「して、我に相談とは?」
「あ、あぁ…」
珍しい男からの相談に、セイロンは予想も付かぬ素振りで小首をかしげる。
「グラッド君が、君に聞くのが良いだろうと…」
「ふむ…?」
戸惑いがちに辿々しく、そうセクターは告げた。
LOVEMACHINE
「………私は、彼女の気持ちには応えてあげられないんだ」
切なそうな瞳で、セクターは溜息を付く。
「シルターンでは異種間の恋愛など珍しくもない事なのだがな」
セクターが悩んでいるという内容は、
人間の女性…ミントとの関係の事であった。
彼等は共に同じ町で普通に暮らしていた時から、
そして、こうして共に闘う仲間となった今も、
誰の目から見ても『いいかんじ』である。
たとえ、セクターが人間ではないという事実を知っても尚。
「そなた、あの者を好いておるのだろう?」
「あぁ…私には勿体無い素晴らしい女性だ……愛している」
「あの者もそなたを好いておるぞ?」
「あぁ、彼女もそう言ってくれた…のだが」
もう皆とっくに、公認だと思っている。
それを何を今更、なのだ。
「互いに相思相愛。ならば何を悩む?
一体何をもって応えられぬというておるのか…我には理解できん」
いうならば、そんな悩みをグラッドにした
彼の思考回路の方が理解出来ないところだ。
彼女を想うもう一人の恋敵ともいえよう人物に、
相思相愛の自分達の悩みの事を相談するなど
よほどの鬼畜か天然か。
この男の場合、後者なのだろうが。
「そのことなんだが…じ、じつは最近…」
セクターが顔を赤らめる。
「彼女が、私を求めて来るようになった…」
相思相愛で、求めて来るといえば、そういう事。
大人の関係として、自然な流れだろう。
「よいではないか。そなたも童ではなかろう?」
人間年齢的には、充分二人とも大人。
躊躇う事などないはずだった。
「し、しかしっ!」
セクターは顔を赤らめたまま、眉を顰めた。
「私は…怖くて彼女に触れられない…!」
「それは自分に自信が無いという事か?」
セイロンが、そんな童でもなかろう、ともう一度言うと、
セクターは慌ててそれに反論する。
「た、たしかに!昔はその、それなりに人を愛せた!だが…」
彼の表情が消沈していくのと共に、
セクターの声は、次第にトーンダウンしていく。
「私は、私の今のこの身体は…彼女を愛する事が出来るのかどうか…」
「…………ふむ」
ようやく、セイロンは言わんとした意味を理解出来た。
相思相愛で何を思い悩んでいるかと思えば、その内容は
この身体でSEXがうまくできるかどうか、
という事のようなのである。
「なるほどのぅ…」
セクターは、一見人間。
だがその実、殺人兵器として改造を施された人造人間だった。
この身体が人間のように女性を愛し、満足を与えることができるのか、
それが不安で彼女に触れられないというのだ。
「…それで我に、ということか」
やはりその件をまずグラッドに相談したのはどうかと思うが、
結果論としては相談相手は間違ってはいなかったようだ。
何しろグラッドに遊戯指南をしたのはセイロン、
セイロンがその手の話題に強い事をグラッドは知っていた。
だからグラッドが自分の手に負えないヤマだと判断し、師匠にまわしたのだろう。
「あやつがどのような顔でそなたの相談を聞いていたのか
大変興味のあるところではあるが…
あいわかった。その件、我が判断してしんぜよう!」
セイロンは口元に当てていた扇子をぱちんと閉じると、帯に差す。
「しかし…どうすれば?」
「我にまかせよ。先ずはそこに横たわるが良い」
「あ、あぁ…」
セクターは、言われるままそこに横たわった。
なにかシルターン式の良い方法でもあるのかと、
