「お断りします」
はっきりきっぱりとそう言い切るジェイドの腕を
ピオニ−が強引に引いていく。
「しょうがないだろ?お前じゃないと嫌だって言ってるんだから」
「放っておけばよろしいでしょう」
「そうもいかないだろう、あいつは重要参考人なんだからよ」
あいつというのは、二人の幼馴染みにして現在は敵、ディストの事。
ジェイドに捕らえられマルクトの牢に投獄されてから、
ディストはジェイド以外の人間とは口をきかないと頑に口を閉ざし、
手に負えない駄々っ子状態。
今回の事件の核心にせまる情報を持っていると思われる
人物なだけに、
そのまま放置というわけにもいかないのだ。
「私はアレに尋問なんてしませんよ」
「いいって、俺がするから。お前は黙っているだけでいいんだよ」
しぶるジェイドを強引に連れ、ピオニ−はディストの牢に向かう。
「どこの世界に皇帝自ら捕虜の尋問なんてする人がいるんですか」
「俺。ピオニ−・ウパラ・マルクト九世様が♪」
その瞳は捕虜の尋問をするいう目的よりも、
悪戯をしたくてたまらないという悪ガキの瞳。
なにしろピオニ−にとってはジェイドもディストも
幼馴染みの遊び相手のお気に入りのからかい相手。
それが久々に二人も揃ってしまったのだ、
瞳が輝かないわけがなかった。
「………まったく…」
絶対何か企んでいる。
そうわかってしまうだけに、ジェイドは行きたく無いのだ。
「いよ〜うサフィール!」
牢の前にくると、ピオニ−は獄中の人物に声をかける。
「…またあなたですか」
しつこくも何度もやってくるその顔に、ディストがうんざりとした表情を浮かべる。
どうやらピオニ−は単身、何度も顔をみに立ち寄っているらしい。
「あなたと話す事など何もありません!」
ディストはこの男が昔から苦手だった。
突然現れ自分とジェイドの仲に割って入ったあげく
ジェイドを奪い去った、憎き対象。
自分と正反対の性格の、そのなにもかもが、苦手だった。
「まぁそういうなサフィール」
「今はディストです!薔・薇・の・デ・ィ・ス・ト!」
「薔薇でも鼻垂れでも何だっていいよ」
「よくありません!」
いつまでも昔の名前で呼ぶ、そういうところも。
その名前は、ジェイドだけに呼んで欲しいのに。
「まったく、いい加減に諦め…」
だがそんなディストのふて腐れたような態度は、
次のピオニ−の一言に一変する。
「ほら、ジェイドを連れてきてやったぜ」
「なななッ!?」
その名前に、ディストがそれまでとはうって変わったテンションになり
牢の奥から格子際につめよってくる。
ピオニ−の後ろから、明らかに嫌そうな顔をしたジェイドが姿を現した。
「じぇ…ジェイド!来てくれたのですね!あぁジェイドぉっ…!!」
「まったく…鬱陶しい反応ですねぇ」
がちゃがちゃと格子を鳴らしながら興奮気味で自分の名を呼ぶ男に、
今度はジェイドがうんざりとした表情を浮かべた。
「さ、連れて来てやったんだから喋ってもらうぞ?」
約束だ、とばかりにそう言うピオニ−に、
ディストがしらばっくれたように 言った。
「べ…べつに、口を割ると言った覚えはありませんよ?」
その態度に、ジェイドが溜息をつく。
「ほら御覧なさい。だからこんなものは放っておけばよろしいんです」
「そんなぁぁ!じぇいどぉっ」
「あぁもう鬱陶しい!」
「まーそう喧嘩すんなって、どうせこうなるだろうとは思ってたぜ」
そんな態度も想定内だったのか、ピオニ−は逆に好都合とばかりに喜々としている。
「な、なんですか…!?気持ちのワルイ!」
「貴方の方がよっぽど気持ち悪いですよディスト」
「黙らっしゃい!!」
「だから喧嘩すんなって」
そう口ではいいながらも、喧嘩する二人をにこやかに仲裁する。
これから起こる事が楽しみで仕方がないというように。
「まぁ、お前が口を割らないっていうんなら、それでも構わないさ」
ピオニ−は格子越しに伸ばされたディストの手をつねっているジェイドに近付くと、
突然背後からその首に腕をまわした。
「…陛下?」
不信そうなジェイドの声。
「それじゃお前が口を割るまで…」
ピオニ−の顔が悪戯に輝く。
「ここでジェイドにエロい事し続けるからな」
「「なッ!?」」
驚愕の声が二つ同調する。
「何を考え…んんッ!?」
抗議しようと振り向いたジェイドの口を、ピオニーの口が強引に塞ぐ。
「きゃああああああああッ!?何をしているのですピオニ−ィィッ!?」
思った通り過剰に反応するディストに、ピオニ−の顔がニヤリとする。
「お前が喋ったらやめてやる」
「なっ…」
これはこの男に何よりも効果のある脅し。
「陛下!ふざけ…んんっ!!」
煩い口は塞いで喋らせない。
「お前は黙っているだけでいいって言ったろ?ジェイド」
「冗談じゃありません!」
ピオニ−は暴れる身体を抱き竦め、手を服の中に差し入れる。
「あ…!」
ビク、とジェイドの抵抗が緩んだ。
「ほら…最近忙しくてしてないし?」
「な…にを…っ」
ピオニ−の指が服の下でジェイドの弱い所を探り当て
赤い突起をくりくりと弄ぶ。
「ん…っ」
もう一方の手は下に。
スリットの隙間から忍ばせた手をタイツの中に潜り込ませ
敏感な器官を握りしめ、指の腹で擦りあげる。
「ひ…ぁ…!」
びく、と身体を震わせ、ジェイドの身体から力が抜ける。
ディストがその光景に格子を激しく揺すりながら叫んだ。
「やっ…やめなさいピオニ−ぃぃ!!ジェイドが嫌がってるじゃ無いですかッ!?」
「…嫌がってる?」
ディストの言葉に、ピオニ−が笑う。
「嫌なのか?ジェイド」
「あっ…」
耳元に息をかけながら囁かれ、ジェイドの背筋がゾクリとする。
たしかに先程ピオニ−に言われたように、
ここ最近は国に留まる事が少なく、しばらくご無沙汰。
欲求不満気味の身体はちょっとした刺激でも過敏に感じてしまう。
「…っ、アレの前では、嫌…です…!」
だが、ディストの前ではジェイドは不本意だった。
「それって行為自体は嫌じゃないってことだよな」
「っアッ!」
握る手に力を込められ、ジェイドの声が高まった。
「こ、こらーーーピオニーーッ!やめなさいというのにっッ!!」
ついでにディストの声も高まった。
「へ、いかっ…いい加減にしてくだ…」
「皇帝勅命」
拒もうと発した言葉に重ねるように、いつもの卑怯なあの言葉。
「命令だ、抵抗するなジェイド。黙ってされてろ」
「な…っ…」
こんな時まで、こんな下らない事まで、この男は職権乱用。
逆らえない無敵の言葉に、ジェイドが大きく溜息をつく。

