『角というのは、魔力は勿論、肉体的な力、健康状態や寿命に至るまで
そのすべてを司る源となっている大事なものなのよ…』

そう語ってくれたのは、蒼の派閥の召喚師であるミントだ。
獣属性を専門に扱っているだけに、角については詳しい知識を持っていた。
…あの男は言った。
この角を切り落として殺せ、と。
角を切る事がそれ程の意味を持つものだと言う事が
角を持たぬ者にはよくわからない。
まだ年若い3人の戦士は、自分達の敵についてもっと良く知るべきだと考えた。
だから、ミントに角のことを相談したのだ。
敵と戦う為の一つの知識として。
だがその話を聞いた時に、ふと思った素朴な疑問。
「セイロンの…あれって、やっぱ角だよな?」
「うん、角…だね」
「あれも、魔力の源なのかな?」
同世代の少年達の、好奇心。
龍人の『角』。
それは龍の証たる神聖な組織。

それが獣属性の者と同じであるならば…。
「折れたら、どうなるんだろ?」
「どうなるのかな…?」
「折れると弱っちゃうのかな?」
「もしかして…セイロンも角折れたら死んじゃうとか!?」
「ええええぇ!?」
「まさかそんな!?」
「ありえないことじゃないよな…」
「うん…」
話しては、ちょっと考え込む少年達。
「…やっぱ折れたらすごく痛いのかな?」
「えぇ!?感覚ってあるものなの?」
「あれって骨の一種だろ?感覚あるんじゃないの?」
「う〜ん、どうなのかなぁ…」
想像だけがどんどん膨らんでいき、答えは誰にも見つけられない。
「……………」
3人顔を見合わせて、ほぼ同時に頷く。
「いこう!」
3人は立ち上がる。
答えを、捜しに。

 

 

羊達の戯れ

 

 

