真・最重要参考人 〜欠損〜
「クッ…!」
死神の脚に力が込もる。踏みつけにされた雨竜の腕から白い包帯にじわじわと赤い染みが広がり始めた。
「殺ったのは、アンタだ。だろ?」
「…………」
激痛に耐えながら、決して屈しまいとする雨竜は頑に口を閉ざしたままだ。
「……だろ?」
死神は体重をかけて雨竜の腕を踏む。
「ぐぁ……!」
「強情な奴め…!」
煙草の火でも揉み消すように傷口を脚で嬲る度に、雨竜の身体が小刻みに跳ねる。
「う!くうぅっ…!」
すっかり開いてしまった傷口からは包帯に染みただけでは収まらない程の血が床にしみ出してきた。 懸命に堪える雨竜の額を絞り出したような脂汗が流れる。
「やれやれ…思ったより口が硬いみてぇだな」
脚を腕から退けると、死神は雨竜の手首を掴んで左腕を持ち上げた。血まみれになった腕が、ぶらん、と力無く宙に浮く。
「…左手、使い物にならなくなるぜ?いいのか?」
「………っ…!」
良いわけなどない。だがそれでも屈する訳にはいかない理由があった。
「まったく…」
持ち上げていた手が、放される。雨竜の腕が重力に従うように勢い良く床に落下した。
ゴッ!
床と骨が激しくぶつかり合う硬質な音が鳴り、雨竜が蹲る。
「ーーーーッ!!」
痛い、痛い。腕が痛い。
さっさと痛覚などなくなってしまえば良いのに、と雨竜は思う。一度は壊れた雨竜の腕は捕獲された際に中途半端に治療を施され、幸いにも運動機能と痛覚を回復した。だがそれもつかの間、すでにその治療の後すら虚しく、度重なる責苦に次第にその正常な機能を再び喪失し始めていた。もはや自然治癒で元の通りに回復する見込みは無いだろう。もっとも、此所を生きて出られればの話だが。
「そんなに、いらねぇのか?この腕」
金属の擦れるような音が雨竜の耳元で鳴る。顔をあげた雨竜の目の前にあったのは、鞘から抜かれた斬魄刀。
「だったら…切り落としてやるよ」
「!!」
死神達によって押さえ付けられた雨竜の身体は左腕を前に伸ばされ固定される。斬魄刀の刃が、その腕にピタリとあてがわれた。
「………!」
「…怖ぇか?」
そして目を見開いたまま震えている雨竜に問いかける。
「…腕、ちょん切られたくねぇだろ?…さぁ、言え」
「う…」
負けたく、ない。死神になんか負けたく無い。
「…………」
…負けない。
「どうした、何かいえ!」
黙ったまま答えない雨竜に死神が返事を催促する。
雨竜は暫しの沈黙の後、微笑して言った。
「……さっさと…やれば?」
「ーーーこの…!」
窮地に立たされながらも、相手を見下したようなその態度。逆上した死神が刀を振り上げる。
激しい風圧が雨竜の眼前を走った。
「!!!!!!!!」
凄まじい激痛が脳を揺さぶり、何かが空に舞い上がる。
ゴトン。
空白の瞬間の後…雨竜の欠片が、床に落ちた。
「……ったくよぉ」
あきれ顔で、その死神は雨竜を拾い上げた。
「教本にあった通りだなまったく…滅却師ってやつは、どうにも強情な性分だぜ」
ポン、ポン、と拾ったそれを2・3度放りあげて弄ぶと、 仲間の死神にそれを放った。
「うわっ!?何だよ!?」
投げ付けられた死神は、吃驚しながらも反射的に其れを掴む。
「繋げ!四番隊」
「…へ?」
受け取った死神は治癒全般の能力に長けた四番隊所属の死神だった。
「放っといたら死ぬだろうが!殺しちまったら怒られるだろが!いいから早く適当に繋げ!」
「え、あ?うん…」
この男を殺してしまってはならない。なにしろ重要参考人なのだから。放置しておけば出血多量になる。その前に程々に治療を施しておかねば死ぬだろう。
四番隊員は切断の衝撃で気絶した本体につなぎ目をあわせると、鬼道を唱えた。繋ぎ目が徐々に修復され、傷が癒えていく。
「あんま治しすぎんなよ」
「…わかってるよ…でもさ、どうせ繋ぐんなら斬んなくてもいんじゃないの?」
