罪と罰<9>
「さて…」
肉体が回復した驚異に驚いている八戒に、観世音菩薩がその頭をつかんで上向かせた。
「はじめっぞ?」
「え…あ、はい…!?あ、あの…」
急に羞恥を取り戻したかのように、八戒は身を縮ませた。
「…どうした、さっきまで股開いてた野郎が?」
「は…はい…あの…その…」
観世音菩薩は両性具有の神だが、その外見は女性そのもの。目の前にせまった半裸に近い観世音菩薩の体に、八戒が恥ずかしそうに目線をそらす。別に観世音菩薩の姿を見るのは始めてではないはずなのだが、このように体を触れあわせる状況に陥る事になると、その外見を酷く意識してしまうのだ。もともと女性経験の豊富ではない八戒だ、無理は無い。
「………ん?」
そんな二人をぐるりと取り囲む視線に、観世音菩薩は腕を組み振り返ると言った。
「おいおいてめぇら、神のsexデバガメしようたぁ良い度胸なんじゃねぇのか?」
「え?あ!…も、もうしわけございませんッ!!」
「皆のもの、観世音菩薩様の御前だぞ!控えよ!!」
慌てたように部屋から僧侶達が出てゆく。流石に神の一言は僧侶には絶対だ。
そうして、室内には観世音菩薩と八戒の二人だけが残された。
「…………」
「ほれ、人払いしてやったぞ。これでいいか?」
「…あ…スイマセン…気を使っていただいて…」
言いながらも観世音菩薩の方をまともに見ようとしない八戒に、観世音菩薩は口元をニヤつかせながら歩み寄った。
「……ふ…どうした?…触ってもいいのだぞ?」
「え!?…いや…あのッ…!」
それに気付いた観世音菩薩がからかうように八戒に迫る。淫猥な色香を漂わせる慈愛の神は、放慢な胸をはだけ八戒を誘った。
「!」
ボッ、と八戒の顔が赤く染まる。
「くくく…おもしろいなお前は」
観世音菩薩
は愉快そうに笑うと、八戒に口付けた。
「ん…」
口付けだけでビクリと反応した八戒の体に観世音菩薩はゆっくりと指をすべらせた。赤い突起に触れるとまた、ビクリと八戒の体が揺れる。
「どうした?すっかり処女きどりか?」
「そ…そんなつもりじゃ…っ」
体の癒えた八戒は本来の敏感さを露骨に露にし、 観世音菩薩を楽しませた。
「ここの感覚もリセットされたというわけか…それもまた一興」
観世音菩薩の指は下へ下へと滑り降り、八戒の敏感な箇所を次々と刺激していく。
「あ……!」
なお一層敏感に反応した箇所に、指をそのまま潜り込ませる。抵抗する肉を押し分け、しっかりと奥まで。先程までとは打って変わったような肉体の抵抗に
観世音菩薩が苦笑する。
「おいおい、そんな状態では俺のはキツいやもしれんぞ?」
そういって 観世音菩薩は衣の前をたくし上げた。
「う…わ…!」
そこには上半身の女性らしい外見とは対照的な男性の象徴が天を仰いでいた。共通している所といえば、放慢な胸に比例するかのような見事な象徴であるということだった。
「ふ…俺にコレがついてるのがそんなに驚愕か?」
「あ…いえ……両性具有だとは聞いていましたが…その…」
予想していたとはいえ、実際目の当たりにするとかなり面くらうものがある。
「立派だろ」
「……え……ええ…」
悟浄のモノも、自慢するだけあって随分と立派だなと思って見た事はあったが、 観世音菩薩はそれ以上。さすがは神とでもいうべきか。
「それじゃ…あんまり時間もゆっくりしてらんねぇし、そろそろイかせてもらうとするか」
「え?あ…はい、えと…どうぞ…」
どうぞというのも変な気分なのだが、八戒は戸惑いながら自ら足を開く。何度も何人も受け入れたはずなのだが、先程と状況が少し違うせいだろうか、酷く気恥ずかしさが浮かび上がる。八戒は赤らめた顔を少し背けた。
目の前に少し影がおり、観世音菩薩の黒髪が八戒の胸にぱさりと垂れた。
