忘れない夜
「や…アアァーーッ!」
雨竜の奥深くに男のモノが突き刺さる。
「…誰が誰を『倒す』だって?笑わせんじゃねぇよ」
男は乱暴に雨竜を突き上げた。
「ウッ…アッ!…くっ…!」
妙な閉鎖された結界のような空間の中、見えない糸が雨竜の腕を締め上げる。
まだ癒えていない先日の傷が開き、包帯から滲み出す。
こんなボロボロの両腕で、何が出来ると思っていたんだろう。
「ハッ、ただの生身の人間風情がイイ気になるんじゃねぇぞ!」
「あっ…くぁッ!」
つい先程初めて顔を合わせたこの男、雨竜の嫌う『死神』という存在。
深夜に感じた死神の気配。
知らない二つの強大な死神の気配と、良く知ったもう一つ。
力を無くした死神、朽木ルキア。
<憎い>
という感情の影に見え隠れした、
<護らなくては>
という感情。
『山ほどの人を守りてぇんだ』
雨竜はそう言った彼を、
『この町の人間を誰一人死なせるつもりは無い』
と豪語した自分より、
強い
と素直に感じた。
あいつなら本当に、山程の人を護るだろう、
自分の力の弱さを痛感したこの自分より…
そう、思ったばかりだというのに。
そのあいつが、護らなくてはならない人の危機だというのに、
そこにいない…!?
腹立たしさとともに、沸き上がる熱い感情。
(僕が…護らなくては!)
ただ、それだけで家を飛び出していたのかもしれない。
本当は、適わない事も解っていたんじゃないだろうか。
「その細っこい腰が砕けるまで突き壊してやるぜ!」
「は…あぁッ!く…うあぁッ!」
男は言葉通り、雨竜の細い腰を壊さんばかりに突き上げる。
ガクガクと揺れる雨竜の身体から、赤い体液が滴り落ちる。
腕から、そして暴力を受け入れている其の箇処から。
「へっ…おいメガネ、テメーこんな事サれて感じてんじゃねぇか!初めてじゃネェな?」
「く…うぅッ!くぅッ!」
苦痛に呻く雨竜の前に廻された手が、乱暴に雨竜を握りしめる。
「あうッ…!」
この暴力に、変化を示し始めた雨竜のソレを。
「気持ち良いのかぁ?はぁん?この変態ヤロウ!」
「うッ…く…くそ…おッ…!」
不本意な反応を見せ始めた己の身体と男の言葉攻めに、
雨竜はどうしようもない怒りと憎しみが込み上げる。
こんな暴力を、雨竜の身体は苦痛を快楽に変換して生き延びようと目論んでいる。
こんな事は初めてじゃ無かった。
幼い頃からこんな風に扱われることを覚えさせられていた。
好きで覚えたワケじゃ無い。
『死神』が憎かった。
すべては奴等によって歯車が狂い始めたから。
苦痛にうめき声を漏らしながらも、反応していく雨竜のそれを片手で握りながら、
男は雨竜の耳元で囁いた。
「この淫乱メガネ」
「は…ッ!?」
ドクッ…!
乱暴に突かれる身体に、突如死神の霊力が勢い良くが注がれた。
「あ…う!あ…アァッ!!」
以前、雨竜は黒崎一護の霊力をその身に受け止め、
彼の霊力を自らの肉体を中継させて放出した事があった。
だが今は、その自分には支えきれない霊力を放出するべき両腕は、雨竜の自由にはならない。
行き場を無くした強力な霊力が、雨竜の中で暴れ回った。
「ぐぅーーーーッ……!」
身体の壊れそうな衝撃波に、雨竜は歯を食いしばり耐える。
「……………っ…くぅ…はぁっ…」
ビリビリと空気を裂くような波動がおさまると、雨竜は衝撃になんとか耐えきった身体から、
一気に力が抜けていくのを感じた。そして自分の霊力が著しく消耗している事を知る。
そう何度も耐えられる衝撃では無い。
「そんなに良かったか?淫乱さんヨォ」
「ウッ…!」
屈辱に噛み締めた唇からも、一筋の血が伝った。
「でもなぁ…」
「は…うッ!?」
男は繋いでいた雨竜の身体を乱暴に突き放す。
「楽しまれてちゃ面白くねぇんだよ…オレはこれからテメ−を『殺す』んだからなぁ」
男が腰の刀を抜く。
「どうせならもっと泣きわめいてもらわなきゃな…」
「ーーッ…!」
魂魄を切れる唯一の刀、斬魄刀。 生身の人間をも傷つける事が出来るものなのだろうか。
その答えをこれから知るのだろうと、雨竜は妙に冷静に思った。
「へへ…知ってるか?斬魄刀ってのはなぁ、所有者の能力次第で形をかえるんだぜ」
鞘から抜かれた男の厳つい刀が、妖し気な霊力を放ちながらその輪郭を変えていく。
「思念次第で…こんな事も出来ちまうんだぜェ…」
そして再び雨竜の目の前に表れたその刀の輪郭は、歪に卑猥な形をしていた。
「…っ…なッ!?」
「 ……イイ形だろ?お前の為に造ってやったんだぜ…」
男はその刃先を舌で舐めあげた。その刀の輪郭は鋭利ではない。
たぶん、わざとそうしたのだろう。
雨竜に出来るだけ苦痛を長く与える為に。
グッ…
「あ…ッ…」
男は今まで嬲っていた雨竜の其処に刀を押しあてた。
人の肉体より桁外れに…太い。
雨竜の身体が恐怖に引き攣る。
ギシ…ミシッ…ミリリッ…
「ヒッ……」
拒む身体を、刃先が抉じ開ける。
「うあ…う…うあ…っ…」
ガクガクと膝を震わせたまま崩れ堕ちそうな身体を、
両腕に絡む糸が雨竜を吊るし上げるように引き起こす。
ギリギリと締め上げられる手首から、また血が滲む。
「コイツでもイケるか?変態メガネ」
中途半端な力で勿体つけるように雨竜の蕾を嬲っていた男は、その手に一気に力を込めた。
ズブブゥッッ!!
