ラウスブルグを見守る守護竜。
竜に姿変え、空を駆け、必要とあらば住人達とも会話をする。
そしてラウスブルグをひとまわりしたのち城に戻って来るのが日課だ。
だが、今日はなんだかいつもと違っていた。
人の姿に変化しセイロンをいつものように呼び、
そこまでは同じなのだ。
同じなのだが…見た目が、違うのだ。
いつもセイロンは背の高い守護竜を見上げる形になる。
だが今日は、半端じゃ無く上を向く首が痛い。
「守護竜殿…いつもより少々大きく有られませんか?」
少々どころではない。数倍大きいと思う。
城の天井は高いので高さ上の問題はないのだが、
このように対面して話をするには遠すぎるのだ。
守護竜はとても気のつく寛大で御優しいお方なのだが、
御自分の事となると、見えていない事が多いのだ。
今も一目で大きさが違う事などわかるのだが、
おそらく、本人は気がついていないのだろう。
セイロンは衣を着せた物言いで守護竜が自主的に気づくように促してみる。
「あぁ…先程獣人達と話をしてきたからでしょうか?
縮尺の感覚がおかしくなってしまっているようです」
守護竜の本来の姿は竜の姿の方だ。
人の姿というのは仮の姿で、外観やサイズなどは
自由自在に変化できるものだった。
身体の大きい獣人達の中にいた事で、
常用していた自分の大きさの感覚が麻痺してしまったという。
「全く…貴方らしいといえば、らしいですな」
セイロンは扇子を口元にあて微笑んだ。
そんなちょっと天然な所も、セイロンはとても愛しく思っている。
いつも気をはって張り詰めてばかりでは無く、
気を抜く所は、抜く。それはセイロンの理想だった。
真面目ばかりで硬いあの男も、守護竜殿のこういう所を
少しは見習えば良いのにと思う。
「セイロン」
いつもよりも高い所から、いつもよりも大きな手がセイロンに伸びる。
「たしかに、いつもより本当に小さいですね?」
「貴方が大きいのでございますよ」
「そうでしたね?」
守護竜は軽々とセイロンを抱き上げると、いつものように愛しげに口付ける。
長く、大きな口付け。
「ん…むぅ…ッ!?」
大きな唇に口と鼻を同時に塞がれ、呼吸ができずセイロンの手がじたばたと空を掴む。
「あぁ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「え…えぇ…大丈夫です」
苦笑しながら、セイロンは荒い呼吸を繰り返す。
いくら天然で奔放な面も好きとはいえ、いまのはちょっと生命の危険すら感じた。
だが本人には全くもって悪気はないのだから、セイロンは苦笑するしかない。
「さぁ参りましょうか」
守護竜はセイロンを抱いたまま、いつものように寝室に向かった。
セイロンをそっとシーツの上に降ろし、その髪と角を優しく撫でる。
営まれる深き絆はいつもの日課。
「あ…」
ぴくんと敏感に反応する小さな身体が、守護竜の大きな胸に縋り付く。
いつものような優しい愛撫、いつものような優しい抱擁。
そのなにもかもがいつもより大きくセイロンを包み込む。
だが、セイロンは『その時』になって漸く、ハッとしたように我にかえる。
「守護竜殿、あの…」
「どうかしましたか?」
 優しく微笑む大きな微笑み。あまりの美しい笑顔に、
セイロンは遠慮がちに言ってみた。
「その…御身体が…」
いつもより大きい。つまり、何もかも大きいのだ。
勿論、アレも。
要するに、…無理。
「あぁ…」
ようやく言わんとしている事に気がついたのか、
守護竜はセイロンと自分の身体を見比べる。
そういえば、いつもより大きな身体のままだったのだ。
さすがにこれでは大きすぎるだろう。
目の前のセイロンが怯えるのも無理は無い。
守護竜は美しく苦笑しながら、言った。
「今の私では…貴方を愛するのに相応しく無いようですね?」
少し自嘲するように聞こえたその言葉に、セイロンが素早く反応する。
「そ、そのような意味ではありません!」
セイロンは弁解するように言葉を返す。
今の守護竜が嫌いだといっているのではない。
誤解をされたくはないのだ。
「たとえ守護竜殿がどんなお姿であろうとも、我の想いは変わりませぬ!
そのお姿のままでも、我は一向に構いま…」
勢いで言ってから、しまった、とセイロンは思った。
だがもう遅い。

「まぁ…嬉しい事を言うのですねセイロン…」
セイロンのその言葉に嬉しそうに微笑む天然守護竜。
言葉そのままの意味に受けとめ、セイロンがこのままで構わないと
言ってくれた事を素直に喜んでいる。
このままの自分をいつものように愛してくれるのだと。
「それでは…」
中断していた行為は続行され、守護竜はセイロンに口付けた。
今度は呼吸を奪わないように気を使いながら。
「………うむぅ」
困ったように眉を寄せながらも、セイロンはその愛しき人の口付けに覚悟をきめる。
有言実行、男に二言は許されぬ。
「守護竜殿…」
セイロンは唇が離れた守護竜によじ登るように顔を寄せると、自分からもう一度口付けた。
「今日は、我におまかせください…!」
「え?」
「さぁ、守護竜共は横になって楽にしていて下されば良いのです!」
「え…えぇ…?」
驚いたように言われるが侭仰向けになった守護竜の上に這い上がり、
そっと両手で守護竜の大きな象徴を握ると、セイロンは自ら跨がった
「見ていてくだされ…」
有言実行…!
心の中でもう一度そう呟き、セイロンはそっと腰を沈めて行く…。



とかなんとか言って半泣きだし。
一生懸命なんですよ(笑)
そして続いちゃったりする。

こんなバカップルな守護竜セイロンもいいじゃない?(いいのか?)
巨根祭作品。

2007.04.14

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