予兆
「や…遠坂っ…!」
「だって、医者からいわれてるでしょう?
ちゃんと下半身のリハビリを続けてないと 」
「や…あぁ、んッ!」
「こうして、強制的にでも脚を動かしていないと
筋肉が退化してしまいますからね」
「あんっ…ん…あっ……!」
遠坂は狩谷に繋がったまま、意志の届かない狩谷の脚を
屈伸させるように動かし続ける。
下半身全体を揺らすように動かしながら
何度もその脚を揺らす。
「あ…くっ、はぁ…あッ…!」
こうしてリハビリと託つけて、遠坂は狩谷を抱く。
最初は抵抗していた狩谷も今となっては
遠坂の好きにさせていた。
幻獣共生派という異端の事実を隠したまま
軍に所属し続けるこの二人には
人には理解できぬ精神の一体感があった。
「こんな…無駄…なんだよ…ッ、
どう…せ…僕の脚は…っ、もう…っ」
「…諦めないで下さい狩谷君、きっと治ります」
「気休めを…言うなッ…何も知らないくせに…っ」
「治します!…僕の財力の全てを失ってでも、
きっと貴方を治してみせます 」
圧倒的財力を持つ遠坂圭吾。
最新の医学療法に惜し気も無くその財を費やし
狩谷に治療を促すおせっかいのお坊っちゃまだ。
たとえ今は無理でも、今後医学が発展すれば
いつの日かきっと狩谷の脚を治せると信じている。
その心はとても純粋。
狩谷はそれが、酷く疎ましく思える時がある。
そんな澄んだ心が向けられる程自分は
綺麗なものではなくなってきている。
狩谷は最近その事に気付き始めていた。
モウスグ僕ハ 自分サエモ失ウ…
「………遠坂は…何も失った事が…ないから、
そんな事を…言える…っ…」
「…そうかもしれませんね…でも何かを失うとするなら…」
遠坂は狩谷の唇にそっと自分の唇を重ね合わせる。
「貴方が生きる気力を失う事が、僕は一番恐い…」
「…遠……坂…」
「たとえ貴方が幻獣共生派だろうと…
たとえその体を闇に蝕まれていようと…」
「!…遠坂…お前何を知って…」
「あなたの傍にずっといますよ…だから…」
狩谷に比べて大柄なその体が、狩谷の体を包み抱き締める。
愛しそうに、壊れ物にでも触れるように、
大事に、優しく、抱き締める。
「見失わないで下さい」
「……………」
狩谷は困ったように視線を泳がせ
ただ黙って遠坂のキスを受け止めていた。
日に日に狂い始めていく貴方をとめる事が
僕には出来ないかもしれない。
それならば
最後まで
貴方の傍に居よう…。
たとえその行為が…『悪』と呼ばれようとも。
end
2003.10.05
実は狩谷を一番想ってくれそうなのは彼なんではないかと思ったりもする。
でも狩谷はこんな風に自分を労り尽くしてくれる人には素直になれないと思うわけ。
実らない想い代表、遠坂×狩谷。そして遠坂→狩谷推奨v
遠坂は狩谷の異常さに一番早く気付いているという設定の下でかいてます。
狩谷にも狂気の自覚が薄々現れております…って説明付け足さなきゃわかんないのがイタイ。
なんかガンパレはかけばかくほど設定がわけわかんなくなってくるんですが(苦悶)
まぁいいか…(笑)
感想を送ってみる?