「ウアアアアアアアアァーーーーッッ!!」
刀身が勢い良く雨竜の身体に突き刺さる。
ポタッ、ボタッ
太さに耐えかねた口が切れて更なる出血を呼ぶ。
「テメ−の細腰にゃキツすぎたか?あん?」
男は笑いながら刀身を雨竜の身に進めた。
ズズ…ズリュ…ズブブ…
「うぁ…ヒ…ィッ!く…っあぁーーッ!」
太さもさる事ながら、その刀身の、長さ。
簡単に雨竜の身体を埋めつくし、最奥の限界壁に到達する。
「あぐッ…う…あがあぁッ!!」
細い腰に埋め込まれた凶器が、内側から雨竜の薄い腹を競り上げる。
「気持ちイイか?えぇオイ?」
ズリュ…ズドッ…ズリュ…ズトッ…!
「ひ…ぎッ…うぁ!ぐ…がはッ!」
男は凶器を握る腕を前後に動かしながら、雨竜の腹を突き上げた。
「あ、ウッ!ぐぁッ、ハッ…くはッ!げほッッ…」
腹の薄皮越しに突き出る内なる刀身に、雨竜は翻弄される。
尋常で無い程の突き上げに、傷付いた入口から、道から、止めどなく出血が溢れてくる。
雨竜の瞳からは涙が溢れていた。
圧倒的な力の差をこんなにも屈辱的な形で味わわされているこの現状に、
悔しくて、情けなくて涙が溢れた。
「残念ながらお遊びはここまでだ…このまま突き殺しちゃるゼ」
「ぐ…」
そう言った男の霊力が変化するのが雨竜に伝わった。
男の手に握られる刀にその霊力が集中する。
そして雨竜の中で刀が再び変型していく。
「ヒァッ…!いッ…うあっ…!?」
内側を蠢く霊力の塊。そしてそれは再び輪郭を明確にする。
雨竜の中に挿入されたままの其れの先端部は、刀本来の鋭利な形に変型していた。
「イッ………」
全身を駆け抜ける恐怖。
「コレであの世までイッちまいな!」
男はその刀で勢い良く雨竜を突き上げた。
ズシュッッ!!
「ーーーーーッ…!!」
目の前に飛び散る己の血。
そして、その赤の中心から突き出た刃先。
「あ……」
雨竜の視界が、暗転した。
ドサ…
地面に崩れ落ちた身体。
「ほら、だから言わんこっちゃねェ」
馬鹿にした声が雨竜に投げ付けられる。
倒れたのは、先程までの閉鎖された妙な空間では無く現実世界だった。
倒れ込んだ雨竜は、服まで着ている。
今のは…幻?
「げほっ…げほっ…はぁっ…」
しかし雨竜の腹の傷は紛れも無く内側から突き破られていた。
今までの事は、夢でも幻でも無い。
幻覚の中で受けた現実。
確かに受けた屈辱の傷。
雨竜は異空間で凌辱を受け、再びこの地に戻されたのだ。
この場に留まった者にしてみれば、瞬殺されたと錯覚するような、時空の歪みの中で。
身体はもう、寸分たりとも動かせなかった。
死神に対して生身の肉体で挑むと言うのは、本当に馬鹿げた行動だったのかもしれない。
「さて…そんじゃトドメといっとくか。死ぬ前によーーーく覚えとけよ」
振りかざされた男の刀は、嬲るための淫猥な形では無く、既に本来の武器としての形に戻っていた。
「阿散井 恋次、てめーえを殺した男の名だ。よろしくっ!!」
雨竜に刀が振り降ろされる。
(…僕は……死ぬ…のか…)
雨竜がそう感じた瞬間だった。
ズドォン!!