「貴方という人は…」
「いいじゃないかジェイド、お前も楽しめよ」
耳朶を甘噛しながら囁くと、ピオニ−の手が更に執拗にジェイドを求めはじめる。
「全く…仕方のない…人ですね…っ」
呆れたように苦笑しながらそういうと、
勅命により抵抗を禁じられたジェイドは、諦めたように身体をピオニ−に預けた。
そしてチラリと視線を正面に向ける。
そこにはワナワナと震えながら狼狽える男の姿。
ジェイドのサディスティック魂が、揺さぶられる。
「…まぁ、せっかくですから」
意地悪な笑みを浮かべると、ジェイドはピオニーに腕をまわした。
「ジェイド?…うわ!?」
驚いているピオニ−の頭を捕まえると、ジェイドは自ら強引に口付ける。
強請るように甘えるように、いやらしく激しく。
「いやああああああああああッ!?」
途端に沸き上がる悲鳴に、ジェイドの口元が愉快そうに笑む。
「ここはひとつ…アレの反応でも楽しみますかv」
理不尽な命令に対するはらいせ。八つ当たり。
こうなった以上、ジェイドはディストを虐めで楽しむ事に決めたようだ。
ピオニ−が一方的にジェイドに悪戯するよりも、
ジェイド自ら進んで戯れるほうが、あの男は取り乱す。
その事をジェイドはよくわかっているようだった。
「おま…ホント鬼畜な?」
「何をおっしゃいます、ふっかけたのはあなたでしょうに」
そういってにっこり微笑むジェイドに、ピオニ−が苦笑を浮かべた。
ピオニ−もディストをいじめて遊ぶのは好きだが、
ジェイドはピオニ−よりもっと以前からディストをいじめて
楽しんで居たのだったという事を思いだす。
ディストいじめに関しては、この男のほうがピオニ−より上手なのだ。
どちらにしろ、二人の利害は一致した。
「それじゃ…やるぞジェイドv」
「えぇ、陛下v」
「え…ちょ、ちょちょちょっと貴方達!?」
二人のいじめっこは意地悪な笑みでディストに微笑みかけると、
わざとらしく牢の前で熱い抱擁を繰り広げ始めた。
「いやあああああああぁあああああッ!!」
35男のヒステリックな悲鳴が牢に響き渡る。

 

 

 

…はいここまでv
 
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