めざめのうたげ

《サディストの宴》   

  第1章

「…何の真似だ……。」
 ベットの上に仰向けのまま、奴は言った。その手足の自由は奴が眠っている隙に俺が奪った。そんな状況にもかかわらず、奴の声はあくまでも冷静だった。
「目覚めはどうだ?」
「……強いて言えば最悪だな。」
 俺の問いにも取り乱すことなく奴は言う。いつもそうだ。そうやって冷静な振りをして強がってる。だけど本当はどうなんだ?その腹ん中は。起きたら手足を拘束されてるこの状況、普通じゃないんだぜ?もっと狼狽えてみせろよ。
「…はずせ。」
 カチャッと手首の金属を鳴らせて奴が俺に指図する。
「嫌だね。」
 誰が外すかよ馬鹿。漸く手に入れたのに。
「はずせ!」
「そんなに言うなら外してやるが。」
 俺は奴の服に手を掛け、服の前のボタンを外す。突如怯む奴の顔、何されるか大体察しがついたって顔だな。
「こっちを外せと言ってるんだ!」
 そんなことわかってるっての。少しは動揺したようだな。俺が悪ふざけでもしてたと思ってたんだろ?おあいにく様。今の顔、なかなかイイぜ。その仮面みたいな顔、さっさと崩しちまえよ。もっと。金属音をたてながら奴の四肢が暴れる。玩具とはいえ、ひ弱な人間一人拘束するには十分過ぎる代物だ。そんな位じゃはずれない。
 乱れる衣服の下から現れた素肌。普段めったに人前にさらさないだけあって随分白い。嬉しくなる、白は好きだ。綺麗なモノほど汚しがいがあるってもんだ。
 俺はその白に唇を落とすと歯をたてて吸い上げた。奴が少し呻いたようだった。そして唇を離すと…ホラ、汚れた紅い痕。
「………。」
 なんだよそれ、睨み付けてるつもりなのか?鏡みろよお前、怯えきった目してんだぜ今。お前でもそんな表情出来るとはな。
「お前、今から犯されんの。わかる?」
「…わかりたくもないね。」
 またそんな風に強がって、怖いんだろ?泣けよ。
 奴の胸の突起を爪で引っ掻くと僅かな悲鳴が口から漏れた。脇腹に舌を這わせると今度は押し殺したように悲鳴とは違う声が。面白い…泣けよ、もっと鳴けよ。
「今なら冗談って事で……許してやったって、いいんだぞ…」
 わかってないなお前、自分の立場わかってねえよ。許しなんて必要ないだろ?俺がお前に許しを乞う理由なんて、無い。
 奴の神経を逆撫でるように俺は耳元で囁いてやる。
「そういや学生ん時サッカーやってたんだってな………で、先輩等に輪されちゃったりしたわけだ?」
 ビクッと奴の体が緊張するのがわかった。
「………なん…で……お前がそれを…!」
 驚き、ひきつった奴の顔。大いに反応有りだ、単純な奴。俺は思わず笑い出した。
「は…ふっかけただけなのによ、自分から肯定しちまうなんて阿呆だが。」
 ハッとした奴の顔が悔しそうに歪められる。
「本当に輪されたんだ?何人位相手したんだ?教えろよ。」
「こ…の野郎!」
 振り上げた腕がガチャリと音をたて、反動でベットに沈む。
「黙っててやってもいいぜ?皆には知られたくないだろ?そのかわり…」
 奴の顎を掴むと頬に指をたて、喰いしばった歯を割り舌を忍び込ませた。
「ぐっ…」
「いいコにしてるんだな。」
 充分に口内を味わってから、その口を解放してやると苦しそうに息を吐き出した。
「別に初めてじゃないんなら…遠慮する必要もねぇな。」
 少し残念。だけど好都合。俺は奴の服を剥ぎ取り、奴の秘部を露にする。瞬時に昂揚した顔色は割と綺麗だ。
「ああ…そうだ外してやるよ、一つだけ。」
 左足の拘束具のみ解いてやると、俺はその脚を抱えあげた。余すところ無く俺の眼前にさらけ出される奴のカラダ。これから俺をくわえるその部分。窪んだ箇所に俺のカラダを押し付ける。あからさまに拒絶を見せる奴の其処。そう簡単に侵入を許しそうにないな。
「馬鹿やろッ…!ンなモン入るかッ…おかしいぞお前っッ!」
 俺はその言葉に薄笑いを返すとこう言ってやった。
「……入るさ、だって入ったんだろ?」
 それとも俺のが素敵すぎて無理ってのか?お誉めにあずかりありがとうよ。まぁ、どっちにしろ入るかどうかじゃない、入れるんだよ。
「う…よせ…っ…!」
 すっかり怯えきった奴の顔。結構好きだぜその顔。  俺は思いきり力を込めて腰を押し付ける。頑なに拒み続けていた奴の其処が遂にその力に降伏する。
「いっ…くあッ!…っう……い……たッ…!」
 絞り出される奴の悲痛な声。痛い?まぁそうだろうな。狭すぎてこっちも痛い位だ。でもまだ先っちょ突っ込んだだけだぜ?そんなんで痛がってどうすんだよ、まだまだこれからが肝心だ。腰を少し動かしただけで、奴は悲鳴をあげた。
