡…さぁんッ!」
 ギュプププ…
 潤の体は再び岡の拳を飲み込んでいく。 激しい痛み、圧迫感。だがそれは究極の快感を導く為の過程。
「挿入物が大きければ大きい程、太ければ太い程その快感は増幅される。どうだ潤、良いか?気持ち良いのか?さぁすこしづつ速くしてやるぞ!」
 ギュプ…ヌルッ、ジュププ…ズルッ!
「あ、アッ!あぅ!あ…あぁッ、あぁッ!」
 岡の腕は次第に速く、そして振り幅を大きくしていく。人工粘液がぐちゅぐちゅと音をたてながら泡立ち、潤の臀部にてらてらと滑る道をつけながら床に垂れていく。岡は滑りが悪くならないように粘液を継ぎ足しながら、潤に抽送を繰り返す。
「ハァ、あ!ひぃッ!あぁ…、ボク…ゥアァッ!はひぃッ!」
 性器や玩具の挿入の比では無い程の激しい痛みと激しい快感。初めてのフィストファック。潤の体は頻繁に嗅がされる薬品と気の狂いそうな過度の感覚で興奮し、高揚し、正体もわからなくなる程に激しく乱れた。
「ああああああスゴイッ…すごいよぉ…!あはぁっ!い、イクぅーーーッ!!」
 ジュプ、ジュプ、チュブッ、ズロロロッ!
「んああああーーーーッ!」
 かつてない究極のオルガズム。
 びくん、びくん、と大きく体を震わせた潤は天に向かって白い放物線を描いていた。
 それを確認すると、岡はきつい潤のアヌスから拳を引き抜いた。
 ヌグ…ッヌポン!
 先程まで締め付けの激しかったその筋は随分と弛緩していて、おもったより楽に拳が抜き取れる。岡の右手は潤の血で少しピンク色になっていたが、それはたいした出血でも無い。
「ふ…どうだ潤、フィストは最高だろう?」
 前には一切触れる事なく拳だけでイッた潤に、満足そうに岡が語りかける。
「…………」
「…潤?」
 潤の返事はなかった。唾を飲み込む暇も無かった潤の薄く開いた口元から、涎が頬を伝い台に流れている。
だがその表情は恐怖に引き攣ったものではなく、とても…満足そうだった。
「そうか、随分気に入ったのだな潤」
 返事のない潤の頭を撫でると、岡は潤の顔を濡れたタオルで綺麗に拭き取ってやる。愛しげに優しく。
「だが頻繁にすると弛んでしまう危険性があるからな…
月に二度くらいにしておこうか?あぁ…それでは潤は不満かな?ははは!」
 岡は勝手に独り言を呟いて、一人で笑っていた。


end

 

 

2004.06.19

これでもか!ってくらいの最低な岡とどこまでMなんだってかんじの潤!拳で感じちゃってますよこの子は…(笑)
だって岡なら絶対フィストでも気持ちよくしてくれそうなんだもの。これぞ大人のテクですよ(違)
そんなわけで潤様のフィスト初体験でしたv

 

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