「脅しになるだろうが…!」
「効果、なかったけどね」
「………」
ショックでその場に崩れ落ちた滅却師は、その瞬間に悲鳴をあげる事も許しを請う事もしなかった。目の前で自らの身体を切断されるというのに、そんな暴力や脅しに屈しないという素振りをまざまざと見せつけられたのだ。
「滅却師ってのは、皆こういう生きモンなのか?」
「…さぁ」
たしかにこの滅却師には理不尽な事を要求しているとは思う。だが、これだけの暴力をうければ普通は理不尽でも屈するというものだ。それなのに、この滅却師はどんなに蹴っても殴っても、小馬鹿にしたように笑うだけで屈しようとしないのだ。
「俺、開発局の滅却師の研究レポート読んだ事あるんだけどよ、なんか滅却師て身体斬られても死ぬまで意地はってるらしいぜ。誇りだとかプライドだとか、ものすごいこだわるんだってよ」
「そうなん?」
「それ早く言えよ!」
「やっかいな生き物だな…」
「まったくだ」
暴力でねじ伏せる事が出来ないとなると、こいつを犯人に仕立て上げる為には今後どうやって自白させたものか…と死神達は皆頭を痛める。
そんな会話の最中、雨竜の指先が僅かに動いた。
「お…」
「繋がったな」
鬼道に癒され、意識を回復した雨竜の瞳がゆっくりと開く。
「………ぅ」
まだ少しボゥっとした状態で、雨竜は視線を廻らし死神達を見回した。
「よぅ、起きたかよ」
目覚めても、自分のおかれている状況になんら変化はない事を雨竜は再認識する。今までの事は全て夢でした、なんて都合の良い結果を期待していたわけではないが、そういうのも悪く無い…なんて事を雨竜は思ってしまう。
ふと、いまだぼんやりと視線を彷徨わせる雨竜の視界に、己の左腕が映った。
「…!?」
自分の左腕が繋がっているのを見つけ、雨竜は驚いた。確かに、斬り落とされたのだ。しかしその腕が元に戻っているのだ。
勿論親切で繋いだ訳ではないのだろう、重要参考人に死なれては困るからだ。 だが…少し、雨竜は安堵した。肉体を損失する事は、やっぱり怖い。
「…どうよ、身体が分断された気分は」
「………貴重な体験だったよ?」
死神のかけた嫌味には嫌味による応戦で返される。その肉体の安堵感からか、雨竜は少し余裕の生意気な笑み。
「…ったく、調子のイイ野郎だ…!」
先程の様子から見て、同じような脅しは通じないだろう事が読み取れた。殴っても蹴っても、挙げ句の果てに腕を切り落としてやっても、こうやって生意気に笑う滅却師という生き物の扱いを死神達は持て余すのだ。たとえそれが見え透いた強がりだとわかっても、それを最後まで貫き通すのならばそれは強がりでは無い、それは本物の強さだ。
「こいつは…思ったより長期戦になりそうだぜ」
やっかいな堅物に死神達はまた頭を悩ませた。なんとしても、この滅却師を犯人にしなくてはならないのに。
「……おい」
「ん?」
その時、一人の死神が何かを思い出したように提案した。先程開発局のレポートを読んだ、といった死神だ。
「滅却師ってのは、たいそうプライドが高いんだそうだぜ?」
「さっき聞いたぜそれは」
また同じ事のくりかえしか、と興味なさそうに会話を折られても、その死神は続けた。
「たしか…そういうのに効果的な拷問があったんじゃねぇか?」
無関心を装っていた死神達の表情が変わる。
「…ほぅ?」
誰もがその言葉の続きに期待した。
「それって…………アレ、か?」
「アレ、よ。教本532pの右下にあった、アレよ」
その意味は、死神達にはすぐに伝わった。死神に昇格する過程で習う滅却師と死神の因縁の歴史、そして授業でも触れられているその内容。滅却師狩りの際に行われた、拷問のうちの一つ。仲間の居場所を吐こうとしない滅却師達に自白させる為の手段の一つとして紹介されていた、プライドの高い滅却師に精神的に効果があったといわれている手段。
「試して…みるか?」