「「「セイロンの触らせて!」」」
唐突なその言葉に茶を吹いたのは、隣で一服していた三味線侍。
「な、いいだろ?ちょっとだけ!」
「触られたらどんな感じなの?」
「やっぱ大人になると大っきくなって来るの?」
当の本人は畳み掛けるような質問攻めに目をまるくしている。
いきなり集団であらわれるなり、
セイロンを囲んでの『触らせて』攻撃。
「あ〜、えーと、少年達?」
こほん、とせき払いをしてシンゲンがその質問攻めの間に割ってはいった。
「そのような卑猥な好奇心は、もう少し大人になってから…ごふぁッ!」
セイロンの裏拳を受け沈んだシンゲンを押し退け、
あくまでも真面目な顔でセイロンは受け答える。
「一体何のことか?ちゃんと順を追って話してくれぬか店主殿?」
「あぁ、そっか…じつは…」
ライは先程ミントから角の話を聞いてきたことを話した。
敵の角の話をしていて、セイロンの角の話に話題が移っていった事。
「…なるほど。それで、我の角に興味を抱いた、と?」
「うん!」
3人そろって、目を輝かせ返事をした。
その輝く瞳の視線の先は、セイロンの角。
いまにも手を伸ばして触りそうな気配を大放出している。
「ね、だから、触っていい?」
「そ、それはならぬ!」
セイロンは大人気なく必死に否定し、後ずさった。
「なんで?なんで触っちゃだめなの?」
「む…それは…」
なぜ 触られたくないか。
この無垢な瞳の前では口が裂けても…言えない。
「なんで?ねぇなんで?」
「ひょっとして、やっぱり急所なのか?」
「もしかして触られただけで死んじゃうの!?」
「そ、それは…」
そのとき、背後でベベンと三味線の音が鳴る。
「なるほど、角の話でしたか…いやはやこれはとんだ早とちり」
別の意味を想像していたと思われるシンゲンは、
起き上がるなり会話に無理矢理参加してきた。
「何をムキになってるんです?たかが角くらいで」
「なッ!?」
その『角くらい』が、どれだけこの男に悩まされた事か。
セイロンはシンゲンを睨み付けるが、本人はもう睨まれることに慣れっこなのか
臆する事もなく調子のいい事を口にした。
「若様…若者の好奇心をむげにしてはなりませんな?」
「な…」
卑怯な言い回し。
「触らせてあげたらよろしいじゃありませんか♪」
「そそ!そうだよなシンゲン!」
「よろしいよろしい!」
「ね、お願い!ちょとだけ!」
「うぐぐ…!」
「そうそう、ちょっとだけよ〜♪っと」
べべん、と三味線をかき鳴らし、調子っ外れの詩を口ずさみ少年達を煽りながら、
シンゲンは愉快さを堪えるのに必死だった。
角を触ればどうなるか、シンゲンは良く知っている。
それはもう、素面では直視出来ない程の結末になってしまう事を。
それを知っているのは、この宿ではおそらくシンゲンただ一人。
シンゲンに知られてしまった事だけでも、相当の不覚だと感じているセイロンは、
これ以上それを周りに知られる事は良しとしないだろう。
だがここで、擦り寄る子犬を放り投げるような行為も
年長者としてはどうかとも考えていることだろう。
これは、たいへん興味深い見物である。
「ね〜セイロンてば!」
「おねがーい!」
「なにか敵と戦うヒントになるかもしれないんだよぉ」
「む…むぅ…」
ここで断れば、とても心の狭い人物という印象を与えてしまうだろう。
彼らはシンゲンとは違い、本当に悪気なく、純粋な探究心なのだ。
ほんの少し、触らせるくらいなら…。
「…わかった。…良い、ぞ…?」
「え?」
「いいの!?」
「ホント?」
少年達の表情がパァっと明るく輝く。
「うむ、だが少しだ…けッぃ!?」
言い終わらないうちに、セイロンの語調が乱れ、
手にした扇子が床に落ちる。
セイロンが許可をした途端、
無垢な手はセイロンの角に一斉に伸ばされていたのだ。
「へー、思ったより冷たいんだな?」
「僕も触りたい!」
「うわー、すべすべしてる!」
「〜〜ッ!!」
声があがりそうになるのをぐっと唇をかみしめて押し留めるが、
身体から力が抜け、セイロンは床にぺたりと膝を着いた。
「お、セイロンありがとな」
「これで触り易いね」
それをわざわざ屈んでくれたものと思ったのか、
目線の高さにおりてきたその興味の対象を
少年達の好奇心が容赦なく弄りたおす。
「なぁ、角って感覚ってあるの?セイロン」
角の先端を突ついたり、
指で輪を作って潜らせたり、
掌で角を滑らせて感触を楽しんだり。
思い思いの動きで、少年等はセイロンの角を弄ぶ。
「ぁ…あ、る…ぞ…?」
必死に平静を装おうとした声が裏返る。
「へーやっぱあるんだ。ね、これ痛い?これは?」
「っ…っ…!」
少しづつ刺激を強めて角を指ではじかれ、