「ぐ…っうあッ!…痛っ!…こ…のッ!血…が…出て…ッ!」
 見ると無理にこじ開けた其処から鮮やかな紅い色。
「……血なんて出てねぇよ。」
「う…そだッ……く…!」
 血が出てたら、なんだ?どうしてくれるとでも言いたいのか?別にどうもしねぇ。動き易くなっていいじゃねぇの。 荒い呼吸の中、ムキになって必死に抗議する奴がなんだか滑稽に見えた。
「さっさと…抜けッ!いいから、早くッ!……アッ!」
 この期に及んでまだこんな事を言ってる。威嚇のつもりか、態と俺をきつく締め上げようとして返ってきた刺激に逆に自分が参ってやがる。本当面白い奴。今のもっかいやってみろよ、なかなかよかったぜ。締め付けられた刺激で俺は奴の中で本来の大きさに戻りつつあった。
「ヒッ…嘘…そんな…まだッ、クッ…!あ…あっ嫌あぁッ!」
 カラダの中で腫れ上がる感触に、強気だった奴の語調が次第に情けなくトーンアップしていく。奴のこんな姿を目撃出来るなんてたまらなく愉快だ。一度乱暴に腰を一気に引き抜き、もう一度其処に狙いを定める。
「ウッ…!」
 息を詰まらせたような呻き声。一瞬の開放に奴が脱力した隙を見計らうと、じわり、と奴を押し分け侵入する。奴の其処には先程の様な抵抗力はもうなかった。
「いッ…あ…ひっ…裂…けるっ…やめっ…体が…裂けるッ!」
 もう半泣きだな。さっきまでの偉そうな態度覚えてっか?
「そう心配すんなって、大丈夫…」
 俺は優しく奴の耳元で囁いた。
「もうとっくに裂けてンぜ。」
 これだけの出血があるんだからもう既にどっか切っちまってんだろ。俺は勢いをつけて残りを一気に突き刺した。
「いっ……いゃああぁッ!」
 奴の背が弓なりにしなる。うるさいな。酷い声だ。そんなに痛いか?血いっぱい出てるモンなぁ。きっと痛いんだろうね…どうでもいいけど。俺はこれでも結構イイし。
 俺は構わずカラダを揺らし始めた。とたんに奴が手足の金属を鳴らせて暴れ出す。
「あ…やめっ!動く…な馬鹿ッ…ひぁっ!いッ…!」
 誰がやめるかよ、突っ込んだだけじゃ気持ちよくなんねぇし。
「力抜けばそんなに痛くないぜ、たぶん。」
 たぶん、ね。俺は経験したことないから本当にそうなのかは知らんけど。
「あぅ…うっ…抜ける…かよッ…あぁッ!」
 奴の流した体液のおかげで俺の運動は幾分楽だから、このままだって別段構わない。痛いのお前だし。
「やめろっ…やめ…ろよぉッ…くあッ!嫌ムムッ!」
 奴の内部を何度も往復する。激しく乱暴に突き上げる。少し暴れては、自分に返ってくるリスクの多さに程なく抵抗を止めた奴。この状態じゃ抵抗そのものが無駄だということが漸く理解出来たらしい。ぐったりと俺にカラダを預け、俺の動きに腰を併せてくる。少しでも痛みを軽減させようと必死だ。
「う…いつまで…続けて…いいかげん…は…やく終われッ!」
「なんだぁその命令口調?頭悪いんじゃ無いのお前?」
 俺は思いっきり奴の出血の源辺りを突き上げてやる。
「ひぐッ…」
 跳ね上がる奴のカラダ。これはかなりこたえたらしい。痛みの余韻でガクガクと震えるカラダに休む隙を与えず、俺はその内側をめちゃくちゃに掻き回した。
「うあああぁっ!」
 悲鳴というよりむしろ絶叫。そして俺は煥発入れず再びの往復運動を始めてやった。
「ひィッ!あッ…このッ…さっさと…イ…けッ!っく…は…やくイっ…てッ…お願いっ!い…たい…もう…ッ…や…めッ!」
 お願い、か。いつまでも止まないピストンに、とうとう奴が弱音をはいた。なきながら「お願い」「はやくイって」をくり返す。俺がイケばこの行為に終わりが来るって思ってんのか?…甘いなぁ。でもこの状況、俺には結構美味しい。
「…イカせたかったら協力しろよ、じゃなきゃずっとこのまんまだぜ?それでもいいのか?」
 奴は首を横に振ってイヤイヤをする。
「嫌なら俺をイカせられるようテクをつかえよ。」
「う…わかっ…た……から…はやく…終わって…。」
 奴は素直にそう言うと、泣きじゃくりながら俺に僅かながらの刺激を懸命に与え始めた。流石経験者、どうすりゃ相手がイイかはわかってんじゃない?聞こえて来るのが悲鳴と呻き声じゃなきゃもっといいんだけどな。
  程なく満足しだす俺の体。
「ほら、お望み通り…いくぜ。」
 俺は奴の中で限界以上にに腫れ上がった。
「ウアッ!だ…め外に…っああぁっ!」
 奴が何か言いかけた様だったが俺は遠慮なく奴の中にぶちまけてやった。