大きな霊力が突如出現しその場を掻き乱した。
現れたもう一人の『死神』。雨竜はその男をよく知っていた。
(黒崎…一…護…今……僕を……助けた……のか……?)
雨竜は薄れ行く意識の中で、憎たらしい程知ったその霊力に、僅かに安堵感を感じていた。
意識を取り戻した雨竜は、妖し気な商人の元にいた。
傍らには一護が眠っている。酷い傷を受けて眠っている。
「黒崎…」
あの後、何がどうなったのか雨竜はよく覚えていない。
不覚にも意識を手放してしまっていた。
ただわかっている事は、気がつくと一護も自分同様倒れていて、朽木ルキアがいないということ。
護れなかったのだ。
「あぁ気がつきなすった?どうです身体の方は」
致死的被害を受けたはずの雨竜の身体の傷は、表面上は綺麗に回復していた。
だが、塞がったはずの傷からの鈍い痛みと、身体に残る凌辱の痛み、屈辱と敗北感は癒えない。
「それにしても随分奇特な傷を受けてたようですけど?一体どうなされたんで?」
「くっ……!」
興味本意で聞いてくるようなその男の口調に、雨竜は羞恥と屈辱で顔を染める。
自分を治療しただろうこの男は、何がどうなってついた傷かなんて容易にわかるだろう。
それをそしらぬ素振りでわざわざ聞いてくるとは、随分性格が悪い。
「ああそうそう、おせっかいかもしれませんけどね…」
その商人、浦原喜助はふざけた口調から急に真面目な語調に切り替わり、言った。
「あなた生身の人間なんですから、ああいう無謀な行動は賢くないんと違います?」
「…………」
無謀。
暴走するように突入してしまった自分。
無謀な行動。
尤もなその意見に、雨竜は拳を握りしめた。
今は腹の傷と共に、癒えている腕の傷。
咄嗟に矢を放つ事も出来なかったこの役立たずの腕。
弱い自分。
滅却師として人を護る為にいる自分。
最後の滅却師、たった一人の滅却師。
その自分が…護るのではなく、護られた自分が…許せない。
「まだ痛覚が残ってるんでしょう?コレをお飲みなさいな」
差し出された薬を雨竜は拒否した。
「黒崎を…よろしくお願いします」
「もう行きなさるンで?」
「……はい」
自分の倒れていた筈のその場所に、雨竜は再び来ていた。
ここで生死をかけた戦いがあった事など微塵も感じさせない、普通の路上。
以前の騒動の時のように、あの商人の一行が綺麗に後始末をしたんだろう。
だがここであの男と出会い、これ以上無いと言う程の屈辱を受けた記憶は消せない。
(阿散井…恋次…)
その名を思い出し、雨竜はギリッと奥歯を噛み締める。
(その名前…忘れない…忘れないぞ!)
その場を後にしたその脚で、雨竜は一人、何かを内に秘めそのまま山へと向かっていた。
end
あの恋次との空白の戦闘シーンの魅夜的大妄想です!(大阿呆)
雨竜の腹の傷、あれは絶対中からなんです!内から突き壊されちゃった傷なんです!!(魅夜以外にこんなこと考える奴いるのか〜?/苦笑)勿論、斬魄刀でンなことは出来ないって事くらいわかってますよ。そんな術も使えないってコトも。恋次もこんな人じゃないってのも承知の上で書いてます。でも、魅夜的には恋次は雨竜に対しては最後まで鬼畜な人でいて欲しいわv これもひとえに妄想のなせる業(笑)。あぁもっと原作でも雨竜を虐めてくれ!(爆)
雨竜って相手を察知する能力に長けているじゃないですか。見つけるだけ見つけるコトは出来ても、それに見合った体力も能力も持ち合わせて無いんですよね、不憫な子。きっと見つけたら無視できなくなっちゃって、無謀に突っ込んでいっちゃうんですよ。…でもそれって、感度は抜群にイイのに躯が感度に追いつけないってコトですよねぇ?とことんヤラシイ設定だな雨竜!(お前がだ)
それにしても、今までの異物挿入モノのなかでコレが一番突っ込んでるモノ過激だね。刀だし。やっぱり普通死ぬよね。いや、実際殺そうとしてるんだけどさ。生死かけて戦ってるお話だからこのくらい過激でも有りでしょ?(笑)。
2002.12.11