「………わかりました。参りましょう」
来る事は予想していた。
むしろ、いつ来るだろうと思っていたくらいだ。
この国に脚を踏み入れて、このまま何も無いわけなど無い。
ジェイドは素直に立ち上がり、兵士について歩き出す。
「どこへいくんです?」
「…陛下がお部屋にお呼びだ」
「おやおや…これはまた大層なお持て成しですねぇ」
それが持て成しではないだろうことは百も承知。
いつものように上着に手を突っ込みながら、
ジェイドは別段怯む様子も無く彼等について歩いた。
これも、最初から予想していた展開だったのだから。
「こっちだ」
通された部屋は殺風景で何も無く。
「…で、私にどうしろと?」
数名のキムラスカ兵士がジェイドを取り囲んだ。
「服を脱いで頂こう」
突然の指示。
というよりは、命令。
「…なるほど。身体検査というわけですか」
これから一国の王にあうのだ。
ジェイドほどの申し分のない敵将ともあれば、
警戒されて当然というわけだ。
「全部だ」
「はいはい」
上着を脱いだだけでは納得してはくれない。
ジェイドは言われるまま、インナーを、
そして下着も総てを脱ぎ捨てた。
「武器など持っておりませんよ」
ジェイドは生まれたままの姿を晒しながら、説得力のない事を言う。
「貴様は右手に武器を融合させていると聞く」
「おや、御存知でしたか」
どうやら自分は相手国でも相当知られているらしい事をジェイドは実感する。
この武器を直接目にした者は皆殺しにして来たつもりではあったが、
情報というものはどこからともなくもれるものだ。
「それでは仕方ありませんね…切り落としますか?」
ジェイドは微笑みながら右手を差し出した。
キムラスカ兵が俄にざわめく。
冗談で言っているのか、あるいは本気なのか。
微笑したその表情が考えを読ませず、相手を不気味な気分にさせるのだ。
仮にもし本当に落とそうとしようものなら…
この男はどう動くだろうか。
「さぁ、どうぞ?」
その行動が、微笑からは全く読み取れない。
「くっ…ふざけやがってネクロマンサーめ…!」
「よせ!」
衝動的に剣に手をかけようとした兵士を、別の兵士が制止させた。
どうやら、彼等の考えは決まったようだ。
「その必要はない。その右手、封じさせて貰おう」
「そうですか、それは助かります!」
鎖のついた物々しい手枷が取り出され、ジェイドの前に引き出された。
どうやら魔力を封じる効果がある物のようだ。
ジェイドの言動に心乱し掛けた者もいたが、
彼等はもとよりこれを使うつもりだったのだろう。
「流石に腕がなくなると不便ですからねぇ」
そのことを最初から知って居たのか、
ジェイドは余裕すら感じさせる口ぶり。
飄々としたその態度は、少なからず敵国兵士を苛立たせる。
カシャン…!
ジェイドの右手に、枷がかけられる。
「そっちもだ」
左手も出すよう促され、ジェイドは抵抗もせず両手を枷の前に差し出した。
カシャン…
重みが両手を拘束し、封印術に犯された身体を更に封印する。
これでジェイドは完全なる無力化だ。
「…さて、これでよろしいですか?」
全裸に手枷。
国王に会うにはあまりにもそぐわない姿。
だがその姿は何も手出しは出来ず、その意思も無い事を証明してくれる。
「…待て」
だがそれでも、まだ許可は出なかった。
「何か隠し持っているかもしれん、調べろ」
「やれやれ…」
鎖を引かれ、ジェイドの身体は床に伏せられた。
「これ以上いったいどこに隠…っ!」
突然指が狭い孔をこじ開け、ジェイドの言葉を詰まらせる。
ジェイドは反射的に侵入して来た異物を思いきり締め付けた。
「ムム…こんなに締めつけるとは、怪しいぞ」
「奥に何かかくしているのではないか」
「な…」
無茶苦茶な言い掛かりでしかなかった。
ジェイドがこの国で良く思われていない証ともいえよう。
(そうきましたか…)
ジェイドは溜息をつくと、身体の力を出来るだけ抜き、
無防備な身体を彼等の好きにさせる。
言い掛かりだろうとなんだろうと、ここは素直に従うしかない。
「もっとよく調べてみろ」
「はい」
兵士達は代わるがわるジェイドの中を念入りに検査した。
乱暴に指で中を掻き回し、本数を増やし抉るように調べられ
数人で入口を強引に押し拡げ、中を覗かれる。
身体検査と称した凌辱。
「…っ……」