自分に向けられた死神達の視線が、先程までと少し違う。雨竜が空気の変化を感じて身構える。
「そうだな…」
死神の腕がそんな雨竜の襟元をぐいっと掴み上げた。
「……!」
勢い良く衣服の前をはだけられ、雨竜が無言で目を見開いた。
「…貧弱な体だな」
露になった雨竜の肌に死神は苦笑した。 笑われるのも無理は無い、包帯に包まれたその上からでもわかるほどに雨竜の身体は華奢だった。命をかけて戦う男、としては有り得ない程に。周りを囲む死神達にくらべれば雨竜の身体など少女のようだったのだ。
「アンタいままで霊力のみでヤってたタイプだろ?」
「………」
貧弱な身体を笑われ、雨竜はキッと相手を睨み返す。どうも雨竜は人より筋肉が付き難い体質だったらしく、昔からいくら修行をしても逞しくなるという言葉とは無縁の身体だった。だが雨竜の場合、霊力の高さが全ての戦闘能力を補っていた為それでも支障はなかったのだ。
「だがな…そういうタイプは」
死神の腕が雨竜の顎を掴む。
「こうやって霊力を封じられると…自分の非力さを思い知るんだぜ!」
「……っ!?」
唐突に、そして強引に唇を合される。
「な…っ」
抵抗した雨竜が牙を剥くよりはやく、その唇は離れた。
「何をする…か?」
雨竜の言い切れなかった言葉を死神は代弁し笑った。
「あんたのその、厄介なプライドとやらをぶっ壊してやるんだよ」
「ーーー!」
数本の手が雨竜を押さえ付け、動きを奪う。
「離ッ…!」
腕をきつく握られて雨竜の声が詰まった。
「さぁ…今のうちに何か言っときたいことあるんなら言っていいぜ?」
死神がもう一度雨竜の自白を促す。
「………そう…だね…」
雨竜は口元がひきつりながらも不敵に笑う。
「仕事とはいえ…こんな野蛮で下等な方法を選んだ君達に……深く同情するよ」
雨竜の、精一杯の言葉の抵抗。
「…とことん可愛くねぇ野郎だぜ」
もともとこの段階で自白の期待などしていなかった死神は苦笑すると、無防備な雨竜の太ももに指をはわせながら衣の裾をたくし上げていく。
「まぁいいや。これからアンタは『女』にされんだからよ、その後にもっぺん聞いてやるよ」
裾をはだけられた衣は肌を滑るよう床に落ち、雨竜の白い身体を曝け出した。
「見ろよ、細っせぇ腰」
もういちど死神は雨竜の体を笑うと、その細い腰を掴む。
「まぁ…女にするにゃ丁度いいか」
睨みつけるように見開かれた雨竜の視線を正面から受け止めながら、死神は雨竜の細い足を強引に開かせる。
「女になるのは初めてか?あん?その気質だと男にもなったことねぇんだろ?」
「………ッ…」
雨竜の口が何か言いたげに少し開き、言葉を発することなく悔しげに閉じられた。
「処女だってんなら、じっくり慣らしてやるぜぇ?俺様は優しい男だからな」
冗談混じりにそう言って笑った死神の指が、雨竜の自分でも触れた事がないような箇所をつついた。
「ひ…っ!?」
反射的に雨竜の身体がこわばり、上擦った声をもらしてしまう。その様を鼻で笑うと、死神は雨竜の前髪を掴み上を向かせる。
「何ビクついてんだよ、怖ぇのか?あぁ?」
「……べつ…に」
「べつに、か。はッ無理してんじゃねぇよ!」
不敵に笑ってやろうと思ったのに、雨竜の笑みはぎこちなくひきつってしまう。こんな笑みでは自分がいっぱいいっぱいなのが相手に簡単に見破られてしまい悔しい。
「ホラ、これでどうよ?」
グ…と門を抉じ開けて、節くれだった太い指が雨竜の中に埋め込まれる。第二関節まで挿入された指は、ゆっくりと雨竜の内側をまさぐり始めた。
「…ッ!」
悲鳴を出すまいと雨竜は下唇を噛んだ。例えようのない不快感。
「指でキツキツじゃねぇか…こんなとこに突っ込まれたら、さぞかし痛ぇだろうなぁ?」
「裂けるんじゃないか?」
「それじゃつまんねぇよ。もっと解してやれよ、じっくりと!」
「……ぃ…っ」
