「はぁ、あぶなかった…」
 ガイは部屋にもどって安堵の溜息をついた。
 ひょんなことからみゅうの悩みを聞いてやることになり、ひょんなことから、ジェイドに巨大化改造されそうになった。ジェイドは久々に人体実験ができると目を輝かせていたが、冗談ではない。なんとかその場を逃げ出して、ようやく一息。
「人を巨大化させようだなんて、何を考えてるんだ旦那は」
 相変わらずぶっ飛んだ思考回路の持ち主。
「…ていうか、生体を巨大化させることも出来るのかよあのおっさんは…!?」
 それ以前に、能力的にそれが可能だというところにまず突っ込みをいれておくべきだろう。

 右手と槍を同化させるわ、術を封じられても強引に術を行使するわ、禁術を瞳に仕込むわ、レプリカなんて技術を編み出すわ…かつては身一つで人すら作り出したというその驚異的な力。すべて他人には真似出来ない有り得ない事ばかり。その力はもちろんのこと、もはやその頭脳から瞳、腕まで全身武器のナンセンス生物ジェイド・カーティス。
「ったく出来ない事はないのかよあの化物は…」
 冷静になってよく考えると、そんな人物と旅を共にしている事が末恐ろしい。
「誰が化物ですか?」
「うっっわ!?」
 背後から聞こえた声に飛び退き、ガイはベッドから転がり落ちる。
「ジ…ジェイド!いつのまに!?」
 いつも気配を消しながら歩くジェイド。間近に迫ってからいきなり声をかけられると本当に心臓に悪い。
「ここは貴方の部屋であり、私の部屋でもあるのですよ?いつ入ってこようと私の自由です」
「そ、そうだけどさ…」
 ガイはジェイドと同室が多かった。ルークが一人部屋がいいと我侭をいうからだ。勿論、女性陣と同室になるわけもなくて、そうなると、必然的にガイはジェイドと同室になるのだ。宿に戻ってまでも、あのジェイドのペースに振り回されるのは相当の貧乏くじだ。
「さて、と…ガイ?」
「なんだ?」
「SEXしますよ」
「はあああぁッ!?」
 そうして今日も、いつものようにガイはジェイドに振り回される。
「あのなぁ…旦那はどうしていつもそう…」
「さっさと脱ぎなさいガイ」
「…はぁ」
 諦めたような溜息と共にガイは首をうなだれる。身体の関係は少し前からもっていた。だがそれは、いつも一方的にジェイドに迫られる事が多く、いつも突拍子も無くきり出される。
 確かに、ジェイドとするのは悪く無い。身体の相性は、良い。嫌いじゃ…ない。だが、もっとこう、場の雰囲気とか、会話とか…そういうものを求めたくなってしまうのに、ジェイドときたらいつも本当に突然で、ムードもへったくれもなく、行為のみなのだ。どうかんがえても、いいように使われている道具状態。
「ん…む…」
「はぁ…」
 股間に顔を埋め、興醒めしているガイを強制的に勃たせようとするジェイドの髪に手を突っ込みながら、ガイもう一度大きく溜息をついた。
「ふふ…ガイ、今日はいつもより準備が早いですね?」
 それでも、はじまってしまうと元気に反応してしまう自分が情けない。 良い感じに準備の出来てしまったガイを見て、ジェイドは満足そうに微笑んだ。その瞳が、何かを企んでいるかのように光る。
「さぁて…それでは」
 ジェイドは徐に懐から何かを取り出した。それは液体の入った注射器のような器具。針は、無い。
「なッ!?」
「さっそく試してみますかv」
 それを見て驚いたガイに構わず、ジェイドはその先端をガイの起立した器官の先端の窪みにぷすりと刺した。
「っ……てええええぇッ!?」
「我慢しなさい」
 理不尽な言葉をガイに放つと、ジェイドは器具の後部を押し、液体をガイの中に注ぎ入れる。
「い…ッて!痛いって!ジェイ…っ!」
「はい、もう終りましたよv」
 ジェイドは液体をガイの中に総べて押し込むと、笑顔で其れをガイから抜き取った。
「…〜〜ッ、てぇ…なんだよ今のはッ…!?」
「うふふ〜なんでしょうね〜?」
「てめぇ…」
 ガイは涙目で股間をおさえながら蹲ると、微笑む鬼畜を睨み付ける。
「いったい得体がしれない何…」
 そう言いかけた時だった。
 ズキン、と患部が痛む。
「痛っ…」
 ズキン、と熱を持ったように。また。
「〜〜っぅ…!」
「ふむ…どうやら思ったより痛みを伴うようですねぇ?」
 ジェイドは辛そうにしているガイを観察するように眺めながら、呑気な事を言う。
「あ、の、なッ!!てめぇいい加減に…」
 さすがにジェイドの横暴ぶりに我慢ならなくなったガイは、ジェイドの襟首につかみかかった。
「おや、どうやら成功ですね♪」
「な…?」
 つかみ掛かったジェイドが、ガイを見て嬉しそうに手を叩く。 その視線の先には…。
「なッ…」
 ガイはその視線の先を見て、思わず絶句した。見つめる先にあったものは、慣れ親しんだそれよりも随分と立派に育っている己のソレ。見間違いかとも一瞬思ったが、やはりどうみても いつもより一回り以上は成長している。
「旦那…俺の息子に何をしたッ!?」
 これはもう、目の前のこの男の仕業以外には有り得ない。先程の変な薬以外には有り得ない。
「いやぁ随分立派になりましたねぇガイ?」
 ジェイドはガイの成長降りに満足そうに微笑むと、指でつついてその精度を確かめる。
「硬度も申し分ありませんね♪」
「そういう問題じゃないだろう!」
「結構調合に時間がかかったんですよ?これ」
「だから…っ」
 どうやら先程の生物巨大化の話からこれを思い付いたらしいことは推測できた。本人は時間がかかったといっているが、 あの話題が出てから今まで三時間程しかたっていない。この男にとっては、それでも手間取った方だということらしい。
 だが今は、かかった時間がどうという話ではない。
「人の身体を勝手に…!」
「いいじゃないですか、このくらいあったほうが男があがりますよ?」
「あのなッ!」
「心配しなくても大丈夫ですよ、時間がたてば効力は切れますから」
「当たり前だ!切れてくれなきゃ困る!」
 むしろ非永久効力だった事だけでも幸運に思うべきだろう。しかし元に戻るといっても本当かどうか疑わしいものだ。だがこの男の腕を純粋に信じるならば、おそらく本当なのだろう。
「ですから…」
 ジェイドの口元が笑む。
「きれるまえに…楽しんでおきませんとね?」
「え」

 

 

…はいここまでv
 
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