「あ…うッ!?あぁッ!!」
熱く堅い肉体が八戒の体を割る。
「もっと力抜いてろ馬鹿者、ヤられなれておるだろうが」
「は…あッ…でも、…ッ!」
すっかり処女状態まで回復してしまった八戒の体は、たたでさえ立派な観世音菩薩の肉体を簡単には受け入れられない。
「あ、あっ…あ!」
それでも強引に観世音菩薩の先端は八戒の奥へと侵入を続けていた。その度に大きく跳ねるように揺れる八戒の体を、観世音菩薩の腕が包み、そっと八戒の頬を撫でた。
「痛いか?」
「あ…っく、ッ…はい…でも…」
「…痛くても構わない、だろ?」
観世音菩薩は答えも待たずにそのまま一気に己を八戒に打ち込む。
「あ…ああぁッ!!」
深くまで迫った拡張感に八戒は背をのけぞらせる。いままで受けていた痛みにくらべれば比較出来ない程緩和な痛みであるはずなのに、それが酷く辛く感じるのだ。
「だがな…sexも悪くはないぞ猪八戒」
観世音菩薩はゆっくりと腰をまわした。
「ひッ!?あッ!」
奥深くを抉りあげられ、上擦った悲鳴が八戒の喉をつく。
「最後くらいは楽しんでもよかろう」
八戒の中を掻き回しながら、観世音菩薩は八戒の其処を解していく。キツイ八戒の其処もひくつきながらその動きに応える。
「ッ…それには…貴方のは少し、大きすぎですね……っ…」
一方の八戒も少し慣れてきたのか、苦しそうな吐息の狭間にいつものような憎まれ口の毒舌を返してきた。
「…クチの減らん奴だ」
それを聞いた観世音菩薩は、愉快そうに苦笑すると体勢を少し倒した。
「そんな奴にはこうだな」
「は…ああッ!!」
急に激しく突き上げ始めた観世音菩薩に、八戒は反射的にしがみついた。
「あ、アッ!はぁ…あッ…はぁぁッ!!」
もう憎まれ口を返す事すら出来ずに、八戒のクチはひたすら喘ぎ声を発し続ける。大きく拡げられたままの其処を激しく擦られ、奥深くまでつきあげてくる存在感。八戒はただ、声をあげる事しかできなかった。
「………覚悟はいいか…いくぜ……」
観世音菩薩は八戒の体を締め付けるように抱くと、その奥深くに聖液を放出させた。
「あ…あああぁッ…!!」
たまらなく熱い感覚と、体が分解されそうな程の激痛が八戒を襲う。八戒の体は眩く発光したかと思うと、その光は消し飛ぶように一瞬で消え去っっていった。
そして、八戒はそのまま動きを止めていた。
「観世音菩薩様、今の光は…!?」
観世音菩薩は自身の衣服を整えるていると、建物の奥から先程の僧達が集まり出していた。駆け寄った僧侶達は、意識のない八戒を取り囲んだ。だがまだ、どこか警戒心の強い様子で八戒を覗き込む。
「もう大丈夫だ、危険はねぇよ。そこにいるのは……ただの人間だ」
「…といいますと…!!」
その言葉を確たるものにしようと、僧侶達は顔を見合わせて頷くと一人の勇気ある僧侶が八戒に手をのばし左耳のカフスに触れる。八戒のあまりに強大な妖力は一つでは押さえきれず、常に三つの妖力制御装置が付けられている。八戒が妖怪である証。
僧侶は、その左耳のカフスを外した。
一つ、
二つ、
……そして、三つ。
「…………」
しん、と静まり返った牢内には、ただの『人間』が横たわっていた。
「お…おおおおおおおおおおお!!!」
「やった!やりましたぞ観世音菩薩様!!」
「我々の勝利ですね!我等の力が妖怪を打ち砕いたのだ!」
一斉に僧侶達の喜びの声があがる中、観世音菩薩はその様にひとり苦笑していた。
「………望み通り…人間にしてやったぜ猪八戒……」
外したカフスを、観世音菩薩は八戒の衣服のポケットに入れる。もう使う事のないそれを。
「…だがな……いや、それから先は……てめぇ自身で見つけるんだな………」
騒ぎ立てる僧侶達の声に混じったそんな観世音菩薩の声は、八戒の耳には届いてはいなかっただろう。