内側を蠢く指が一気に根元まで雨竜の中に埋め込まれ、そして勢いよく引き抜かれる。硬い其処を解すように、羞恥心を煽るように、わざと時間を掛けて丁寧に、死神は雨竜の其処を嬲り続ける。
「く…うぅ…ッ!」
その異物感と違和感に、雨竜は表情を歪めながら必死に堪える。屈辱と恥辱で気が変になりそうだった。与えられる刺激ひとつひとつに過敏に拒絶を示す己の身体を笑う憎き死神達の前で、抵抗する事すら適わない。どんな時でも誇りを忘れるなと師の教えにはあったけれど、誇りを優先するならば…ここで自害でもするべきなのだろうか。だが、そんなわけにもいかない。誇りよりも大切なものを護る為には。
そんな雨竜の耳元に一人の死神がそっと口を近付けて言った。
「辛いでしょ?…言っちゃえばいいんだよ。『自分がやりました』ってね…?」
それが彼らの求める答え。この行為から逃れると同時に自分は殺人犯に確定し、自分だけではなくチャドや岩鷲の身の保証すらなくなる。そんなデメリットばかりの解答を、雨竜が選ぶはずもなく。
「さっきから…随分とおしゃべりだね、死神…ってのは」
「あん?」
雨竜の内側を蠢く指が一瞬とまる。
「……さっさと……やれば?」
今度は上手に笑えた、と思う。憎たらしい程の余裕の笑みを。
「たいした度胸だ…………そうかよ、じゃあ後悔させてやんぜ。慣らしてやろうかと思ったけどやめだ!」
指が乱暴に抜き取られ、雨竜は膝が顔につきそうな程高く両足を持ち上げられる。死神は自分の衣をはだけると、逞しい逸物を高く掲げられた雨竜の尻に押し当てた。
「見えるか?よっく見てろよ…これからコイツがてめぇん中にブッ込まれるんだからな」
「……っ」
視線を反らそうとした雨竜の顔は強引に見たくもない視界に戻されてしまう。露出された自分の恥部と、その奥に見える死神のペニス。
グッ…
「…ぅ…!」
アヌスにあたるものすごい圧迫感。熱い塊が雨竜の狭い門を無理矢理に押し広げる。耐えようとした四肢に力がはいり、にわかに細かく震え出す。
「力抜いてねぇと…まぁいいか、どっちでも」
自分の言いかけた言葉を死神は途中でかき消すと、雨竜の尻肉を鷲掴みにして左右に拡げ腰に力を込めた。
「は……ぅ!!」
肉が裂けるような、骨が軋むような、メリメリと身体を拡げられる感覚。
「は…!はぅ…く!」
拡げられていく雨竜の穴。
ミシッ…ズッ!
「ぐぁ…!」
大きな塊が雨竜の門を通り抜ける感触。亀頭が門を通り抜けたところで、死神は一旦動きを止めた。どちらともなくもれる荒い息づかいが行為の隙間をうめる。
「…っぅ、こっちが痛いくらいだぜ」
拒絶を露にする雨竜の身体は、死神の侵入を頑に拒み、吐き出そうとぎゅうぎゅうに締め付けていた。それは死神にも痛みをあたえるが、雨竜にもその何倍もの苦痛が生じてしまう。辛そうに息を吐きながら、雨竜は裂けそうな感覚と戦っていた。
「おい、見な!ちゃんと見るんだよ!」
硬く瞳を閉じて痛みを堪える雨竜の顔を死神の手が平手打つ。
「ほら…わかるか?てめぇんナカに死神が入ってるぜ?」
薄らと瞳を開いた雨竜の視界に、己の股間に穿たれた太いペニスが見てとれた。死神を身体に受け入れているという事実が、雨竜のプライドに突き付けられる。
「今からこいつが根元まで入って…てめぇのケツ穴に何度も出たり入ったりするんだぜ?想像できるか?」
プライドの高いお前に耐えられるか?とばかりに言葉で雨竜を追い詰めようとする死神達。
「………っ、んな…必要もないでしょう…」
雨竜は苦痛に歪んだ顔で苦笑した。
「想像なんて…しなくても、今から…見せてくれるんでしょう?」
圧倒的に劣勢なのは充分に理解しているつもり。だがあくまでも、雨竜は生意気に反抗してみせる。そうすることで、己のプライドを保つかのように。
「…そーかいそーかい、てめぇもさっさと見てぇのかよ、それじゃ…見せてやるよッ!」
ヌグ…グ…ズボッ!!
