『見つめて欲しい』
<3>
「…起きて、手塚」
「………」
いっそのこと、このまま意識なんか戻らなければ良い、と手塚は思う。
揺り起こされて目覚めた体には、傷の痛みと言い知れぬ恐怖しか無い。
「血…随分出たね、大丈夫?」
「………」
不思議な男だ、と手塚は思う。本当に心配そうに見つめてくるこの男を。誰がこんなめにあわせたのか、わかって言っているのだろうかと。
正気じゃ無い。
狂ってる。
「可哀相に…こんなに怯えて…」
「う…!」
不二がそっと手塚を抱き締めると、手塚は過敏な程に体を強張らせる。
「僕が傍にいてあげるから…大丈夫。何も怖がらなくていいよ」
ガタガタと体を震わせる手塚に不二が優しく声をかけ、その頭を撫でる。まるでさっきの人格とは別人のような、罪の意識すらないような慈しみの態度。誰が手塚をここまで追い詰めているのか、理解しているのかどうか疑わしい。
狂ってる…!
「…震えてるね、寒いの?」
「あ……う…」
手塚の震える顎は声を発せられない。
「……あっためてあげるよ」
不二が抱きしめた手塚の脚をゆっくりと持ち上げた。
「ーーーっ…嫌…!」
今だ傷つけられた痛む箇所を広げるように脚を開かされ、 察した手塚が暴れ出す。
「やめ…っ、やめてくれ不二ッ!こんな…それだけは…嫌っ…」
「大好きだよ手塚」
不二は内側から出血している孔に、猛った己を突き入れた。
「い…ーーーーッ!!」
手塚の喉が仰け反り、両腕の手錠がせわしなくがちゃがちゃ音を鳴らす。
「手塚……大好き」
暴れる手塚を抱き寄せ、不二は傷付いた其処を一気に貫く。
「アーーーッ!!」
手塚の跳ねた体を押さえ付け、不二は手塚に腰を何度も強く打ち付ける。
「ヒィッ!ふ…じっ、ぅあッ!…いッ、うぁぁッ!」
手塚にとって傷を拡げ、抉られる行為に痛み以外など感じれるハズも無い。裂けた傷を擦りながら、狭い其処を裂きながら、不二は手塚の体を揺さぶる。初めての行為による痛みとか、そんな比では無かった。拷問に近い苦痛。
不二は出血する孔に突き入れながら、うっとりと手塚の顔を見つめる。
「…好き…手塚、大好き…っ」
「んぐ、ふッ…んんッ…」
悲鳴をあげる口に口付け、舌を差し入れて口内を貪る。苦しそうに逃げようとする頭を押さえ込み、ぴちゃぴちゃ音を立てながら不二は手塚をじっくりと味わう。
「ね、手塚……僕の事、好き…って…言って?」
「う…うあっ!…や…ひあッ!」
「手塚」
暴れる手塚の顎を掴み、不二はニコッと微笑むと言った。
「好きって、言って?」
「ひッ……」
「言ってよ手塚」
不二が手塚の中を乱暴に抉る。
「ああぁーーッ!」
答えない手塚を、不二は更に乱暴に突き上げる。既に手塚の流した血は床に大きな血溜りを作る程になっていた。
「言って」
「ふ…じっ…」
恐い。この男が恐い。
「………き…」
手塚の瞳から、涙が伝い落ちる。
「………す、…す……き…不二…好き…っ…」
その瞳からは涙を溢れさせ、どこか焦点の会わない瞳で、手塚は震える声で言った。
「…………手塚……」
不二は、その本心とはかけ離れているだろう手塚の答えを聞くと満足そうに顔をほころばせた。
「嬉しいな手塚…僕も…大好きだよ」
「………不二…ッ」
不二の天使のような微笑みが、手塚には次第に涙で霞んで見えなくなっていった。
2003.01.29
なんかあんまり鬼畜にならないんですよね…不二はどんどん壊れてきてるんだけど(笑)