罪と罰<6>


「何をコソコソ集まってンのかと思えば…随分イイ趣向な事やってんじゃん」
「か…観世音菩薩様…!?」
「な…なぜこのような所にっ!?」
 現れたのはその下品な口調とは裏腹に見目麗しい神、
観世音菩薩だった。
 観世音菩薩は八戒に近付くと、その顔を覗き込む。
「………完全にイッてんな…」
 動かないその体は、既に生死の境を彷徨っている。
「……おい、お前」
「はい?私ですか!?」
 呼ばれた僧侶は、怖れ多くも天下の観世音菩薩に指名され、緊張しながら歩みでた。
「なんでしょう…えッ!?」
 観世音菩薩は僧侶の肩を鷲掴みにすると、僧侶にいきなり口付けた。
「〜〜ッッ!?観世音菩薩様ッ!? 」
「……ふん…まぁこんなもんか」
「え…?うあ…!?」
 動揺を隠せずに狼狽えていた僧侶は、観世音菩薩が手を離すと床に急に崩れ落ちた。 用済とばかりに観世音菩薩は僧侶を突き放すと、かわりに八戒を抱え起こした。
観世音菩薩様…っ?」
「煩せぇ 黙ってろ」
 観世音菩薩は意識の無い八戒に唇をあわせると、深く息を吐き出した。
「………っ」
 ピクン、と八戒の指先が動き、八戒はその体にほのかな赤みを取り戻す。
「おお…!!」
「…スゲーだろ神様は」
 僧侶達は目の当たりにする神の力に歓声をあげていた。
「ん……」
 ゆっくりと八戒の瞳が開く。
「よぉ」
 瞳に飛び込んできた最初の人物に、八戒はその予想外の景色に驚いた。
「…!?あなたは…
観世音…菩薩?あなたが…僕を助けてくれたんですか…?」
「そうですぞ八戒殿!恐れ多くもこの
観世音菩薩様が…」
「いいや」
 
饒舌に説明を始めた僧侶の言葉を遮るように観世音菩薩は否定した。
「助かったかどうかは…わかんねぇぞ?」
 
観世音菩薩の麗しい顔が不敵に笑みを浮かべた。
「…どうせ治したってまたズタボロになんだろ?傷は治してねぇからな」
「あ…うぐッ…」
 八戒は、思い出したように体を襲う激痛に蹲る。意識と体力が戻ったというだけで、その体に残る傷は何も回復してはいない。
「続けるんだろ…コレを」
「…もちろんです」
 八戒はハッキリとそう言い切った。 

 ーーお前は…解っているか?ーー

「……面白れぇじゃねぇか!」
 
観世音菩薩はニィっと口元を吊り上げた。
「おぅ、お前等思う存分続けな!こいつが気絶したら、何度でも俺が起こしてやる」
 
観世音菩薩は愉快そうに言うと、少し離れた場所に座りあぐらをかいた。
 命の保証がされた、といっても過言では無いだろう。そのかわり、これはどれだけ容赦のない行為をしようと構わないという事だった。そして同時に、終わりの無い絶頂の痛覚をもたらす拷問ということでもあった。

「しかし…大丈夫なのですか八戒殿?」
 八戒に戻ったのは体力と意識のみ。その肉体はすでにボロボロだ。
「…ホラ、慈愛と淫猥の神様もああ言っている事ですし…もう時間がないんですよ皆さん。さ、急ぎ…ましょう?」
 八戒は痛む体を起こすと、苦痛に顔を歪めながら笑って自ら体を開いた。
「……いー性格してんじゃん」
 観世音菩薩は誰かを思い出したような瞳をして、一人で笑った。


すんません、今回短いです(苦笑)

 

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