声を押し殺し、ジェイドは唇を噛んだ。
殺してやりたい程の屈辱。
その気持ちを静めるように、現状と無関係の事を考え、
ジェイドは思考を逃避させる。
帰ったらどうやって陛下に嫌味をいおうか…とか
明日になったらどうやってガイに八つ当たりしようか…とか。
「よし…いいだろう」
そうこう思案しているうちに、ようやく謁見の許可がジェイドにおりる。
長かった無意味な屈辱からようやく解放され、
ジェイドが大きく息を吐いた。
「それでは御同行願おうか」
だが、屈辱はここで終る訳では無く。
「こちらへ」
「ッ…!」
鎖を引かれ立たされ、引かれるがまま歩かされる。
鎖に繋がれた全裸のマルクト偉人は、
キムラスカ城内をまるで見せしめのように連れまわされた。
扱いはもう、ほとんど罪人と同等。
「失礼いたします。マルクトのジェイド・カーティス大佐をお連れ致しました」
ようやく、王の部屋の前まで辿りつくと、
ジェイドの前を歩いていた兵士は中の人物に報告をする 。
「うむ、通したまえ」
「ハッ!」
返された声とともに、扉が開かれた。
部屋の中には、キムラスカ国王インゴベルト六世の姿。
立派な椅子に座したまま、入室してくるマルクト軍人を見ても
少しも驚いた様子はなかった。
「……このような姿で失礼致します」
「構わんよ」
そりゃ当然でしょうね。
そう腹の中で呆れつつも、ジェイドはにこやかな微笑みをつくる。
この奇異な姿に驚きもしないと言う事は
総てがこの人物の指示によるものだと言う事なのだから。
「貴公を呼んだのは他でも無い、両国間の和平についてだ」
ジェイドの届けた親書。
それは敵対する両国間の和平を望む申し出だった。
そしてキムラスカ側からのその答えは、まだ受け取っていない。
「さぁ、そちらに掛けたまえ」
「…!」
促された椅子を見て、ジェイドの微笑みが途切れる。
装飾の施された立派な椅子。
だが、立派なのはその装飾だけではない。
目の前の椅子は、その座部の中央から巨大な突起を生やしていたのだ。
それがどういう用途のものなのかは、見れば明らか。
手首程もある太い其れは、客をひたすら待ち続け聳えている。
「どうした?掛けたまえ…ネクロマンサー・ジェイド」
敵国の憎らしい男の二つ名を口にすると共に、
国王の口元に含笑いが浮かんだ。
見ると、それは周りのキムラスカ兵皆が同じような顔をしていた。
「…………」
自分は試されているのだ、
ジェイドはその事を明確に理解する。
ここで拒む事は、交渉の決裂を意味する。
勿論、抵抗や攻撃など論外。
事実上、マルクトを代表し形式上敵国に平伏す意を求められているのだ。
「…………」
無言の脳裏に過る主君の言葉。
『頼んだぞ…ジェイド』
総てを託された信頼の証。
それが敵国でどう扱われるかを覚悟の上での、主君の命令。
国を代表し、苦渋を受ける事で相手を満足させる事が出来るだけの存在感と、
それに堪えうる精神力。
それらを兼ね備え且つ、『マルクト皇帝の大事な者』という申し分のない肩書。
相手に己の喉元をさらすような覚悟を込めて。
(……わかりましたよ、ピオニ−…)
だからジェイドが適任だった。
ジェイドにしか出来ない密命だったのだ。
「……それでは」
ジェイドの口が言葉を紡ぐ。
「掛けさせて頂きます」
微笑を受かベ、ジェイドは椅子に跨がった。
「く…っ…」
施し無く受け入れるにはあまりに大きい。
先端を僅かに埋め、勢いを付けて受け入れようとするものの、
肉の抵抗が強すぎて思うように進まない。
両手が使えない為、自ら解す事も出来ない。
「いかがされたかネクロマンサー?」
その様を嘲笑う王の声と敵兵の薄ら笑い。
「どうした、早く掛けろ!王の御前にて無礼であろう!」
背後の兵士の手がジェイドの肩に掛けられ、力がこもる。
「やめなさい」
それを、即座に王の声が止めさせる。
「彼の意思に委ねるのだ」
「…ハッ、失礼しました」
これは強制ではない。
あくまでも、そういう姿勢を強調する。
ジェイドが自ら、それを受け入れよと。
自ら服従の意を示せ、と。
そういうことなのだ。
交渉を穏便に進めるためには、ここは素直に従う事が必須。
(やれやれ…)
ジェイドは僅かに開きかけている其処に、全体重を乗せた。
「は…っ…」
ミチ…
肉の引き攣る嫌な感覚。
メリ…!
