愛憎


「そんなに能力が欲しいか、雨竜」
「………」
 失った滅却師の能力を戻す事の出来る唯一の男の前で、雨竜はその胸に秘めた決意と共に佇んでいた。実の父であり、そして認められた最後の滅却師の正当な後継者。もうこの男の力に頼るしか雨竜に道は残されていなかったのである。
「……来なさい」
 竜弦は院長席を立ち歩き出すと、隣の部屋に入っていった。雨竜も少し離れてその後を追う。その距離はまるで二人の心の距離を現しているようでもあった。
 連れられて入った部屋は診察室のような個室で、棚に様々な医療用の機具が立ち並んでいた。竜弦は診察台の前で立ち止まると、雨竜を見て言った。
「服を脱いで其所に座るんだ」
「…!」
 雨竜の身体が無意識に身構える。
「…どうした、能力が欲しいのでは無いのか」
「………」
 仲間との決別を選んでまで決断した答えだ、雨竜とてそう簡単に覆すわけにもいかない。雨竜は無言で服を脱ぐと、言われるがまま診察台に座った。
「ふん…身体ばかり大人の様になりおって」
 竜弦はそんな雨竜を見下した目で冷ややかに笑う。
「今から聞く質問に答えなさい、良いな?」
「……はい」
 雨竜は屈辱感と羞恥心を噛み殺して素直に返事を返した。能力をとりもどすまでの、暫しの辛抱だと自分に言い聞かせて。
「…あの死神の少年と、性行為をしたか?」
「!」
 予想外の竜弦の質問に、雨竜が動揺する。
「…したか?」
「………はい」
 この人に嘘はつけない、と思った。雨竜は目線を逸らすと溜息混じりに正直に答える。
「どのくらいの頻度だ」
「そ…そんなには…してません」
「具体的な回数を聞いている」
 竜弦は雨竜にとっては屈辱でしか無い事を自ら語る事を要求して来る。
「………最初に強引にされて…その後、2、3回くらいです…」
「何がそんなには、だ。それだけあれば充分だ」
「…………はい…」
 竜弦の言葉のひとつひとつは侮辱的で、また適確に雨竜に屈辱感を植え付けた。
「それでお前は…」
 竜弦は表情一つ変えずに質問を続ける。
「尸魂界で無様にも捕まったそうだな」
 ビク、と雨竜の表情が強張る。それは雨竜にとっても記憶から消したい過去。
「何をされた?」
「………」
「答えなさい」
「………」
 それはあまりにも屈辱すぎて、声として発する事を拒絶する。
「言うんだ」

 だが竜弦は、それを雨竜の口から語らせることを要求した。
「………されました…」
「聞こえんな」
 非情な竜弦の言葉は雨竜を追い詰めた。雨竜は現状に逃げ場など無いと悟る。屈辱的な事実を自らの口で露呈しなければならないという事から。
 諦めたように、雨竜は重い口を開く。
「………輪姦……されました…」
 雨竜は俯いて小さな声で答えた。
  パン!
「!」
 その瞬間、雨竜の頬に衝撃が走る。
「……馬鹿者」
 竜弦は相変わらず冷ややかな目で雨竜を見下し、その頬を打った。
「滅却師が尸魂界にいけばどう扱われるかなど…容易に想像出来る事だろう」
「………」
「ましてお前のような未熟者が、だ。愚かすぎて呆れるぞ雨竜」
「く…ッ…」
 悔しい事に、竜弦の言う事は尤もだった。敵の手に堕ちたのは自分が未熟で力不足だったからに他ならない。
 何も、言い返す事など出来ない。
「ふん…」
 竜弦は気落ちしている雨竜を鼻で笑うと、戸棚から何かの薬品を取り出し言った。
「脚を開きなさい」
「!!」
 全裸で竜弦に向けて脚を開く事を要求され、雨竜は反抗するように竜弦を睨み付ける。
「…能力が欲しいのでは無いのか?」
「く…」
 だがそれを言われると、雨竜は従わないわけにはいかなかった。躊躇いがちに雨竜の脚はそろそろと開かれていく。
「もっとだ」
「……く…」
 竜弦に秘部が見えるまで開脚すると、雨竜は竜弦を睨み付ける。
「そうだ、そのまま自分で脚を押さえていなさい」
 竜弦はそう言うと、薬品を指先に取り雨竜のアヌスに挿し入れた。
「ヒ…!」
 雨竜の口から上擦った悲鳴が一瞬漏れた。
  くちゅ。くちゅ。
 竜弦の指が雨竜を解す。
「〜〜ッ…!」
 ビク、と時折身を震わせ、雨竜の顔が次第に朱に染まっていく。
「…こんなことをされて、感じるのか」
「………ッ…」
 カァ、と一気に雨竜の顔が赤くなる。
「暫く会わぬうちに…随分と淫らで浅ましくなったものだな、雨竜?」
「ふ…っ、…ぁ…」
 本数が増やされ、雨竜の弱い箇所を頻りにつつきあげる竜弦の指。まるで雨竜の弱い所を最初から知っているかのようだ。
「そんな子に育てた覚えはないんだがな」
「………」
 そんな時に発せられたその言葉は、雨竜の反抗心を大きく突き動かす言葉だった。
「……んたに…」
 それまで一方的に受け身だった雨竜は、初めて竜弦に言い返す。
「あんたに…育てられた覚えは、ないんでね……」
 自分を育てたのは、祖父だ。師匠だ。この男に育てられたと言う気は雨竜には毛頭ない。
「……ほぅ?」
 ピクリ、と竜弦の眉が僅かに揺れた。

 
「ならば私も…貴様を息子とは思わぬ扱いをしてやろう」




  地下二階につづく

 

 

 

ええと…すいません、かいてるうちに地下一階にはおけないものになってきました。続きは近々地下二階で。
ていうか魅夜…ちょっとやりすぎたかも?(苦笑 )

2004.08.06

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