「ーー!!」
陰茎を一気に根元まで押し込まれ、雨竜の喉が仰け反った。
「ぐ、ぅぐ…ぐっ…ぅ」
身体の奥底を突き上げられて内臓が激しく圧迫され、予想を上回る苦痛に雨竜の口から苦しそうなうめき声がもれる。
「ほら、見るんだろ?しっかり見てな!」
雨竜からはっきりと見えるように、死神はさらに雨竜の身体を折り曲げ足を開かせた。死神のペニスを根元まで飲み込んだ雨竜のアヌスが、目一杯に拡がってびくびくと痙攣しているのが雨竜の視界に入る。
「いくぞ」
声と共に、雨竜の目の前で己の身体から死神のペニスがずるずるっと勢い良く引きずり出される。絡み付いた粘膜が激しく引っ張られ、雨竜のアヌスが捲れあがる。
「おぁッ、あぁああッ!」
挿入される時とはまた違った苦痛に、雨竜は自分でも予定外に大きな悲鳴をあげてしまう。
「なんだ、抜く方イイのかよ」
我慢できずに声をあげてしまった雨竜を、してやったりとばかりに鼻で笑うと死神は抜いたばかりのそれを再び最奥まで押し込んだ。
「ぐがッ…ああぁ!」
捲れた粘膜を中に押し込むように強引に突き刺し、一気に奥まで挿入する。腹底を突き破るような衝撃波。すべてが雨竜の予期していた苦痛以上で、あがる声を押さえられない。
ずぶッ!…ずるる…ズボッ!…ズロロッ…
「は、はぁッ!ひっ…う、くぅッ!あひっ…!」
滑りの良くない其処に太いペニスを乱暴に出し入れされ、雨竜の白い尻を赤い体液が伝い堕ちる。一筋、また一筋と。
「はッ…だんだん滑り良くなってきてんじゃん」
流れた血を潤滑油にし、死神は更に抽送を速め雨竜を攻め立てた。
ズッ、ズッ、ズンッ、ズッ!
激しく内側を擦りあげる熱いペニス。乱暴な抽送は痛みしか与えず、雨竜の身体を内側から傷つけていく。繋がれた其処が燃えるようにあつく、激しく痛い。
「ひぃ…ッ…く、ぅ!」
必死に声を押さえようとしても、絞り出すように悲鳴が漏れてしまう。
「このまま…ナカにブチ撒けてやるぜ…!」
雨竜の中で死神の硬度と体積がぐんと増した。
「や…!」
拒絶する雨竜の肉を押し退け、死神は一際激しく雨竜を穿つと最奥に熱い体液を迸らせた。
「はぁっ…あああぁッ…!」
熱い液体が身体の奥に拡がっていき、雨竜の身体は痙攣するように死神を強く締め上げた。
「うっわ、すっげ締めやがる…!イテテ…!」
ずぽんっ!
