「これは困りました」
気がつけば、まわりには倒れている仲間達。
「もう少しましな戦闘をして下さるかと期待していましたが…」
いくら人よりは腕がたつといっても、
所詮、彼等は実戦経験の浅い少年少女。
ジェイドの期待を超える事は無い。
「まぁ…私も人の事はいえませんがね」
そして、今は力を封じられそんな彼等と同程度の力しか持たぬ自分。
そのうえこの魔物達は何やら普段より必要以上に攻撃的な状態で、
ぐるりと囲まれたこの状況、絶対絶命だった。
「ここで気持ちよく全滅、というわけにもいきませんし…」
この状況では、後方で詠唱という戦法は成り立たない。
後方も何も、前衛が全滅しているのだから。
「久々の肉体労働ですね」
ジェイドが右手に音素を集めると、
何も無かった其処から槍があらわれる。
瞬間的にジェイドの殺気を感じ取った魔物達は
一気に最後の生き残りに襲い掛かった。
「甘い!」
迫る魔物の攻撃を読み、ジェイドは跳躍する。
ジェイドは戦闘経験の豊富な軍人。
たかが魔物の群れごときに怯むような男では無い。
まして、この目の前の魔物はかつて子供の時に
実験と称して 玩具代わりにしていた種。
攻撃行動もその動きも総べて見切って…いるはずだった。
「なっ…!?」
腕から弾かれる槍と、地に叩き付けられる衝撃。
「かはっ…!」
だが今の彼は、かつての子供の時の戦闘力にすら及ばなかった。
跳躍は低く、反応は鈍く、雑魚の攻撃すらかわせないのだ。
「く…もどかしい…!」
思うように言う事をきかない己の身体。
あの時の一瞬の油断が招いた失態。
倒れたジェイドは、魔物の群れに取り囲まれた。
武器は奪われ、多勢に無勢。
遠巻きに囲んでいた魔物達は、じりじりとジェイドに近付いて来る。
「…ここはどうやら観念するしかありませんね」
ジェイドは苦笑しながら溜息をつく。
このまま戦っても勝負は目に見えていた。
「ッ…!?」
すると突然、魔物の一体がジェイドに噛み付いた。
といっても、噛みつかれたのはジェイドの服で、
幸い肉体にまではその牙は届いていない。
ジェイドをどこかに持ち去ろうとでもいうのか、
その魔物はジェイドをくわえ持ち上げる。
その一匹の行動が気に食わなかったのだろう、
魔物達が激しく鳴き、互いに威嚇し始める。
「獲物の奪いあいですか…醜いですねぇ」
自分を取り合う獣の様を人事の様に眺めながらも
ジェイドは呑気な事を呟いた。
だがそんな言葉を発しながらも、
この男の脳はつねに現状の打開策を模索し続けている。
すぐにでも食い殺されるよりは、
このように仲間割れでもしてくれた方が時間が稼げて都合はいい。
そんなジェイドの思惑をしるはずもなく、
魔物達はジェイドを囲みいがみ合う。
遂にジェイドをくわえた魔物に、一体の魔物が飛びかかった。
そしてその魔物も、ジェイドに噛み付いたのだ。
「!」
ジェイドの、服に。
ビリィッ !
高い音をたて、ジェイドの服が裂ける。
「うっ!?」
まるで卵の殻から溢れる内容物のように、
ジェイドは再び魔物の群れの中心に落とされた。
「やれやれ…食べ易いように皮でも剥きましたか?」
笑えない冗談をいいながらも、
僅かに残された好機を狙うように、その瞳が静かに赤く光る。
ジェイドには策が無いわけでは無い。
襲い掛かってくれば、その時には…と。
「……?」
だが、彼等はどうしたことか、ジェイドに襲い掛かっては来ない。
食う気配も殺そうとする気配もなく、
それどころか…。
「…な、んですか…?」
顔を近付け、しきりとジェイドの匂いを嗅ぎまわるのだ。
そして奇妙な泣き声をあげ、妙に興奮し始める。
「加齢臭にはまだ早……ッ!?」
誰も聞いていない冗談を言いかけた時、
ジェイドの身体は俯せに押さえ付けられた。
「な…にを…」
けたたましく無く魔物の興奮した声。
そして、しきりにジェイドに顔を近付け匂いを嗅ぎ続ける。
「匂い……香水か?」
先程から彼等の行動をみているうち、
それが何かに似ている事にジェイドはふと気付く。
一つの個体を奪い合い、奇妙な声を立てて興奮状態。
特に目立つのはやたらとジェイドの匂いを嗅いでいることで……。
ジェイドはハッとする。
「まさか…!?」
そう、それらはまさに発情期の動物の行動に酷似。
「御冗談…」
ジェイドが背を押さえ付けられたまま振返ると、
服を剥かれむき出しの己の臀部に、魔物のグロテスクな器官が
今まさに押し付けられようとしている所だった。
「…では…ないようですね…」
冗談なんかではないこの現状。
おそらく、ジェイドが普段からつけているこの香水は
この種の魔物にとってはフェロモン効果のある香りだったのだろう。
彼等にとってジェイドは、発情期の雄の群れに現れた一匹の雌だったのだ。
「もっと視覚でモノを認識して下さいよ…っ!」
振り解こうと暴れるが、両足をしっかりと押さえられたまま固定され
ジェイドの脚は開かれたまま動けない。
グイッ
「!」
押し付けられる、発情の証。
ググッ…
硬く閉じたままの其処に、大きな塊の先端が突き立てられた。
「うッ…!?」
ミシッ…
巨大な其れはものすごい力でジェイドの身体をこじ開け始める。
狭い其処を力技で強引に。
「ひっ…そん、な…無茶…っ…」
獣に、無茶とか無理とかそんなものは存在しない。
目の前に雌孔があるから、挿れるのだ。
ただそれだけしかない。
「ぐ…うぅ…!」
ミチ…ミチ…ギチ…
少しも慣らされていない其処は異物を固く拒むが、
その拒絶も力の前には屈服させられてしまう。