シルターン古来の法を多数知るセイロンに素直に従う。
グラッドに勧められるままセイロンに相談をしたセクターは
セイロンに相談するという事がどういう事なのか、よく分かっていなかった。
じつはこれが、グラッドの静かな仕返しなのだということに。
「では、参る」
セイロンは徐にセクターの衣服をまくりあげる。
「せっ!?せせせせセイロン君!?」
「動くで無い」
セイロンは身を起こしかけたセクターを器用に足で押し戻すと、
探り当てた其れを引っ張り出した。
そしてそれを、慣れた手付きで刺激していく。
「う、あッ!?」
「ふむ…人間とさほど変わらぬようにみえるが…?」
「っ…」
「感度も悪く無いようだしのぅ?」
「ふ…ぅ…んっ」
突つかれ鎌首を上げ始めたそれは、
血色の良い肌の色で、なにも問題などないようにみえる。
「や、やめたまえ…ッ…あぁッ!」
「良いのか?ん?反応を示しておるぞ」
「わ、わたしは…、彼女以外とこんな…」
「それとこれとは別であろう。我はそなたを愛しておるのでは無く、そなたもしかり。
ゆえにこれは横恋慕にはならぬぞ?」
「し、か…し、…ッ!」
おそらくこの身体になってから、もう何年も、
このような刺激を受けていなかったのだろう。
「はっ…ぁ、やめ…たまぅ…」
必死に拒否しようとするが、長年忘れていた快感に逆らえず、
困惑と恍惚の表情を交互に浮かべるセクターに、セイロンは声を殺して笑う。
「悪く無い声をだすではないか」
セイロンの与える刺激を必死に堪えるセクター。
普段の彼の表情には無いパターンのその顔に悪戯心がくすぐられ
セイロンはニィと意地悪な笑みを浮かべた。
これこそが、グラッドの密かな仕返し。
セイロンにかかれば、全てが童扱い。
自分がそうであったように、手玉に取られながら散々弄ばれればいい、という、
なんとも他力本願な嫌がらせだったのだ。
「そなた…なかなか愛い奴よの」
最初は本当に機能状態を見るだけのつもりだったのだが、
こうも反応がいいと、 もっと困らせたくなってしまう。
普段が生真面目な男だけに、セイロンはからかうのが楽しくてたまらなくなった。
「こういうことは誰にでもしてやるわけでは無い。…光栄に思うが良いぞ?」
セイロンは顔をセクターに近付けると、
半ば立ち上がったそれにするすると唇を沈めていく。
「な……っ!?」
絶妙に這う舌の刺激に、 セクターの其れは
急激に体積を増し堅くなっていく。
「ひ、あっ…あっ…!」
「…うむ、善哉v」
立派に育った其れを確認し、セイロンは満足そうに唇を離した。
「せ、セイロン君!悪ふざけは…」
「もう良いな」
充分に起立したのを確認すると、セイロンはセクターの上にひょいと乗りあがる。
「セイロン…君?」
そして、下衣をはだけると、セクターの上にゆっくりと腰を降ろす。
「なぁ!?ちょ、何、をッ!?っ…あぁッ!?」
「ん…んん…っ…v」
堅く立ち上がった其れが肉に包まれていく感触に
取り乱した様にセクターが叫ぶが、
セイロンは構わずにそのまま根元までくわえこんでしまう。
「ふ…ぅ、うむ…悪くない、ぞ…?」
完全にセクターを取り込んだセイロンは、
わざと力をいれ、セクターをキュウと締め付けた。
「んおぉッ…」
「ふふ…童よの」
その反応を楽しむと、セイロンはゆるりと腰を蠢かせた。
「おぅ…!?」
「ん…ぁ…」
ゆっくりとした上下運動で、セイロンは過敏な程に反応するセクターを弄ぶ。
「我に…動かせるとは、そなた…なかなかの、無礼者、で…あるぞ…っ?」
勝手に動いておきながらそういうセイロンは
獲物を捕らえた獣のような瞳で、セクターを見おろす。
「これ…もっと声を出さぬか」