あまりの締め付けに顔を歪めながら、死神は締る其処から無理矢理に自分を引き抜いた。
「は…はぁ…はぁ…」
抜かれた雨竜の穴は括約筋がヒクつく度に中に放たれた体液がどろりと吐き出されながら、元の形に窄まっていく。乱暴に擦られた為に赤く腫れ上がってしまっているのが酷く痛々しい。
だが、これだけでは終らない。雨竜の置かれている状況はそんな生易しいものではないのだ。
「おい何休んでんだ?…お前は全員の相手すんだよ、これから!」
痛むアヌスに、再び熱い塊を突き付けられ雨竜の身体が強張る。
「ひとり済ませたくらいでへばってんじゃねぇよ!」
ズズズズ…
「は…あ、ああああぁッ!」
さきほどまで拡げられていたアヌスは最初よりは円滑にペニスを受け入れる。中に放たれた体液も恰好の潤滑油だ。
「うっ!あぁ、く、あっ!」
死神は直ぐに激しく抽送をはじめた。一気に根元まで貫いてはギリギリの所まで乱暴に引き抜き、また貫く。最初の死神と行動は同じなのに、その光景は先程までの暴力的挿入とは少し違っていた。雨竜の中の血の混じった精液がぐちゅぐちゅと音を立てて泡立ち、ペニスの動きを助けている。一度中に放たれた事がこの暴力を酷く淫猥な光景へと変えていたのだ。
「死神に…ケツ穴突かれまくって、どんな気分だ滅却師?えぇ?」
激しい抽送を止めることなく、死神は雨竜に言葉を投げかける。
「憎っくき死神のチンコ喰わえこんでズボズボ音立てて…ちゃんと見えてんのか?」
ぐい、と雨竜の髪を掴んで股間が良く見えるように顔を向けさせる。
「ホラ…すげぇ拡がってぐちょぐちょ音立てて、これがてめぇのケツ穴だぜ?理解してるか滅却師!」
「ふ…うぐ、くぅ…!」
死神の言う通り、雨竜の其処は死神のペニスを受け入れる為に大きく拡がり、抽送の度に粘膜をちらつかせながらぐちゃぐちゃと音を立てて淫らで醜い様を晒していた。雨竜にはこれが自分の身体の一部だとは、信じ難い。というより、…信じたくない。
「何が誇り高い一族…だよ、みっともねぇ恰好しやがって」
嘲笑う中傷に込み上げる屈辱を、雨竜は唇を噛み締めて堪える。彼らの狙いは、雨竜の頑な精神を壊す事。プライドを崩す事。だから挑発を間に受けてはいけない、雨竜はそのことは把握していた。何をいわれてもできるかぎりの平常心で切り抜けようと。
「なに声殺してんだよ?もっと声だせよ、ホラ!ホラ!」
「あ、うぁ!うぁっ!ヒイッ…うあぁッ!」
わざと痛みが増すように突き上げられ、雨竜の身体が跳ね上がる。ガンガンと奥壁を突き上げる律動に雨竜の身体ががくがくと揺れ、次第に雨竜の瞳が虚ろに空を彷徨いだす。
「ひっ…あ、ぃ…っ」
それでも止まる事のない暴力に、悲鳴の声すら意識に比例して遠のき始める。意識を手放す寸前だった。
「…だいぶ、キテんな」
雨竜の顔を覗きこんだ死神が、その様子を見て呟いた。
「辛ぇんだろうが?あぁ?」
「…っ…」
虚ろな瞳の雨竜は何も言わない。
「なんだ、会話ももうできねぇのか?」
雨竜の口からは上擦ったような悲鳴がこぼれるだけだ。
「ホラ…いえよ!」
ここぞとばかりに、死神は言った。雨竜に正常な判断力がない今だから。
「全部喋っちゃえばやめてやるぜ」
「自白しちゃいなよ!」
ビク、と雨竜の眉が動く。
「や…」
「…や?」
雨竜の口から何か声が発せられ、死神は行為をやめて雨竜の言葉の続きを待った。
「や……やめるのかい…?もう…フフ…それは良かった…」
「……!」
殆ど意識のないはずなのに、雨竜はそう軽口を叩くと、虚ろな瞳のまま僅かに笑った。意識が朦朧としていようと、それだけはしてはいけない事というのを雨竜の身体は無意識に覚えているのだ。
「…これが、滅却師っつぅやつかよ…」
肉体も精神もボロボロの状態に追い込んでやれば自白でもするかと思った。だがそれは滅却師という一族には効果がない。
「いや、まだだ。まだ壊したりねぇ…!」
それでも、死神達にも他に案が思い付かないのだ。
「そうだ、もっと…追い詰め足りないからだよ!」
この滅却師を犯人にしなくては。自白させなくては。たとえそれが身に覚えのない罪であろうとも。
「……………」
部屋にいる死神達が様々な面持ちで雨竜を見つめた。性欲に目を光らせているもの、仕事と割り切っているもの、僅かに同情を感じさせるもの、人様々に。
「…つづけるぞ…」
死神達は、皆黙って頷いた。意識のなくなりかけた雨竜に平手をして意識を呼び戻すと、再び行為を再開する。
「は…あ、ぐ、あああぁっ!」
意識の戻った雨竜の悲鳴が、再び鳴り響く。
死神と滅却師、この相反する二つの種族の根比べはまだ始まったばかりだった。
欠損 〜終〜
2005.04.17