GUILTY

 

 ジェイドは逆らわない。
「自分でしろよ」
 どんな屈辱的な事も。
「ん…」
 言われるが侭、命じられるが侭。
 皆は知らない、ジェイドの姿。  
「おいおい…もう飽きたぜ、そんなの」
 命じられるがまま自慰を続けたその手を、靴の踵で踏み付ける。
「っ…」
 昼間、街で仕入れたそれをジェイドに投げた。ごつ、とジェイドの頭に当たり、それは
ジェイドの手元に落ちる。
「それ」
 路地裏の露店商から、一番太いのを買って来た。 ジェイドに与える為に。
「入れてみせろよ」
「………」
 夜のジェイドは逆らわない。俺には。
「はやく」
  どんな淫らな命令も、文句言わずに受け入れる。
「ん…」
 ジェイドは手にした玩具を素直に自分の孔に擦り付け、玩具を自分の身体に引き寄せる。
「ん…っ…あ…」
 硬い先端がピンク色の孔をゆっくり押し開く。いやらしい玩具が、いやらしい孔を押し開く。
 こんなに太い玩具を、飲み込みはじめる淫らな孔。
「っ…」
 それでも太くなっているところが通らず、苦痛にジェイドの顔が歪んだ。
「…ローションを」
「だめだ」
 楽になるものなんて与えない。そんなものを与えれば、苦痛が軽くなる。
「そのままでいれろよ」
「………」
 催促するように命じれば、ジェイドの手に力が入り、強引に捩じ込みにかかった。
「ん…っぐ…」
 じわじわと、ゆっくりと、太い玩具を飲みこもうと懸命に開いていく孔。
「大変そうだな。手伝ってやろうか」
 俺はその玩具の後方に靴を当てると、踏み付けた。
「はッ…ああァッ!?」
 メリ、と玩具はジェイドの中に入る。
「うぐっ…はぁっ…くっ…ッ…ぅ」
 表情を歪めるジェイドを見おろす俺の顔は、どれほど酷い顔をしていることか。
「ジェイド…そのまま抜くなよ?」
 中に埋まった玩具に、音機関のリモコンを向ける。
「はっ…?!あ!ウッ…くあ!」
 作動音と共に、ジェイドの中でそれは暴れ出した。
「あぁ…悪いな、設定がMAXのまま作動させちまったよ」
 わざと、だけど。
「ほら…抜け落ちないように自分でおさえていろよ?」
「うくっ…ん…っ…」
 暴れ出てしまいそうなそれを、ジェイドの手が掴んで自分の中に押し戻す。
 にちにちと肉を擦る音が音機関の音に混ざり、ジェイドの吐息と、押し殺した声がその音に色付ける。
「…気に入ったか?旦那」

 髪をつかんで、その顔に吐きかけるように俺は言う。
「淫乱」
 髪を掴んだまま俯せにベッドに押し倒し、乱暴に玩具を掴んで抜くと、その玩具をすぐにもう一度ジェイドの中に捩じ入れた。
「はァッ!?」
 まるで自慰で自分のモノを扱う時のような速さで、それを出し入れさせる。
「う、う、あぁッ!」
 きつく絡み付いた粘膜が激しい抽挿で捲れあがるのを眺めながら、 いつも、考える。
 この行為の意味を。
「苦しいんだろう?辛いんだろう?」
 ジェイドは、SEXが好きなわけじゃ無い。むしろ、たぶん嫌い。
 だから、抱く。
 抱いてやる。
「満足か旦那」
 この屈辱を、この苦痛を。
「俺に責められて」
 この俺が与える事によって。
「そんな事をしたってな…」
 この男は、悦んでいる。
「あんたは永遠に許されなんかしないんだよ」
 罰を与えられている気分に酔って。
「ホドを消したのは…あんたなんだ」
 些細な罪滅ぼしをしている気分に酔って。
「そんなに満足か…俺に詰られて」
 しかるべき人物が、しかるべき対象に与える罰。
 これは、ジェイドが求めて来た夜の茶番劇。
『あなたの故郷が滅びたそもそもの原因は…私なんですよ』
『…なんだって…!?』
『その感情を私にぶつけて構いません。いえ、むしろそうして欲しいのです』
 突然の告白と、申し出。
 俺はその時の感情のままにジェイドを殴り 、そして犯した。
 そんな一晩で長年の恨みがはれるわけなどなくて。そうして今も尚、夜毎慢性的に繰り返されるこの行為。 昼はさも信頼しきった仲間の様に接し、夜になると道具の様に。
「く…あぁッ!」
 苦痛に歪む表情は、それでも何か満ち足りていて。
 俺とは対照的に、満たされて。
 俺は何も満たされない。
 こんな事を…したいわけじゃない。
 むしろ俺は…。
「ジェイド……もういいだろう」
 ジェイドを追い詰めていた手を、とめた。
「いいえ」
 離した俺の手にそっと手を重ね、 ジェイドは口元に静かに笑みを浮かべる。
「…続けて下さい。おねがいします…ガイラルディア・ガラン・ガルディオス伯爵」
「!」
 呼ばれたのは滅ぼされた島の、領主の名。
 卑怯だ。
 ジェイドは望んでいる。まだ、望んでいる。
 自分の滅ぼした島の領主が、自分を憎む事を。
 その領主が、もう仇を憎んでいない事を知りながら。
「俺は…!」
 ジェイドの手を振払い押し倒す。
「俺は…俺は…っ!」
 中に埋まっていた玩具を乱暴に抜き、どうしようもない感情をジェイドの肉の中に叩き付けた。
「あ…ぐ、あぁッ!」
 赤い瞳が安堵したように微笑む。
 自分を憎んで貰う事が救いのように。
「ジェイド…俺はっ…」
 夜毎繰返される茶番劇。
 何も満たされない夜が過ぎていく。

 こんな事は、もう終りにしたいんだ…。

end



2009.03.22

→Liar

 

 

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