 

  第2章

「いつまで寝てんだよ、起きろ!」
 腹を圧迫される感触に目が覚める。見なれた男が俺の腹に足をのせている。踏まれてる。足蹴にされている。
「この…っつあッ!」
 身体を起こしかけると自由にならない手足と、下半身を襲う激しい痛み。裂傷の痛みと傷に染みる液体の存在に記憶が蘇る。
「…お前…お前はッ…自分が何したのか…解ってんのかっ!」
「犯したの、お前を。失神するほど良かった?」
「なっ…良いワケないだろうッ!」
 悪びれもせずそんな事をいいやがる!あぁもう怒りと動揺で俺の方が頭の中、何が何だかわからなくなりそうだ…。
「…でもこれで終わりじゃないぜ。」
 彼奴の手が、今一番触れてほしく無い箇所に延ばされる。
「さ…触るなッ…ひっ!」
 まだ痛みに熱く脈打っている其処に指を入れられた。
「クッ…!」
 すぐに指を増やされる。二本…、あっという間にもう三本も。
「痛い?痛くないだろ?さっきまでもっと太いのくわえてたンだからなあ、こんなもんじゃ痛く無いんじゃないの?」
「あうッ…く!」
 俺の中に残った自分の体液をかき出すように彼奴は俺の内壁を抉った。傷に触れられる度に激痛がよぎる。
「一度に何人も相手したんだ、もう一回位なんてことないだろ?」
 突如、カチャっ、と音がして鎖が外された。急に自由を取り戻した俺の脚。
「…っと、あぶねぇ。」
「…ちッ…。」
 俺の蹴りは無情にも空を切った。寸でのところでかわされた俺の脚は再び彼奴の手によって自由をうばわれる。
「その様子じゃまだ全然元気みてぇだな。」
 まるで丸太でも担ぐように、あいつはそのまま俺の脚を肩に抱えた。そして指の抜かれた其処に指なんかよりもっと太いモノのが…彼奴が押し当てられた。先ほどの痛みを思い出し、体が恐怖に強張る。
「この状況で攻撃しかけて来るとは思わなかったぜまったく…ほんっとに頭悪いなお前は…そんなに痛くして欲しい?」
「いっ…いや…!」
 無防備にさらされた俺の体は、彼奴の一番動きやすい角度に簡単に向きかえられる。入口に触れた熱は燃える様に熱くて…
「うあっ…ああーーッ!」
 めりめりと肉をかき分け彼奴が俺の中に侵入してくる。マシになりかけていた傷の痛みがパリッと傷口の裂ける嫌な感触と共に急上昇する。
「うるせぇんだよ。」
 口に布を詰め込まれた。俺の服だ、剥ぎ取られた俺の服の袖。
「ふぐッ!ウッ…ううっ!」
「少し黙ってろ。」
 俺のカラダを掻き回しながら彼奴が身を進める。 みしみし骨が軋んでる、このまま壊れてしまいそうだ。一応暴れてみた、でもやっぱり痛くて動けない。結局彼奴に逆らうことは出来なくて、言いなりになるしかないのか?
「ひ…っ…ぐっ!」
 もう声にならない。傷を広げられる痛みと下腹部を内側から圧迫される苦しさでうまく息継ぎが出来ない。彼奴は尚も奥を求めて俺の中を進んでくる。俺の内壁が彼奴の形に密着する。侵入して来た彼奴の形に変型する。もう…無理。限界!苦しい!
「苦しそうだな?すげぇ顔してる。」
 彼奴は俺を見てくすくす笑いやがった。
「抜くぞ。」
「うっ!?ふあー…っ!」
 深々と突き刺さっていたそ其れを彼奴は一気に強引に引き抜いた。彼奴に吸い付いた俺の壁が一緒に持っていかれそうになる。実際に持ってかれてたのかもしれない。でもすぐにまた彼奴が俺の中にめり込んできて…何度も、何度もくり返される。
「っ…ぐ、うっ…はふっ!」
 気を失いそうな激痛の中、視界の隅で俺の中に出入りする血まみれの肉塊を見た。余りのグロテスクなその行為と下腹部を突き上げられる異物感に、堪らずそのまま衣服ごと嘔吐した。  もう、俺のカラダ何がどうなってるのかわかんないよ。でも確実に壊れてく、壊されてく、彼奴に。
「汚ねぇな…しょうがない奴だ。躾のなってない奴はお仕置きが必要だな。」
  彼奴が楽しそうに笑ってる声がする…。