セイロンの肩がビクッ、ビクッと揺れる。
「どのくらいの衝撃に耐えられるのかな?」
無情な手が角をわしづかみにしてぐいっと引っ張った。
「ァッ!?やめ、痛ッ…!」
思わず声が漏れ、それをきいた手が慌てて角を離す。
「ごっ、ごめんごめん!これはやっぱ痛いのか」
「だめだよアルバそんな強くしちゃ!」
「でもあれだな、やっぱ手足と一緒で感覚あるもんなんだなー?」
「それなら角を切られてダメージ受けるのも納得だね」
そんな会話をかわしながらも、
少年達はセイロンの角を絶えまなく弄りまわす。
「…ぃ……っ」
小さく漏れる悲鳴を必死に隠そうと堪えるセイロンの視界に
笑いを堪えて蹲る男が見えた。
(〜〜何をしている!助けよ…ッ!)
目線でそう訴えても、シンゲンは愉快そうにニヤニヤとこちらを見ているだけで
少年達の暴挙を止めようという意識はないらしい。
それどころか、こんな事を言いだした。
「そうそう御主人、龍人の角ってなめると甘い味がするらしいですよ?」
「なっ…!?」
セイロンが驚いた顔でシンゲンを見る。
この男は、助けるどころか一体何を言い出すのか。
「えぇ〜?」
「うっそだぁ!」
「それはないだろ〜」
さすがにそんな馬鹿げた話、少年達も笑って信じない。
だがシンゲンは、そんな少年達をこんな言葉で操る。
「嘘か真か、試してみたらよろしいじゃありませんか?」
シンゲンの言葉を馬鹿にして笑っていた少年達の笑いがぴたりと止む。
確かに馬鹿げているが、同じシルターン出身者がそう言っているのだ、
もしかしたら本当なのかもしれない。
もしそうだとするなら…ちょっぴり興味がある。
『龍味』とはどんな味なのか。
「………」
ライはちょっと考え込むと、角に顔を近付けた。
「え、ライさんまさか…」
ルシアンの驚いたような声を受けながら、
ライは角の先端を舌先でチロリと舐めてみた。
「ぃッ…!?」
ビクン、とセイロンの身体が跳ねる。
「どう?なんか味した?」
「う〜ん…」
ライは小首を傾げると、もう一度角の先端を舐めた。
今度はさっきよりもしっかりと。
キャンディ−を舐めるようにぺろぺろと舌を動かし、角を味わう。
「や……め…!!」
セイロンはたまったものではない。
だが少年達の残酷な行動はまだ終らなかった。
「よくわかんないなー。甘いっていわれれば、ちょっと甘いかも…?」
「えーホント?」
「どれどれ…」
ライのその曖昧な一言を合図に、残りの二人も反対側の角に顔を近付けた。
「やめ…味など無…」
ペロ。
「ーーーッ!!」
言葉途中でセイロンは唇を噛み締め言葉を呑んだ。
アルバが先端を、そしてルシアンが幹の部分をペロペロと舌を動かし、舐め始めたのだ。
「んー。なんの味もしないよ?」
「あ、ちょっとしょっぱくない?」
「そうかな?俺甘いような気がするんだけど」
思い思いの事を口にしながら、それぞれが角の味を確かめる。
「………っ」
声こそあげないものの、セイロンは身体を小さく震わせ、
拳を握りしめて必死にその感覚に堪えている。
その様を眺めているシンゲンが小声で含み笑った。
「いやはや…これは面白い光景ですねぇ…」
「……!」
セイロンはシンゲンがニヤけた顔で凝視しているのに気づき、
足下におちている扇子を拾い、素早く広げて顔を隠す。
「なーシンゲン、これってホントに甘いのか?」
さすがにこれ以上は嘘と気づかれたか、と思いながらも
シンゲンはこんな事を言ってみた。
「だったらしゃぶって吸ってごらんなさい?」
「なっ!?」
驚いたセイロンの声が一瞬聞こえた。
「うん」
が、それはライの返事にかき消される。
ライは言われるが侭、素直に角をぱくっと口に含んだ。
「!!」
「ん〜しゃぶっても味しないぞ」
「吸っても味しないよぉ」
「あ〜らら〜…子供は残酷ですねぇ…」
予想以上に素直な少年達の行動に、シンゲンは苦笑する。
あの扇子の裏側では、一体どんな顔をしているのやら…と。
一斉にセイロンの角を口に含み、ちゅっちゅっと吸い始めた滑稽な宿の客間の風景。
そこにがちゃリと誰かが入って来る。
「!?」
驚いて息をのむ気配がして、客間にいた全員がそちらを見た。
「な…ななななにしてんのあんた達!?」
そこにいたのはアカネだった。
「なにって…」
「角…舐めてるのかな?」
「うん、そうかな?」
客観的に自分達が何をしてるか考え、そうとしか答えられなかった。
「な…舐め…って、角って…あんた達、わかってんの?」
アカネは顔を赤らめて動揺したような素振りをしている。
「何が?」
「何って…」
アカネは更に顔を赤らめ、言った。
「龍人の角は、強い性感帯なの!あんた達のしてることは龍人にとって性行為よ!?」