「うっ…!ふぅっ…!」
声を堪えようとしているのか、しかしそれも漏れてしまっては意味が無い。
久々の行為がかなりの上級者相手なのだから、
これを堪えろと言う方が酷な話だ。
セクターは、直ぐに全身の熱が堪えきれなくなってしまう。
「っ…ぁ、すまない、私はもう…我慢が…っ!」
切羽詰った声と表情で、身体の下のセクターが身を震わせるのを見て、
セイロンは彼が限界を訴えているものと認識する。
「ふ、ふ…構わぬぞ?いつでも達するがよい」
相手を屈服させた主人の様にそういうと、
セイロンはまた、わざとセクターを強く締め付けた。
「うっ?!…おおおおオオオオオオオォ!」
そのまま果てるのだろうと思っていたその男が、
突如雄叫びのような声をあげる。
「な…っ?」
そしてまるで起動した瞬間の機械のように、
セクターの全身を電流が走り抜けた。
「ひッ!?」
その変化は、繋がっていたセイロンには嫌でも伝わる。
接合した其処から内側に電気を流されたような感覚に、
セイロンは驚いて身をあげる。
「な…に事…!?」
「ォォァアアアア!」
目の前のセクターの髪は根元から毛先に向かい次第に銀色に変わっていき、
その額には十字の傷が浮かび上がる。
「これは…」
別に初めてみるものではない、いつもの戦闘モードのセクターの身体だ。
だが…なぜ今?ということだ。
「こ、興奮すると私は…俺はっ……!」
普段は戦闘以外の目的でこのような姿になるなど有り得ない。
だが、久しぶりに受けたこの雄としての刺激が、
彼の本能を熱くたぎらせ、それを戦闘の闘争心だとシステムが誤認してしまうらしい。
「なるほど…そういうことであったか」
彼が不安に思っているのは、これが有るからなのだろう。
愛する女性を前に興奮しないわけがない。
だが事の最中に戦闘モードに切り替わるなど、
彼女を驚かせ怯えさせてしまうに違い無い、と。
「そなたは…肝の小さい男よ」
セイロンは、戦闘モードに切り替わり自己嫌悪を通り越して
泣きそうにも見える男を溜息混じりに苦笑する。
「その姿を晒したから、どうだというのだ?」
「え…?」
こつん、とセイロンの扇子がセクターの十字の傷を小突く。
「あの者は、そなたの全てを知り、愛し、受け入れておるではないか?」
「………」
家族を持っていてもおかしく無いくらいの年端の男を子供扱いし、叱るように。
「そなたは自分を偽る必要など無い。
そんなことも我が言わねばわからぬのか?このたわけが」
パン、と扇子がセクターの額を叩く。
目を覚まさせるように。
「あぁ…そうだ…」
セクターは、とても大事なことにようやく気付く。
「…彼女は…こんな私を受け止めてくれている…のだ」
そして思いだす。
彼女は言ってくれたのだ、
こんな自分の姿も全てを含めて、セクターと言う人物を
『愛している』と。
「俺は今の侭の自分で、偽り無きこの姿で、
彼女の気持ちに応えればいい…それだけだったのだな…」
確認するように、セクターは自分に言い聞かせた。
「…うむ。ようやく理解出来たようだな」
今の自分を自分自身が受け入れ、
そして受け入れてくれた人の気持ちを、受け入れる。
とても難しく、そしてとても簡単な事。
「俺は…彼女の愛してくれたこの俺自身を否定していたのだな」
「ふ…解ればよいのだ。あまり手間をかけさせるでない」
セイロンの言葉によって目が覚めたセクターは、
己の存在に完全に自信を取り戻していた。
セクターの迷いのなくなった瞳をみて、セイロンも安心する。
自分の役割は果たしたようだ、と満足した気分になった。
「ありがとうセイロン君…ならば俺も、この身体で本気でぶつかろう!」