 

  第3章

「なぁ、このあとメシ食いに行こうよ。」
「あ…えっと…」
「残念。俺と先約があんの。なぁ?」
「え…あ…うん…そう。ごめんね…。」
「ちぇ〜そっかぁ。まぁいいや、そんじゃねぇお二人サン!」
「おー。」
「………。」
「…よく断ったな、偉いぞ。今日もいっぱい可愛がってやるからな。」
「………。」

 断ればよかったのに。俺、どうして断らなかったんだろう…。違う、断れなかったんだ。今日も俺の手首に手錠がはめられる。冷たい、硬い感触。
「俯せになって。」
「…嫌だ。」
 反抗したって無駄だって嫌って言う程わかってるけど、素直に従う真似は出来ない。残されたかすかな俺のプライドの欠片。
「俯せになれ!」
 襟首をつかまれ、力づくでベットに顔を沈められる。 ホラ、ね。わかってるよ無駄だってことは。
「ひっ…」
 いきなりアイツの指が俺の中に入って来る。第二関節まで入れて中をぐりぐりと掻き回される。何度もやられてる行為だけどやっぱり痛い。
「あうっ…くうっ…。」
「指で痛がるなって言ってるだろ!」
 勢いよく指を出し入れされる。無茶いうな痛いもんは痛いんだよ。そりゃ多少の慣れはあるけれど、せめて何かつけろよ…。
「指一本で準備出来てんのか?此処も大分利口になったな。」
 そうしたんだろ、あんたが。勝手な事言ってんなよ。
「今日は特別な御馳走を用意してやったぜ。」
 含み笑いの彼奴の声を背後に聞きながら、伏せの姿勢で腰を高く持ち上げられたままベッドに固定されていく自分の四肢を見つめる。抵抗したって結果は目にみえている。
  不意に股間の隙間から垣間見えた彼奴の手に握られたそれに驚愕する。
「なっ……!?」
「すげぇだろ?喰ってみたいだろ?」
 彼奴の手には肉体の一部を型どった張型が握られていた。その直径は彼奴のモノよりも大きくて、全長は…ええと…あぁ考えたくもない…。
「そろそろこのぐらい平気だろ。」
 冷たい感触が熱く脈打つ俺の其処に押し当てられる。
「や…ッ!!」
 先端が太くなっているソレは、いままでそんな大きさのモノをくわえた事のない俺の体にはそう簡単に入れるモノではなく…それでも彼奴は強引に押し込もうと力を強めたり捩ったりしている。
「腹の力もっと抜け!」
「…ウッッ!!」
  一番太くなっている箇所がなかなか入り口を通らなくて、苛立った彼奴が俺の腹を蹴りあげた。咳き込む俺の背後で彼奴が立ち上がる気配を感じた。そして俺の中に埋められた方とは逆の部分に足をかけると、そのまま体重を足に…かけた。
「イッ…!?」
 一瞬の、極限に近い負荷、そして激しい痛覚と異物感。
「やっと通りやがったか。」
「はぁっ…はアッ……あッ…!!」
 漸く難関を突破したソレは、彼奴の手によってゆっくりと前進し始める。
「此処入っちまえばあとは楽だろ?」
「ひっ…いいッ!」
 俺を苦しめた先端の部分が、激しい圧迫感とともに奥へと潜りこんでくる。逃れようと前に状態をずらすが、拘束された体は責苦から逃れるには不十分で、鎖の音がガチャガチャと悲鳴をあげるだけだった。次第にソレはいつも彼奴が執拗に俺を攻め立てるポイントに到達し…無造作に通過していく。
「イッ…嫌…これ以上は…!?」
 ここから先は、どうなっちゃうのか自分でも…知らない。
「たしか人間の体は30B位は余裕だって聞いたことあるぜ、個人差はあんだろうけど。深い所まで感じられてイイだろ?」
「あ…いやああーーッ!」
 そして経験上、未体験の領域まで遠慮なく侵入してくるのだ。