めりりっっ!!
「!!!」
必死に拒み続けたジェイドの肉は、ついにその口を強引に開かされた。
「は…っ」
ズンッ!!」
「ーーーーーーーッッ!!」
声にもならない衝撃に、ジェイドの視界が真白になった。
裂けそうな拡張感と、激痛を伴った異物感。
いくらジェイドが人として体格の大きい部類に属そうとも、
獣を受け入れるにはその孔は小さすぎた。
「う……あぁ…ッ……」
辛うじて受け入れはしたものの、
さすがのジェイドも全身に汗を浮き上がらせ その苦痛を露にする。
そんなことにはお構いなく、魔物は己の生殖器を全て埋めようと
ジェイドの身体をおさえつけ強引に捩じ込み始める。
「ぐ、あッ!?…だめ、ですッ!」
ズブブブブ…
「うあああぁッ!?」
力に任せた強引な侵入。
「アッ…ぐぅッ!!」
そして巨大な塊は、ジェイドの中に全て埋め込まれ、止まった。
身体の奥深くまで大きく拡げられ、ジェイドの身体はガクガクと震えだす。
「はッ…ぅぐっ…はぁッ…」
突っ張る腹の皮。
腹を突き破られそうな挿入感。
気を抜けばフッと意識が遠のきそうになった。
だがここでジェイドまで意識を手放してしまっては、完全にお終いだ。
ジェイドが気絶することは、すなわち全滅を意味するのだから。
遠くなる意識を必死に呼び戻し
ジェイドは懸命に其れに堪える。
「あぐ…っ!?」
震えて力の入らない崩れそうな下半身が、
内側からぐいと持ち上げられた。
魔物の動き易い角度へと。
「ひッ…っ…お…お手柔らかに…っ」
引き攣った表情で望みのない事を口にするが
当然、お手柔らかにしてもらえるはずも無く。
ズルルッ…
「うあっ…!?」
無理矢理に根元まで捩じ込まれた其れは勢い良く引き抜かれる。
その衝撃は身体が裏返されてしまうのではないかと思うくらいだった。
ズボンッ!
「ぐっ…がぁッ!」
そして抜かれたそれは、また根元まで叩き付けるように挿入される。
全身にビリビリと痺れが走り、ジェイドの意識が飛んだ。
ズル…
「うぐ…!?」
だが離れかけた意識は、再び内臓を裏返される刺激で呼び戻された。
ズッ…ズルッ…
「ひぎっ…」
ズブッ…ズロッ…ズボッ!
「あがッ…あぁっ…、あ、ひぃッ…!!」
皮肉な事に、その一連の動作がジェイドの意識を繋ぎ止め、全滅を免れている。
これを幸というべきか、不幸と言うべきなのか。
「う、ああああぁッ!!」
幸い、とはとても思えなかった。
この苦痛の前では。
容赦なく内臓を抉られ穿たれ、
いっそ意識を手放せたらとさえ思ってしまう。
「ひあッ?!な…に…っ!?」
突如体内で膨れ上がる獣の其れ。
それは前兆。
「ウッ!?あっ…やめ…!?」
ジェイドの中で一気に体積を増し、
ぐん、と反り返る。
「ぐ、あああッ…ぅ!!」
ジェイドの中で腹が焼けるような熱い熱が拡がり弾け、
信じられない程の量の子種が、その雌の孔に注ぎ込まれていた。
ズルンッ…
用の済んだ獣の雄は、いともあっさりとジェイドの中から撤退していく。
ジェイドの粘膜を巻き込みながら。
「ひ…はっ…はぁ…っ…」
ジェイドの雌孔は大きく拡げられた侭の状態でぴくぴくと蠢き
放たれた 雄の子種を噴き零す。
「こ…んな、冗談…ではない…はぁっ、はぁっ…」
人間相手とは比べ物にならない体力の消耗。
ジェイドの身体はその場に倒れ込むように臥せった。
もはやこれは生殖行動では無く拷問。
そんなぐったりと崩れた身体に、黒い影が迫る。
「え…ぁ…?」
ようやく解放されたばかりのジェイドに、新たな獣が覆い被さっていた。
「ま、待ちなさい…そんな…」
発情した獣は、一匹ではないのだ。
ここにはいったい、何匹いるというのか。
「全員なんて…無理…っ…ああああああぁッ!?」
言葉など通じない、まして通じたとしても止むわけなどない行為。
雌として認識されているジェイドは、
奪い合うように入れ代わる雄に次々と繁殖行動を強いられる。
「はぁっ!がっ…ぁッ!ぐ、はぁ…ッ、こっ…壊れ…ぅっ…!」
ドスン、ドスン、とジェイドの尻に容赦なく打ち付けられる魔物の身体。
魔物の脚でしっかりと押さえ付けられたジェイドの身体は、
成す術も無くそれを受け入れさせられる。
既に腰に力は完全に入らなく、腰砕け状態なのだが、
魔物の肉根の硬度で身体を強引に持ち上げられ
あいかわらず魔物の動き易い角度に保たれていた。
「ひいぃッ……あッ!も…ぅ…ッ…!」
乱暴で激しいその営みは、並の人間がたえられるようなものではなかった。
並ではないジェイドといえど、身体を突き壊されそうなその動きに
理性を保つ事も平常心を装おう事もすでに出来ない。
もう苦痛に泣叫ぶしか出来なくなっていた。
「あ、ああぁッ!も…ぉ、い…くっ…!…イ…ッ…!」
限界のような声をあげながら、激しく突かれ揺さぶられるジェイド。
もはや完全に、望み尽き果てたかに見える絶望的なこの光景。
もう、すぐにでも意識を失い全滅まで秒読み状態かと思われた。
だが、そうではなかった。
「……イッ…
き…ますよ…!」
焦点も合わず泳いでいたその瞳が、
突如精気を取り戻したように光る。
「戦慄の戒めよ…ネクロマンサーの名のもとに…っ…具現せよ…!」
ジェイドの紡いだ言葉とともに
周囲の音素が、ジェイドの周りに凝集する。
そして。
「ミスティックケージ!!」
その音素は一気に弾け、辺り一面を包み込んだのだった。