セクターは起き上がるとセイロンの両肩を掴み、真剣な顔でお礼を言った。
戦闘モードの為か掴まれた肩が少し痛かったが、それはたいした問題では無い。
「手間をかけさせたついでと言っては何なのだが…
もう一つ頼みを聞いて貰えないだろうか」
「うむ?よいぞ。申すが良い」
上機嫌のセイロンは快く答えたが、
じつは問題なのは…これからだった。
「俺の愛しかたが鈍っていないかどうか、判断してはくれないか」
人ではなくなってから随分と月日のたつセクター。
己の存在に自信を取り戻したのはいいが、
今度は、そのテクに不安を感じたらしい。
いくら自分に自信をもっても、この年であまりにも稚拙なのは、
男として恥ずかしい。
「ははは、そなたも見栄っ張りな男よ。
まぁ先程はお預けを喰らわせた事であるし、我がーーー…」
いいかけて、セイロンは言葉をとめた。
ふと視線が捕らえたセクターの其れ、
立ち上がって辛そうにしているだろうと思われた其れは
もはや先程目にしていたモノとは全くの別物だった。
「な…」
人の形をしていたはずの其れは、
質も大きさも形状も変化して…
というより、『変型』して。
「なん…なのだそれは…」
まるで、破壊力のある武器のよう。
バズーカ機能でも備えているのでは無いかと勘繰ってしまうほど。
「ありがとうセイロン君。恩にきる」
「い、いや、まっ…」
青ざめているセイロンに構わず、セクターはセイロンの身体を下に組み敷く。
「ちょ、待たれ…ッ」
セイロンは強引に身体を押さえ付けられた。
積極的で攻撃的。
戦闘モードの彼に相応しい力技。
「では…失礼させてもらう」
「まて…待たぬか…それは…ッ」
銃口を突き付けられたような堅い感触。そして。
「うッ…ぎいぃィッ!」
ゴリゴリ、と捩じ込まれる武器の感触。
太い、そして何より堅い。
「シフトチェンジ!」
「みぎゃッ!?」
内側に捩じ込まれた其れが、奇妙な音を立てて回転しはじめる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」
生物として有り得ない動き。
「あッ…が!?うっ、ぐォッ!?」
高速回転しながら内臓を激しくピストンするその動きに、
もはやSEXという行為の欠片も感じない。
「あぁ…ミント君…ミント君…っミントくんっ…!!」
「○×△%&!?◇〜んあ"あ"ッ!?」
愛する者の名を叫びながら、次第にフル稼動していくその機能は、
もはや、完全な兵器だった。
「ど…どうだっただろうか…?」
「…………」
セイロンは無言の侭答えない。
というよりは、答える気力もなかった。
数年降りだろうセクターの『愛しかた』は、
なかなか終ってはくれず、サスガの龍ともいえど、
生命力を根こそぎ持っていかれるかとおもったところだ。
だがこのように縋るような真剣な瞳を向けられては、
答えてやらない訳にはいかないだろう。
「そなたが…自分に自信を付けたのは大変良い事だと思う…」
そう諭したのは自分なのだから、そこは否定しない。
「が…一つだけ我から忠告だ」
しかし、世の中自信があるだけでは、ダメな事だってある。
「そなた…やはり女性には触れぬ方が良いとおもう…」
セイロンの取り乱しっぷりから、薄々勘付いてはいたセクターは
その返答を聞いてがっくりと肩をおとした。
「そ…そうか…やっぱり…そうか…」
「う、うむ…」
落胆するセクターを慰める言葉が
激痛に横たわり苦笑するセイロンには見つからなかった。
セクターってどうなってるんだろう…という妄想から出来た作品。
全身装甲の人間兵器ですもの、やっぱ、武器だよねぇ?てことで(笑)
若総受の野望作品、セクター×セイロンでした。
2009.09.07