 コツン、と程なくして腹の奥に物のあたる感触がした。
「はぐッ!!」
 あまりの衝撃に目眩がした。物理的限界を伝える刺激に吐き気すらもよおしながら、そのことにまだ気付いてないだろう手の持ち主に必死に理解を求めてみる。
「は……ッ…限界…っ苦し…っ!」
 なんとか声を絞り出す。汗と、いつのまにか流れていた涙で口の中がしょっぱかった。
「はぁッ…はっ…お…奥に…当たって…っも……無理ッ…!」
「なんだ?もうおしまいか?」
 張型が限界の壁をぐりぐりと擦りあげる。そして強引にも更に奥へと捩じ込もうとする。
「ぐがッ!おぅッ…がはッ!!」
 ビクビクと体が痙攣し、襲って来る嘔吐感を必死に堪える。彼奴は俺の腹に手を当てると、凶器が腹の中で蠢く様を探っているようだった。いびつに動く腹内の感触を確認すると、漸くその手をとめた。
「んー…まぁこんなもんか。」
「はッ…はッ…はっ…。」
 俺は少し楽になった体で…といってもまだ最奥まで貫かれたままなのだが…疲労した肉体に懸命に酸素を補給した。
「思ってたより浅いな…ま、これから次第…か。」
 彼奴はマーカーで張型に印を付けた。…どこまで入ったか記録してるみたいだ。印を付け終わると、ソレを一気に引き抜きにかかった。
「くあっ!?」
 が、ソレは先ほどと同じように太くなった部分を吐き出しきれずに、俺の中に先端をくわえこまれたまま止まってしまった。
「…何?抜いて欲しくねぇの?」
 にやにや笑いながら彼奴が言う。理由はわかってるくせに…意地が悪い。
「嫌…早く……はやく抜いて…ああぁっ!」
 彼奴が単発的に力を込め抜こうとするが、ソレは傘のようになった先端部分がストッパーになりなかなか吐き出せない。今度はまた内側から強引な負荷をかけなくてはならない…でも一瞬の痛みでこの苦痛から開放されるのなら仕方のない事、と激痛を覚悟する。そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、彼奴はとんでもないことを口走る。
「どうやらお前の此処はまだ抜いて欲しくないんだってよ。」
そう言うと彼奴は殆ど抜かれかけたソレをまた俺の中に押し込んだ。そう、さっき印をつけたラインまで一気に!
「くはあぁッ!!」
 腹の底にドスッと物のぶち当たる強烈な刺激が体を駆け巡る。
「ここまでは平気なんだろ?」
そして再びずるずる引き出したソレを、彼奴は一気に印の位置まで乱暴に突っ込む。
「ひ…ひぃぃッ!」
 それを何度もくり返された。しきりに最奥の壁を突き上げる気の狂いそうな感覚に絶えまない嬌声が上がる。
「あっ…アッ!苦し…ッそんな…あぐッ!…壊れ…ちゃうッ…くあッ!」
「この壊れそうな感覚が快感になるぜ、なるまで付き合ってやっからよ。」
「い…嫌…そんなの嫌ッ…ぐッ!?」
 何度もくり返している内に彼奴は次第にエスカレートし、印を超えたラインまで押し込んでしまった事にも気付かなかった。俺の目に内側からの衝撃でいびつに突き出た自分の腹が見えた。
「………ッッ!!!?」
 ……あとは真っ白で…俺、何も覚えていない。

《サディストの宴・完》

 

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