拒み続ける己の肉が、圧迫に負け口を開く。
「く、はァッ…!」
太い物体が体内に入り込む激痛。
だがジェイドは、そのまま体重を乗せ続ける。
ズズズ…!
「い…ッぎ…ぃッ!!」
勢い良く沈む身体と、飲み込まれていく突起。
ズトン…!
「はっ…あアァッ!」
ジェイドの尻が椅子に深く腰を降ろした。
突き出ていた凸部は、全てジェイドの中に。
「はぁ…はぁっ……く…!」
物凄い内側からの圧迫。
腹を突き破りそうな深い挿入感。
喰わえた其処がびくびくと拒むように収縮を繰り返し、
裂けそうな痛みを訴える。
「…ふむ…」
それを見てインゴベルト六世は少々感心したようにそう漏らすと、
ジェイドの背後の兵士に手招きするような合図を送った。
「くぁッ!?」
突如、椅子が揺れる。
ジェイドを貫いたまま椅子が持ち上げられ、
国王の前まで 丁寧とは程遠い扱いで運ばれる。
「あぐっ…はっ、うぅッ!!」
椅子との連結部に激しい負担がかかり、
挿入の余韻退かぬままの身体を大きく揺さぶり続ける。
ドン!
兵士はわざと乱暴に椅子を床に降ろした。
「かはッ…!」
衝撃と激痛でジェイドの意識が飛びそうになる。
「さて…それでは交渉の再開といこうではないか」
「そ…う、ですね…」
インゴベルト六世の声になんとか意識を呼び戻し、
ジェイドは懸命に表情と呼吸を整えた。
交渉を、なんとしても終らせねば。
それまでの辛抱。
「それでは…まずはこれを見て頂こう」
「………っ…」
さしだされた書類は、ジェイドからは見えない角度。
座ったままでは、見えない。
立ち上がらなければ…見えないのだ。
ズル……
「は…っ」
ズルル…
「うっ、うっ…」
ようやく飲み込んだそれを、自ら抜いていく。
震える膝の力が抜けそうになるのを堪え、
ジェイドは体内に埋められた巨棒をゆっくりと排出していく。
ずるん。
「うぅッ…!」
僅かに血の跡の残る突起が、ジェイドから吐き出される。
ジェイドはふらつく脚で差し出された書類の前に立ち、視線を巡らせる。
「これは、マルクト皇帝の直筆に相違ないな?」
「…相違ございません」
それはジェイドがマルクトより運んできた書類。
紛れも無くピオニ−の直筆のものだ。
だが先程の公開謁見にて既に信憑性を確認したそれを、
ここでもう一度確認させる必要はあっただろうか。
「そうか…では掛けられよ」
「…はい」
それはジェイドを動かさせる為だけの、無意味な理由。
ジェイドは再び椅子に腰掛ける。
「うっ…」
一度受け入れた其処は、先程よりは受け入れ易く。
しかしながら、苦痛は変わる事がなく。
「はッ…あぁッ!」
ジェイドは再び椅子に深く腰を降ろした。
「はぁ…ふぅ…っ」
受け入れた其処はズキンズキンと熱く脈打ち、
快感など欠片も感じられない。
ここに入れられる事は初めてでも無いし、嫌いというわけでもないのだが、
如何せんこれは大きすぎる。
実際、ピオニ−もたいした立派なアレなのだが、
さすがに、これには及ばない。
こんなものを何度も出し入れしたら、
流石のネクロマンサーも壊れてしまう。
「さて…次はこの書類なのだが…」
「!」
ジェイドが根元まで飲み込んだのを見計らうように、
先程と同じ位置に別の書類が出された。
そしてそれを見るように促すのだ。
もう魂胆は見え見えだ。