とうとう、言ってしまった。
ぽかんと口をひらく少年達。
あちゃ〜と苦笑する眼鏡侍。
「セイロンも子供に何させてんのよ!馬鹿!変態!ホモ!信じらんない!」
ひととおりの罵声をセイロンにあびせると、
アカネはバタバタと部屋から出ていってしまった。
「…………」
残された客間の住人は、気まずい沈黙と空気を身に纏う。
「えっと…セイロン?あのさ…」
「言うな!!」
何か言おうとしたライの言葉を遮り、
セイロンは扇子で顔を覆ったまま一目散に部屋から飛び出していった。
まるで虐められた子が泣きながら走り逃げる様に。
「いやはや…まさかアカネさんもその事を御存知とは」
同じシルターンの出身者だ、そう考えれば知っていてもおかしくは無い事だった。
「も…って、シンゲンは知ってたのか?」
「え!?ん、まぁなんといいましょうか…えぇ…」
知っていてこんな事をさせたのかと、怒り出すかと思い口を濁せば。
「そっか、やっぱそうだったのか」
「へ…?」
少年達からかえって来たのは意外な言葉であった。
「…御主人、もしかして知ってたんですか?」
特別におどろきもしない様子に訪ねれば、さらに意外な答え。
「いや、最初知らなかったよ。でもさ、触ってるうちに気づいたんだ」
「だって、真っ赤になって震えてるんだもん、あれじゃわかるよね?」
「舐めた時にもう、確定ってかんじだったよな?」
笑いながらそう会話する少年達にシンゲンはあっけにとられる。
「じゃあ、気づいてやってたんすか…途中から?」
「うん、まぁな。セイロンが何にも言わないのが、またおかしくってさ♪」
「必死に隠そうとしてたんでしょ?気づいたの解られちゃいけないかなぁって」
「でもセイロンって以外と可愛いトコあるよな」
「………」
最近の若者というのは、なんともまぁ、早熟な事で。
15ともなれば立派な大人。
純でもなんでもなく、もう、ひとりの男なのだ。
小羊かと思えば、羊の革を被った狼達だったわけで。
シンゲンは苦笑するしか無かった。
「さて、それじゃ…御機嫌伺いに行くとしますかね」
未だセイロンの話題で盛上がっている男達を後に、
シンゲンは階段を昇り彼の人の部屋の扉をノックする。
「わか…」
「許さん!!!」
声をかけようとして、即座に怒鳴られた。
「やれやれ、大層御立腹のようですね」
ノブを捻れば、幸い鍵が空いている。
部屋に駆け込んで、鍵もかけずにそのままなのだろう。
「入りますよ〜?」
「許さん!!」
あいかわらず怒りの否定しか帰ってこないのを気にせず、
シンゲンはずかずかとセイロンの部屋に入る。
ベッドに俯せに突っ伏したまま、セイロンは身体を震わせていた。
泣いているのか怒りの為か…とりあえず、笑っているのでは無いだろう。
「あのですね若…」
「そなたなど知らぬ!よくも我を…愚弄し…っ!」
ばらしたのは自分じゃ無いんですがね、と思いながらも、
からかって遊んで楽しんだ事は事実。
「だから…謝罪にきたんですよ若様」
つっぷしたままの無防備な後ろ姿に、シンゲンはそっと手をのばすと
角を、掴んだ。
「ひぅッ!?」
びくん、と過剰な程の反応。
「身体…火照ったままでしょう?お詫びの印に…
冷ますお手伝いをして差し上げますよ?」
そういって、角をゆるりと撫で上げる。
「はぁ…あっ…」
セイロンの上にのりあがり、右手を背中にはわせて下り
尻の溝を撫で上げながら往復させる。
火照った身体には強すぎる刺激。
「あ…うッ……シンゲン…っ!!」
身体を震わせて堪えていたセイロンは
突如シンゲンをはね除け、がばっと身を起こす。
「うわ!?っと」
ベットからおちそうになるのをなんとか堪え 向き直って見据えれば、
顔を隠した扇子の脇から真っ赤な耳をのぞかせたセイロンが
こちらを向いて息を荒げていた。
「そなた…最初からこれが狙いであったな…?」
「え?いやぁ…そんなことは…」
あるけれど、と口の中で濁し誤魔化していると、
また怒った口調でその声は言った。

「もう…よい」
「え?」
ぐい、と胸ぐらを捕まれシンゲンは引き寄せられる。
目の前で顔を覆っていた扇子が パチンと閉じられ、
その下から真っ赤な泣きそうな顔がシンゲンを睨んでいた。
「そんな事より………さっさと責任をとらぬか…!!」
そう言ってセイロンは服の襟に手をかけ、自ら衣服をはだける。
「…仰せの侭に、若様v」

シンゲンはセイロンの胸元に手を伸ばしそれを手伝うと、
衣服の隙間から火照る身体にそっと指を差し入れた。

end

 

 

ていうか鍵かかってませんよ若様。
ま、いまさらですがね。
ポムニットさんあたりにのぞかれるといいよ(笑)

そんなこんなで若総受の野望作品、
ライ&ルシアン&アルバ×セイロンです。
お子様なのでとりあえず抱合せで。
単品でも有りだとは思ってるんですけどね。
ほら、年下攻は魅夜の基本ですから。
まぁ若の場合、誰と絡んだ所で年下攻になるんだけどね(笑)

でも、15って結構大人だと思うよ?
サイト内の別ジャンルとか余裕でその辺だしね(笑)

2007.02.13

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