「っつぅ…」
一面魔物の死体の中心で、ジェイドはだるそうに身体を起こす。
「どうやら、なんとかなったようですね…」
こちらから攻撃する事が叶わぬあの状況を脱出するには、
方法は一つしかなかった。
敵の攻撃を受け止めながら力を溜め、一撃必殺の奥義を繰り出す事。
力の弱体化された己に唯一残された、高等術。
ジェイドの奥義ミスティックケージは辺り一面の敵を一掃するもので
一気に形勢を逆転させることが可能なものだが、
それを放つまでの力を溜めるには、結構な時間がかかってしまうのだ。
思いのほか敵の『攻撃』が強烈で苦戦したのは誤算だったが、
一応、ジェイドの思惑通りに事は進んだ。
絶望的なあの状況をなんとか乗り切ったのだ。
「女性にはもっと優しく接するものですよ…?」
愚痴るように独り言をいいながら、ジェイドは酷使させられた尻を摩る。
「使い物にならなくなるじゃありませんか…まったく」
戦略の為とはいえ、あまりにも貧乏くじ。
本当に壊れてしまうかと思った。
「皆が気絶していたことだけが幸いですね…」
あのような痴態を仲間に見られなかった事だけが、唯一の救いといっていいだろう。
いくら勝利の為とはいえ、あんな姿を晒すくらいなら、
ジェイドは仲間を殺した方がまし…
もとい、死んだ方がましな勢いだ。
「やれやれ、誰か一個くらい持ってるんでしょうね?」
ジェイドは倒れている仲間の荷物をごそごそと探り、
回復のアイテムを探す。
だがティアも、ルークも、荷物に其れらしきものは見当たらない。
そして最後に倒れているガイに近付き、その荷物に手を伸ばす。
袋の中を探っていると、それらしき物体が指に触れた。
「あぁ、ありました!」
ようやくみつけた一個のライフボトル。
「これでなんとかなりそ…」
それを引っ張り出そうとガイの身体を裏返そうとした時、
ガイと、視線がぶつかった。
「え」
沈黙が流れる。
「……ガイ?貴方…もしかして…?」
「…あ…あぁ……えっと…」
ガイは驚きに見開いたような瞳で、僅かに頷く。
「そう…ですか」
てっきり、全員戦闘不能の状態だと思っていた。
だが、違ったようだ。
ガイだけは、瀕死状態で僅かに息があったのだ。
そして転倒し気を失っていた意識が戻った時、
目の前に拡がる光景に言葉を失い、固まっていたのだった。
「そうですか…見ていましたか…」
ジェイドの引き攣った表情が、次第に微笑みに変わる。
邪悪な程に。
シュン!
ジェイドの右手に槍が現れた。
「ジェイ……」
「それでは…忘れて下さいv」
何かをいいかけたガイに、ジェイドはその槍を突き立てた。
「ごはあああぁーーー!?」



戦闘結果
ルーク  …       戦闘不能
ティア  …       戦闘不能
ジェイド  …       瀕死
ガイ    …  瀕死 → 戦闘不能



end





ガイにとどめを刺すジェイドが一番書きたかったんだったり(笑)

2008.12.30

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