(まったく…)
ジェイドは苦笑する。
「失礼ながら、申し上げます…」
ジェイドは呼吸を整えながら、口を開いた。
「そのような、回りくどい事をなさる必要は…ございません」
「…何と申す?」
微笑を浮かべると、ジェイドは腰を浮かせる。
「要は…こういうことでございましょう…?」
国王からよくみえるように脚を開くと、
ジェイドは口元に意味津な笑みを浮かべる。
よく見ていろ、というように。
そして浮かせた腰を、一気に落とした。
「くはッ!」
「!」
それだけでは止めず、さらに大きく腰を退き
肉筒を激しく棒に擦りつけはじめる。
「うぁッ!ひ、…く、うっぁ!」
それがジェイドに与えているものは、あきらかに激痛。
「こいつ…自分から…!?」
ざわめくキムラスカ兵達。
「…………」
国王は、その様を無言で見つめ続けた。
「う、うっ、あぁっ」
彼等が望んでいるのが、自分の痴態なのだということを
この男は重々理解しているのだ。
憎しみを一身に浴びる己の痴態が、彼等の尤も欲しているものなのだと。
自らを堕とし、彼等を喜ばせる宴の肴を演じることが
最高の交渉術であると自覚している。
「はっ、あ、うぐっ…!」
声も押さえず、まるであえて聞かせるかのように。
苦痛を、痴態を、晒す。
「…………もう、良い!」
インゴベルト六世がジェイドに向けて手を伸ばすと、
ジェイドの身体は左右から押さえられ、動きを止めさせれられた。
両脇を抱えた兵士は、そのままジェイドの身体を持ち上げる。
「はっ…あ…っ…!」
ずるずると抜取られていく太い棒。
完全にジェイドからそれを抜取ると、椅子は片付けられ、
ジェイドは床にそっと降ろされた。
「おや、…もう…っ、御満足、ですか…?」
絶え絶えの呼吸で、ジェイドは微笑む。
「それとも…何か違う接待でも、していただけるのでしょうか…?」
その顔は、お望みとあればいくらでも、という意思が明確に現れていた。
気の済むまで好きにしろ、という、覚悟。
インゴベルト六世はそんなジェイドを見て苦笑する。
「マルクト皇帝はたいした懐刀をお持ちだ…」
そういってペンを手に取ると、手元の書類にサインをする。
「……マルクトの要望、このインゴベルトしかと聞き入れた」
交渉を受諾する意を示す書類。
その書類に自らの名をサインすると、ジェイドの前に差し出す。
そして、それをジェイドに渡すと同時に、自らのマントをジェイドに掛けた。
「!」
「陛下、一体何を…!?」
「騒ぐな」
驚く部下達を制すると、インゴベルト六世はジェイドに向けて深く礼をする。
「数々の無礼、お許し願いたい」
感情のこもった、謝罪の言葉。
「…お顔をお上げ下さい陛下。もったいなきお言葉にございます」
ジェイドはそれを受け、自らも深く礼をする。
…終った。
ようやく、仕事が終った。
そう感じた途端、ジェイドはつかみ取った成果を握りしめ
崩れるように床に臥した。
「……大佐を客室に」
「……ハッ!」
インゴベルト六世の指示により、
倒れこんだジェイドは抱えられ、
丁寧に部屋まで運ばれていった。
2008.04.27
立派な椅子、とかいっておきながら
挿し絵で貧相な椅子になってしまっていることに後から気付く。
枷の形も文の中と表現と矛盾してるし(苦笑)
でも気にしない…。